2014年12月12日金曜日

2学期終了。

皆さんは笑気を使用しながらエンドをしたことがあるだろうか?
私は日本にいるときは1ケースもなかった。
しかしここでは笑気を使用して治療することがほぼ子供や怖がりの成人の方であれば当たり前になっている。

笑気+エンド・・・私が将来開業した時にこのオプションは残しておくつもりだが、正直言うと実に煩雑だ。

特に鼻パッドをあてがいつつラバーダムをかけて治療するのは実に困難である。
上顎ならまだしも下顎は本当に骨が折れる。
鼻パッドが邪魔で治療がしにくいのだ。
私はこういう場合は、ここでの経験だけでいうと静脈内鎮静したほうがやりやすい気がする。
いっそチューブごと鼻に突っ込んでくれたらと不謹慎なことを考えてしまう。

根充するときなどは一大事だ。

今日まさに根充しようとしたら、笑気がemptyになり、CWTはアピカルプラグを作らないといけないが、鼻パッドが邪魔でアピカルプラグを作るのに時間が掛かる。

なので私は時間もなかったのでBCシーラーを選択した。
この材料はこういう時も実に効果を発揮してくれる。

ただ治療後、ケースを見せたらそれはお前の都合だけじゃねえの?というツッコミをロヘスから受けてしまうのだが。。。




笑気+エンドは時間かかる、煩雑、治療しにくい、笑気費用が掛かる、ということでextra chargeの対象だな、と確信した。

さて長かった今学期も今日で終了である。
長いようで実に短かった。。。
特に毎日患者さんの治療があるのでそこが最もハードだったと言える。
ただ、最も楽しい時間であった。
座学もいいのだが、基礎系はとにかくもういい(笑)

また今日は今年最後のミーティングとして昼にAAE meetingがあった。
AAEの現在のプレジデントの Louis Rossman先生が来て、ランチをおごってもらいながら自己紹介、なんでここにいるのか?エンド開業の話などをしていただいたが・・・彼らの最大の目的はdonationを募ることだった。



そんな話をよそに私はいただいた別のパンフレットを見てああ、こんなにエンドの大学院って全米にあるんだ・・・おおNova Southeastern Universityはこんなところにあったのか!と一人アナザーワールドでしたが。。。



まあdonationは開業してからならまだしも・・・学生ですから、まだ。。。
USCは授業料高いので、そんな余裕はなし。
ということでほとんどのレジデントがドネーションシートにサインせず、そそくさと帰ったのだった。

ということで、まとまりつきませんがこのLA発のブログも今年はこれで最後になると思います。

なぜか帰りにアシスタントのキャンディに泣かれてしまい、(私がいないと寂しいらしい笑)帰りづらくなりましたが、予定通りの日にちで帰国します。

思ったほど患者さんがいないので(笑)、自由に過ごさせてもらおうかと思います。

今年の6月から開業医としてのキャリアを中断してこちらに来たわけですが、言語の壁、しきたりの違い、システムの把握、術式の違い、失うものも得るものも双方ありました。

特に困ったことは医院の体制が6月に大きく揺らいだことです。
いきなり、すいませんもうできません・・・ですから最初の頃は本当に大変でした。
その後も様々なトラブルが勃発・・・一枚岩にならないといけない時期にこの有様ですから、私はつくづく人材というものにこりごりになりました。
二度とGPとして医院をorganizeすることはないでしょう。

しかし、目代先生(現院長)が助けてくれました。彼女には本当に感謝しています。
彼女には色々学んで、何を本当に留学して学びたいのか?を確認してもらいたいと思います。

逆にこっちに来て最も良かったことは、自分の世界が広がったことです。
ここに来ていなければ、自分の人生はもっと狭かったでしょう。
しかし、ここにきたおかげで色々な人種のいろいろな人と知り合うことができ、日々楽しく過ごさせていただいたのは何物にも代えがたい自分の宝だと思っています。

いきなり歯医者をやめてスーパーの従業員になった時と比べれば・・・随分気がついたら逞しくなったなと思います。

ということで、私は一足先に冬休みに入らせていただきます。皆様よいお年を。



2014年12月9日火曜日

1917年のエンド

今日、ロヘスの授業で面白い動画を紹介してくれた。
1917年当時、どのような術式で根管治療を行っていたか?を示したものである。
幸い、今の所youtubeでも観れるようなので、興味がある方は動画を見てみてください。

細かい術式は時間とともに常にブラッシュアップされ、見直されていくのがどのような治療でも宿命。したがって、この動画を見ていただいても術者は素手で治療しているし、顕微鏡もないし、Ni-Tiも超音波ももちろんない。タービンがないので治療には時間が掛かる。ゴールドのワイヤーを作業長測定、貼薬?にも使用しているし、レントゲンも今のクオリティとは比べものにならない。最後もクロロパーチャテクニックで根充して、思いっきりオーバーになっている。



しかし、今の私たちの治療の原形が1917年当時既に行われていたのに、素直に驚いた。
1917年、日本といえば大正6年、空前の好景気で、金本位制は廃止され、第1次世界大戦が起きている。
そんな時、すでにRoot canalが行われていたことに対して素直に驚きを覚えた。

しかし、それ以上に注目して欲しいのは、動画の最初のEssentials to Success(エンド治療成功へポイント)の部分である。


成功の最大の要因は、
" Removal of every portion pulp-assured aseptic environment."
とある。

可及的に無菌的な環境下で治療することが根管治療成功の最大の鍵としているのだ。

しかもこの動画では治療中、必ずラバーダムを行っていることがわかる。



今からほぼ100年前の動画だが、かなりきちんとラバーダムをしていることがわかる。
そしてこの価値観は今でも変わらない。

翻って、私は代診時代も含めてこのようなきちんとしたラバーダムをかけれるdentistにほとんどお目にかかったことがない。ラバーダムしていると真面目だねとか、すごいねとか、保険でもやっているの?とか、患者集めのためのフェイクでしょ?とか言われたこともある。

しかし、根尖病変が生じる理由は細菌である。それを極力防ぐことが治療成功の鍵であることが、100年前にも第1番目に挙げられているのだ。

シーラーがどうだとか、根充材はこれがいいよとか、こういうテクニックが全てを凌駕するとか、顕微鏡がないときちんと行えないとか、そういうことは第一義的ではないのだ。

歯科治療と医科治療の最大の違いは何か?と考えた時、私は今まで答えが見つからなかった。
治療が命に関わるか、関わらないかが最大の違いだと思っていた。

しかし、それは確かに事実だが、側面的な事象の1つに過ぎないと思う。

我々歯科治療の最大の特徴は、生じた歯科疾患に対して長期的な予後を有する治療を提供することが可能である、ということである。
また、治療のターゲットも明確である場合が多い。
治療の成功率も歯内療法に限れば、外科治療までを含めるとほぼ100%だ。
だからdentistは尊敬され、就きたい仕事にここでは毎年選ばれるのである。
歯の問題を適切に解決し、しかもそれが長く持つので我々は信頼されるのである。

U.S Newsを見てみると、

日本では・・・言うまでもないだろう。。。

しかし我々の多くが、歯科治療の本当の意義や意味を十分に患者さんに伝え切れているだろうか?

また我々は、治療の原則を守るよりも制度のルールや経営をより重要視していないだろうか?

保険診療が・・・とよく言われるけれども、それで自分が思う歯科医療が提供できないと考えるのであれば、自分が思うような歯科医療をしていけばいいわけである。
その"覚悟”さえ、あれば我々日本の歯科医師は大きく変われるかもしれない。

少なくとも、1917年の根管治療の動画からは、
”疾患をきちんと治そう!”という決意がひしひしと感じられる。

この1917年のエンドの動画から私たちは単なる物珍しさ以上の、とてつもなく重要なメッセージを受け取れる気がする。

2014年12月7日日曜日

1st Fall semesterいよいよ終了へ

1yrのFall semesterもあと1週間で終了する。

2nd-yrのレジデントの中には早々に帰国する人もおり、それぞれが自国へ帰国するというのが一般的なようだ。

本セメスターは長いようで短かった。特に始まって数ヶ月くらいは、なんでこんなところに来たんだろう?という後悔が正直あったことは否めなかった。

何度、環境なんて関係ない要は自分の気持ち次第でなんとでもなる!と思っていたが、外国での言語の壁は厚く、何度も疎外感を感じることが多かった(特にすべての授業で)。
今でもそうだが、自分の気持ちを一度文章にしないと議論はできない。情けない話だが、渡米前に医院の新体制構築に追われ、途中でそれが瓦解し、さらにその収集を図らねばならなくなり、肝心の英語学習ができなかった。もっと英語を勉強してここに来るべきだった!と何度思ったことか。

しかし、私は授業ではそうだったが、クリニックは楽しかった。クリニックにはUSCにはアシスタントがいて、彼らと話す機会が1日ですごく多い。
彼らは、我々の診療業務及び患者との連絡一切を管理する。
治療後のカルテが書かれていないと催促してくれたり、それさえも放置するとdirectorに告げ口してくれるというありがたい存在だ。(笑)

とかくと、怖そうな、ネガティブなイメージを持たれるかもしれないが、そうではない。
私は、彼らに随分と助けられた。
なんというか、同級生レジデント同士はこちらでは個人主義というか、(する必要もない)競争心理が働いて、全員とはそこまでまだ打ち解けて話すことができない。みんな我こそがアワードだ!という気概で日々戦っている感じだ。もちろん、好き嫌いやフィーリング、合う合わないもあると思うが。しかし、アシスタントはそうしたコンペティションとは無縁である。彼らはフラットに接してくれる。
特に私は英語ができないので、彼らにはfunny manに映っていたのかもしれない。



特にアレックス(骨の服を着ている男性)とアンドリュー(青いスクラブの男性)とは随分と仲良くさせてもらった。特に私が日本の一般的な朝の挨拶と称して教え込んだ、『1,2,3,ダッー!』がお気に入りだ。彼らは日本に行きたいようだ。

ミッキーマウスの自分の娘が作ったチーズケーキを15ドルで販売し、まるで私の母親であるかのように何かにつけてお小言をくれるモニカや、その黄金の右腕が腱鞘炎で大リーグ養成ギブスみたいな真っ黒のサポーターをつけて毎朝わざとぶつかってくるキャンディーは診療が押せ押せになると露骨に不愉快になる以外は(笑)いい人たちばかりだ。

バッファッローマンみたいなカツラを装着しているノーマと産休したジャッキーの代わりにデスクを仕切るダイアナにはいつもヒスパニックしか話せない患者との診療の説明、お金の説明、ルールの説明、インフォームドコンセントで大活躍してもらっている。

クリニックの時間が十分にあり、その内容も自主性を重んじてくれ、しかもスタッフが全員気さくだったために私は彼らと下手な英語でコミュニケーションをとることができ、なんとかこの数ヶ月やってこれたのかもしれない。

このターム前に、ペン大出身の田中先生からクリニックが始まるとあっという間に時間が過ぎますよ、とアドバイスされたが本当その通りだった。家に帰るとソファーに腰掛けたままそのまま朝が来たことが何度あっただろうか?

とにかく毎日がめまぐるしく過ぎていく。
特に1年時は基礎系科目が毎日あり、それの学習に忙殺されて、エンドを勉強したいのにそこに十分な時間が取れなくて毎日イライラしていたが、患者さんの治療で疲れてしまい、毎週末にすべての宿題や課題を図書館で解決するということがほぼ毎週の恒例行事と課していた。特にここ1ヶ月はテスト期間ですべての労力を基礎系に集約せねばならず、体調も崩し、そしてストレスで過食→太るといういつものパターンが続いた。

しかしながらようやくペースというか、日々の過ごし方にめどがついた気がする。
今までは探り探りだったが、next termからはもう少し効率よく動けるだろう。

USCと今までで違うことがあるのか?と言われれば、最初はそうないと思っていた。
しかし、最近になってだんだんと違いを肌で感じてきた。
特に作業長の設定や、ぺーテンシーファイル、シーラーパフを許容(というよりむしろ必須に近い)、最終拡大号数はあまり大きくしない、ApexをMAFで測定したり、再治療でクロロホルムを使用したり、どの部位でも必ず伝達麻酔したりetc...と挙げればきりがない。

結局本タームで治療終了した患者さんの人数はjust20人だった。
基本、1回法で終わるし、毎週ナイトクリニックで診療していたので、治療終了した患者さんの数は1年生レジデントでも多い方の部類に入るようだ。自分が輝ける場はクリニックくらいしかないから・・・と思いながら空き時間が1時間でもあれば診断するから患者を配当してくれと頼み、空き時間という空き時間すべてに患者さんの予約を入れたことが良かったようで、今の所勤勉な日本人だという目で見られているようだ(笑)。

しかし、彼らはliterature reviewやケープレで私からほとんど意見が出てこないことに不満がある。毎回、もっとお前の意見を言え!と言われるのだが・・・自分の意見を英語で考えるうちに話の流れが次へ進むのでついていけないのだ。耳はほぼエンドの授業なら問題がなくなってきた。特にラスティンの授業は聴きやすい。ロヘスの言葉もだいぶ慣れてきた。ただやはり未だにリービィ先生とシェクター先生のネイティブ英語には苦労するが。。。

この長い冬休みは、日本で診療も行うが
①本タームであまり目を通せなかった論文をすべて読破する
②診療の筋(理論)をもっと強化する
ことに全力を注ぎたいと思う。

福岡でも、どうやら日々図書館 or 自習室&まん喫通いになりそうだ。


追伸

帰国時にニューヨーク大学の補綴科のレジデントの白先生とセミナーをすることになった。といっても、エンドの話はせず留学に至る経緯や留学生活をざっくばらんに語るというライトなものなので、年末で東京開催ですが興味がある歯科医師の方、参加費無料!とのことですのでよければご参加ください。


ただ私の話はだいたいブログで言っているようなことばかりですが(笑)・・・今の私は学習中の身でして、人前に出てエンドについて偉そうに教えられる資格はありませんし、ペンエンドに所属してますので私の意見を公の場で話すのは不適切だと思っていますので診療哲学の話はありません。そういう話は卒業後に歯内療法専門医としてできればいいかなと思っています。

さあ今週はテスト、そして最後に多くの患者さんを診療&フィニッシュして、最後に西森組に初めて参加して(しかもそれが忘年会のみ。。。Min先生すいません。)、日本へ帰国します!

2014年12月5日金曜日

人生で最大の殺人的スケジュール

今日は実に長い1日だった。。。

Dr. SlotsのBiologic Basis of Oral- Facial DiseaseのFinal testがあったのだが・・・

全く覚えられない。

とにかくこんなにも興味がないのか、というくらい面白くない。

サマライズが回ってきて、getした瞬間はlucky!だったがファイルを開くとそこは地獄だった。

なんせ、サマライズのくせに全部で153ページもある。
これを本当に覚えなければならないのだろうか??私は何度もこれはドッキリじゃないかと淡い期待を抱いて何人もの同級生に確認したが、ガチンコであった。

自分で作ったプレゼンテーションから覚えようとしたが、それすら全く覚えられない。




というか、これは日本語でも覚えられないだろう。

うちの学年で最も優秀な、マリアにどうやって勉強してんの?と聞いたが、

『サマライズ読みながら寝ちゃった(笑)』

と笑顔で返された。。。

ネイティブでも覚えられないものをなんで、このアラフォー純ドメ親父が覚えられるだろうか??

と何度もくじけそうになりながらまるまる1週間、使用したノートは全部で6冊。
久々、書いて覚えると言う作業で153ページのPDFファイルを写経のように、科挙の試験でも受けるかのごとく何かに取り憑かれたように一心不乱に耳栓を装着し、サンタモニカの図書館でそれを声に出して読みながら(相当怪しいおっさんに違いなかっただろう。)、記憶すると言う試みを続けた。



そして今日はテスト当日だったのでこちらに来て初めて徹夜をした。

テストは朝8時からで、遅刻は失格と言われていたので今日は寝ずにそのまま家を6時には出て、USCへと向かった。
車中も、まるで念仏でも唱えるかのように、TOEFLの単語を覚えるかのごとく、書いたことを唱え続けた。

私は、人生で初めて脳がパンクしそうになった。
正直、これは拷問以外の何物でもない。。。
1つのトピックを覚えても次に行くとさっき覚えたことは遥か彼方。
しかもこの薬はHIVだったか?Hepatitisか?はたまたHerpesか?混乱する。。。
そして中間試験の問題も一応チェックしておいた。
前回のDr.Tanakaの試験が中間テストの問題がいっぱい出たので、その時のを教訓に目を通しておいたので、もう頭は久々パンパンで今にも爆発しそうだった。

これは、大学3年生の時の細菌学の口頭試問を思い出させてくれた。
あの時、私は1回目の口頭試問に落ち、2回目の口頭試問は1年後、しかも1発勝負で答えられなかったら、即留年!という長崎大学・歯学部で人生最大の危機だった時だ。
実はあの時も、留年したら学校を辞めると周囲に吹聴し指定された細菌学の教科書(多分、微生物学250ポイントだったと記憶している)をまるまる1冊覚えるという経験があった。


あの時も頭がmaxで爆発寸前だった。実に懐かしい思い出である。結局、出題された問題はHerpes simplex virus-1について述べよという意外な問題だったが・・・
でもこの時は、すべてが日本語だ。今回は全て英語。この時の比ではない。。。

最終試験は8時10分前にはスタートした。
どんな問題が出るだろうかと皆が眠そうな目で答案用紙を見る。

すると・・・

中間テストと全く同じ問題・・・

"お前ら授業真面目に出てナイスプレゼン(毎回、プレゼンする必要がある)ばっかりだったから、今回はすごく簡単な問題にしてやったから(笑)”

ということで、私の1週間はあっけなく終了した。

いつもしっかり準備すると、肩透かしを食らうという今までの人生の縮図がそのまま再現された瞬間だった。

そしてこの日、2時間のテスト終了後、即患者さんの治療(しかもシビアな自発痛があるイマージェンシーからの下顎小臼歯のケース)が入っていた。しかも彼女は怖がりで笑気を使わないと治療ができない。またいわゆるドラッグの常習者とのことで、麻酔が効きにくい。しかも私は寝ていないのでこの時maxに眠たかったので、まさにお互いが最悪のコンディションで治療に臨んだわけだ。

笑気をし、伝麻し、露髄しない程度にコンタクトのカリエスを取り、しかし縁下になり出血し、止血し、グラスアイオノマーで隔壁作成し、その間、笑気が切れてボンベを数度交換しつつストレートラインアクセスし、と思えば隔壁が脱離し、再度隔壁を形成し、やっとの事で作業長を決めたところで、私が落ちそうになったのでextripationのみ行い、Ca(OH)₂貼薬し、仮封して強制終了させていただいた。伝達麻酔が効きすぎて顔面半分がパンパンになってる感じがするとクレーム?を受けるが、鏡を見せて納得。彼女はまだ22歳なので歯よりもそこが最も気になるようだった。

そして今日の午後13時からも根が異常に長い上顎大臼歯の治療(作業長がそれぞれ23mm以上)、しかもこの患者さんが”もう俺はここに来たくないからなんでもいいから今日中にさっさと終わってよ忙しいから”、というものなんで、北向きの私はそう言われると意地でも”きちっと”何時間かかっても絶対終わるまで止めないという気持ちになり(笑)、Root Zx miniが治療中に故障するアクシデントとに見舞われようが、福岡から郵送してもらった元祖Root ZXをロッカーから持ち出して、レングスコントロールをしつこく、何度も、作業長-0.5mmとなるようにwire filmと見比べながら、これでもかと4根管全て理想的なレントゲンが得られるまで何度も調整し、根管充填して終了したのは夕方6時であった。気が付いたらApicoectomyをしていたBig Brotherのホセと私だけがクリニックに残されたのだった(笑)。

介助についてくれた学生さんには申し訳ないが、私は一度やると決めたら絶対に引かない人なんで、彼のHappy Fridayをもしかしたら潰したかもしれないが、director、Fuculty、そしてこの介助の学生さんからの" Great job!”の労いの言葉で少しは自分が報われた気がした。

そして今、自宅でこの文章を打ち込んでいるのだが・・・全く眠たくない。
アドレナリンがまだ放出されているようだ(笑)。
もうコロナを3本も飲んだのに・・・

とはいえ、来週のliterature review、統計学のテスト、薬理学の再試とレポートに今週末も忙殺される。

この2週間は人生で経験したことのない、殺人的スケジュールだ・・・これに並行して患者さんの治療がガッチリ入っているのでそれもきつい。

これがいわゆるレジデントライフというやつなのだろうか?

私は、本当によっぽど留学したくてたまらないという人以外には、北米の大学院、歯科専門医プログラムへ行くことを初めて勧められないという気持ちになった。

地獄に落ちる覚悟があるなら・・・これほど”虎の穴”な場所はない。。。

生半可な気持ちでくると後悔することだけは、太鼓判を押そう(笑)。


2014年12月4日木曜日

診査、診断とレアキャラ化?している点について・・・

今日は1日中クリニックの日。
午前と午後に新患を2人見ました。

午前中の患者さんは15歳ヒスパニック系女性。
#13(左上第2小臼歯)に自発痛があり、来院。
実はUSCのクリニックでは、いきなり痛いから来てエンドに回されるということはほぼありません。紹介状を持っている人しか、エンドのレジデントクリニックの受診ができないからです。

じゃあ何故この女性は紹介状もなく、受診できたか?
それは本来の私の患者さんが無断キャンセルしたので私に時間が空いたので、スタッフがイマ−ジェンシーに電話して、エンドがらみの患者がもしいれば、エンドのレジデントクリニックに回すようにと、割り振ってくれたのです。

イマージェンシーは学生が治療します。そういう意味では、この15歳の女性はラッキー?だったかもしれません。

今日は時間が押せ押せだったので、まずスタッフが気を利かせてレントゲンを撮影してくれました。そこから診断に入るといういつもと逆のパターンです。

レントゲンからは#13に大きな虫歯があり、#14が近心へ移動しています。
これだけ見ると、全く普通のInitial RCTかという感じでしたが、いざ口腔内を見ると・・・#13は捻転している歯で、しかも#14が#13の虫歯へ向かい近心へ移動しており、虫歯は縁下まで到達。。。
レストラビリティがありません。
これをDr. Kallmanに伝えました。するとレントゲンを見るなり、
『(バイトウィングのレントゲンを見て)Akira, これのどこが抜歯なんだ。歯質が充分残っているじゃないか!エンドだよ、エンド!』と言いだしたので、
『いや#13は捻転していて、口腔内とレントゲンがかなり違うのでとにかくみてください。私は修復治療は無理だと思いますので、抜歯がいいと思います。』と食い下がりました。

そうして・・・I agree with you!となり、教授のロヘスも出てきて英語が話せない母親にロヘスが説明。とりあえず今日は抜髄のみ(extripationのみ)してCa(OH)₂を貼薬してGIで仮封してpain controlのみして終了しました。結局紹介元で抜歯になりましたが。。。
改めて、レントゲンと口腔内は違うんだなということを実感した午前中でした。

午後も午前と全く同じ展開でした。
予定されていた患者はキャンセル。同級生が妊娠していて気分悪く帰ったので彼女の初診の患者が私のところに来ました。
50代の男性。キューバ人。かなり神経質な方でリアクションが薄い方でコミュニケーション取りにくいな・・・と持っていたらいきなり俺には日本人の友達がいっぱいいてな!と喋り出すかと思えば、だんまりを決め込んだり・・・波がある方でした・・・。
彼の主訴は#24の痛み。エンドとペリオの双方に紹介状が出ており、予約の関係で先にエンドのクリニックに来たのです。#24は歯肉が退縮し歯根がだいぶ露出。cold testは歯根を避けて行いましたが反応はnormal。電気歯髄診でも正常に反応しました。打診痛はありましたが、ポケットが深くこれはペリオによる炎症が引き起こしているもので、Periapical tissueはエンド的には正常と考えました。レントゲンではPDLが肥厚しています。バイトさせるとフレミタスを感じます。エンドでなく、ペリオの問題が疼痛の原因です。

疼痛は歯肉退縮による知覚過敏なので、エンドの治療はいらないという旨をDr. Schechterに告げ診断に了承を得てから、患者さんには痛みの原因は、ペリオが元であり、エンド的には抜髄は不要であること、まずペリオの治療を行うこと、しかしペリオの治療後(ペリオの治療がどこまで行くかどのような行われるかわかりませんが。。。)も痛みが変わらないようであり、その痛みが日常的に我慢できないものであれば再び、エンドのクリニックで診査、診断した上で、かつあなたの同意が得られれば抜髄しますという説明をし、患者さんはペリオの予約を取りに行きかえりました。

午前も午後も診断のみでしたが、診断でエンドが不要であることを告げる時の説明がまだまだしっくりいきませんでした。なんせ言いたいことを瞬時に英語にせねばならず、まだまだダメだな・・・と今日は少し落ち込みました。

アシストについてくれたDDSの学生さんにも悪いことをしました。
彼女はわざわざ日本人の私を目当て?に来てくれたので・・・。
(エンドの診断から根充までを見学し、アシストすることがノルマとして必要な為)

実は最近、何人ものレジデントから"学生がAkiraのこと(エンドのレジデントの日本人ってどこにいます?見学したいんだけど。)をよく聞いてくるんだよ、お前人気あるな?(笑)”と言われ、今まではなぜかインド人に人気があったのですが、最近は国籍関係なく色々な学生がアシストについてくれるので、すごく助かってたんですが・・・

おそらく、DDS studentには、日本人レジデント(しかもエンド)が珍しいのだろうと思います。レアキャラなんでしょう(笑)。

実際、そんなにたいしたことは決してしてないんですがね・・・。不思議です。。。

2014年12月3日水曜日

日本のエンド=オーバー、米国のエンド=アンダー?

久しぶりにこのブログも更新です。
最近はテストで忙しく臨床の話を書く時間がありませんでした。
もう12月ですね・・・1年は早い。
このブログを始めたのは5月末です。
それからもう7ヶ月。時は早い・・・。

さて、今日は午前中の患者さんが無断キャンセル。したがって患者さんがいなかったはずだったのですが、同級生のサウジアラビア人がいつもの(笑)寝坊?してon timeに来れず、彼の患者(ペルー人50代女性)が私のところで初診になりました。

彼はすごくいい奴なんですが・・・いつも時間通りに来ない(笑)。必ず30分〜1時間は遅れてきます。

そして授業中はいつもipadで動画を見ているか、寝てるか(笑)。

ただすごいのは、当てられれば求められたもの以上の意見を自分で述べるところ。

サウジでは歯内療法専門で診療していただけあってそこはさすがです。

しかし、彼がいないのでスタッフ総出で、あいつはどこいった??の大合唱。

印象的だったのは、スタッフのボス格の方の御言葉で、『これでは(時間通りにこない)プロフェッショナルとは言えない。』という重いお言葉。

ただ、彼は一向に意に介さないようでした(笑)。

患者さんは7月にイマージェンシーで抜髄のみ(just extripation)をしている患者さん。仮封が脱離し、Perとなりひどい打診痛が生じていました。

根尖部歯周組織の炎症がひどいため、麻酔はカルボカインで伝達麻酔。その後頬側・舌側にセプトカインを2本使用し、ラバーダム装着。

こちらでは、Emergency, DDSプログラム共にCa(OH)₂の貼薬使用を認めていません(PGエンドのみCa(OH)₂は使用できます。)。

したがって、彼らはスポンジにクロルヘキシジンを浸して髄腔内にそれを入れて仮封をグラスアイオノマーでします。

しかし、考えても見ればスポンジ+クロルヘキシジンだと乾燥が不十分になります。そこによりによって感水性が強いGIを使うのですから、仮封としての耐久性には疑問符がつきます。私なら普通にCa(OH)₂+cavit使用しますが。。。Ca(OH)₂はこちらでは激安です。15$あれば買えます。しかもアマゾンから(笑)。

残存する仮封材とスポンジを除去すると、案の定髄腔内は汚染されていました。作業長を測定して今日は終了でした。

また今日はクリニックに日本人の患者さんが来ていて、日本の某歯内療法専門医(私達PESCJのグループではありません)が行った部位のやり直しを2年生のレジデントがしていましたが、治療前にトランスレートを頼まれました。

曰く、日本とアメリカで歯内療法の違いがあるのか?もっと詳しく言えば、日本はオーバーを好むが、アメリカはアンダーを好むと聞くが事実か?というご質問でした。

日本の歯科医師がオーバーを好むわけではありませんが、ここ福岡県ではかつて保険診療での根管充填・加圧加算はレントゲン的根尖まで根管充填材がピタッと入っていないと加圧加算を認めないという文化がありました(今でもあるのでしょうか?)。おそらく一部は、その名残、残遺から、日本人歯科医師がエンドではオーバーを好むというのはきていると思います。

私はその患者さんに、

"日本でもオーバーを良しとしない歯内療法をするグループもいます。私もそのグループに所属していますので日本人歯科医師=オーバー根充というのは誤解です。”と伝えておきました。

また、日本のエンド(オーバー根充)というのは西海岸のエンドの影響を受けているとよく言われますが・・・

USCはペーテンシーファイル推奨&作業長はApex-0.5mmです。これはApical ForamenからApical constrictionまでの解剖学的平均値に基づいています。

したがって、シーラーは逸出しやすく、テクニカルエラーで作業長が失われることも多いわけです。(特にリファレンスポイントの位置の設定、ストッパーの緩みに注意しないとすぐオーバーインストゥルメンテーションになります。)

最近私がなぜこちらは(西海岸は)オーバーが多いのか?ということを考えると、これが最大の理由の様な気がします。

頭ではみんなわかっているんです。オーバーはダメ。組織学的にも疫学的にも受け入れられない、と。

したがって、ケースプレゼンテーションで作業長測定、ポイント指摘、根充後デンタルがオーバーになると必ず教授陣からツッコミが入ります。

しかし理論と臨床は全く別物。臨床で作業長の位置をピシっと決めそれを維持するのは本当に大変です。

しかし、Apex-0.5とApex-1.0ではこうも差が出るのかと最近感じます。Apex-0.5mmは難しい!

要約すると、USCのエンドはペーテンシーファイル推奨、アピカルコンストリクションをなるべく解剖学的数値に近ずけようとする攻める傾向にあり、各種設定が甘いと作業長が失われやすい、それどころか根尖部の解剖学的形態を破壊しかねないという難易度が高い方法を行っているような気がします。

”西海岸派”として著名な、ラドルやブキャナンはちなみにApical Foramenまで根管形成していますが、USCではそのようなことは行っていませんし指導していません。根管形成は根管内に留めておけ!と言われますし、そのようなlitarature reviewも内容でした。また、もし根尖からオーバーしていればもう一回アピカルストップ作り直せ!と指示されます。

USCのエンドの作業長の設定方法を、日本のしかもGPの先生に勧めることは・・・私はできません。

やはりApex-1.0mmの方がテクニカルエラーを保証してくれるという意味では安心感が強いです。圧倒的にオーバーinstrumentationが少ないですから。

おそらく、日本でオーバーが多いのは西海岸の大学の影響ではなく、ラドルやブキャナンといった有名なエンドドンティストの影響だと思われます。重要なのは、彼らの意見はAAEや歯内療法専門医、あるいはペーパーの中で優位性を占めていないのだという事実を認識することです。(多分、こっちに来て彼らから話を聞いた誰かが日本で広めたのでしょう。。。そのあたり私はわかりませんが。)

ここでもう1度はっきりと言いますが、現在USCでは作業長=Apex-0.5mmです。そしてこの作業長は難易度が高い設定です。日本の歯科医師の先生には勧めません。

うちの代診には、APex-1.0mm。たとえ2mmアンダーになっても問題無しと教えていましたがこれは今でも変わりません。

また、ラドルやブキャナンのようなApical Foramenまで根管形成する方法は根尖部を破壊して予後を悪化するだけなので止めましょう。

とにかく鍵は、APex locaterでApexを指す位置でReferece pointからApexまでの距離をなるべく正確に測定し(そのためには極力大きなファイル>#15を使用することを推奨します)、そこから1mm引くことです。(無論、ラバーダムなどは必須ですが)

これさえ守れば、トラブルは大きく減少します。

さて、その日本人の患者さんはよく勉強してここのクリニックに来てるんだな、と感じました。

オーバー根充=根尖部解剖の破壊ですから、多くの疫学的調査で示されているように予後は芳しくありません。

彼女はそこを心配していたのでしょう。

ただ、その東京在住の日本人歯内療法専門医というのは患者さんの話を聞く限りどうも、明らかにGPのような気が(笑)・・・

まあそこは置いておいて(笑)、担当した2年生レジデントはこちらで既に開業しているベテラン歯科医師。

彼のエンドは私は好きです。なぜか。生物学的な侵襲を極力与えない術式を好むので、私と考え方に共通点が多いからです。

途中経過を見ていましたが、めでたく遠心根の病変がある部位はpatentが得られていました。近心は根尖が石灰化&レッジあり&病変なしなので無理に開ける必要はなさそうでした。

というように、今日の午前中は大変忙しく働いていました。

午後からは、統計の授業のレポート作成です。

こちらは最近は、毎日雨。ようやく日本でいうところの秋が来たという気候です。

長かったこのセメスターも来週末で終了。

その後は日本に帰って、エンドの処置をする予定です。

(Tさん、同意書の件、もうしばらくお待ちください。)

2014年11月14日金曜日

理事長診療のお知らせ

この記事は、まつうら歯科医院のホームページからの転載です。
主に、患者さん向けとなります。

患者さんにお知らせです。
この度、理事長が米国より定期的に(3〜4ヶ月に1度)一時帰国し、患者さんの診療を行なう事になりました。

第1回目の診療は12月15(火)〜12月29(月)までを予定しています。

つきましては、診療をご希望される患者さんにつきましてはご予約をお取り致しますので、医院の方までご連絡ください。
なお診療内容につきましては、理事長の日本での滞在期間が2週間と限定されますため、歯内療法に関わる治療(抜髄・壊死歯髄根管治療、再根管治療、歯内療法外科、リヴァスクラリゼーション、吸収、外傷等)とそのご相談に限定させていただきますので御理解の程宜しくお願い致します。

<診療内容>
・歯内療法全般(抜髄・壊死歯髄根管治療、再根管治療、歯内療法外科、リヴァスクラリゼーション、外傷等)に関わるご相談
・歯内療法の患者さんの治療

<診療費用>
・初診料(主訴のみ。その日に理事長により、診査診断およびご説明。1時間程度お時間を頂きます)・・・¥10,000
・診察料・・・症例により異なりますので、直接医院の方かmturakr@fukuoka-endodontist.comまでお問い合わせください。
 ※今回の診療に関しましては、自由診療のみとさせていただいております。 

<理事長より>
患者さんにおかれましては大変ご無沙汰しております。理事長の松浦です。
現在、米国の大学院にて歯内療法専門医になるべくこちらのカリキュラムを受講中のため、日本の患者さんには大変ご迷惑をおかけしております。この度色々と話し合った結果、こちらの大学院が休暇に入った時に限り定期的に日本で診療を行なう事になりました。滞在期間は概ね2週間程度です。
歯内療法は概ねどの処置に関しても治療回数が1回もしくは2回で終了致しますし、その後の経過観察に関しましても、通常、治療後より3~6ヶ月程度時間を要しますので、根管治療全般に関しましては上記のような変則的なスケジュールでも問題ない事をお約束致します。限られた時間ではございますが、多くの患者さんにお越し頂ける事を心よりお待ち致しております。

医療法人精密会 まつうら歯科医院 理事長 松浦 顯

2014年11月10日月曜日

USCエンド、実は存在する?

USCでは症例が1つ終わるごとに、facultyにチェックを受け、可とならなければその症例が症例として認められないシステムである。9月から2ヶ月経過したが、10ちょっとの症例を終了しただけなので、少し私は焦っている。なんせ最低200ケース、平均300というのだから基本、1回法で終わるくらいの心構えがないと私には無理である。もちろん、毎週火曜日のナイトクリニックの私は常連。私は、講義<<臨床なので。

しかもその上、1ヶ月に1回ケースや授業の取り組み、Lit reviewへの参加度や貢献度に対する4者面談(レジデント1人+ファカルティ3人)があり、そこで色々ありがたいアドバイスを受けるわけだが、私はいつもファカルティに言われるのが、アンダーであるということである。

USCでは作業長はRIL-0.5mm。理由はKuttlerの1955の論文から。
なので、今は日本にいた時よりもかなりアグレッシブである。
こちらでは、シーラーパフは許容されるというか、シーラーパフしないものは全てアンダーもしくはdentin blokageしていると判断され、お前どうやって作業長設定しているか言ってみろと詰問?される。
シーラーパフはApical Foramenから流れでた証拠であり、overextendedでなくsurplusであるという考え(シルダーのコンセプト)。
しかもUSCでは.04テーパーが主流なので、日本での.06よりもテーパーが少ないので、シーラーが溢出しやすい。

従って私の現在の症例は、WL-4~5mmでアピカルプラグを作りCWCTもしくはBC sealerでシングルポイント。そしてほぼ100%シーラーパフしている。
ペンエンドの先生方には顔向けできないが、すいません今は私は完全にシルダー派を演じています。

こちらでは、wire film撮影後にチェック、ポイント試適後にチェック、Initial obturation後にチェック、根充後にチェックを受ける必要がある。

今日も、#27の再治療で私としてはRILのX-ray(Apex locaterでApexの位置のMAFのX-ray)からすればレントゲン上ではアンダーに見えるものの、うまく作業長のコントロールができ、WL-1mmの範囲に収まったと判断したが、教授のRogesからは『Akira、まだわかってないな。どう見てもショートだろ。形成をやりな直してもう1回呼びなさい。』とダメ出し。


結果、やはりシーラーパフして根充材の位置はwire filmでのapical foramenの場所とほぼ変わらないように見えて、私としてはオーバーかな・・・という判断だったが、facultyは誰に見せても『Perfect!良くなったなあ!』と称えてくれるのでどうしたものか・・・とさらに悩んでしまう。
他のレジデントの症例を見ても皆、どoverである。ひどいやつだと根充材がとぐろを巻いている場合がある。
この術式のロジックをいつ聴いても私は納得ができない。
ただ、今は100%いうことを聞かなければいけない立場なので、私は毎日なぜこの方法がベターなのか?を拙い英語で必死に理論付けようとしている。

USCエンドなんて、存在しないよとfacultyは言うが、私には最近USCエンドなるものが実在するように見えてしょうがない。明日は、私は症例をたっぷり持って行ってdiscussionしなければならないので、是非このところの疑問を解消するような答えを見つけれればと思う。

今月は来週、USCエンドシンポジウム。そして再来週はBuchananのHands-onコースが又してもサンタバーバラである。そしてテストがあり、冬休みに入る。あっという間に半年という時間が過ぎようとしていることに驚きを隠せない。。。

2014年11月6日木曜日

下顎小臼歯、2根管でなく樋状根・・・

以前の投稿で、下顎の小臼歯が2根管であるという症例の治療をしたというお話をした。

あれから色々検索してみると、やはりストレートラインアクセスをしっかりやらなければ、舌側根管にはアプローチができないという趣旨の文献や教科書が多かったため、私は方針を転換し、超音波で舌側方向に拡大しストレートラインアクセスを確保しようと試みた。

すると、容易に下図のように根管が明示でき、ファイルが入るようになった。



よし!これで頬側、舌側2根管作業長を図れるぞ!とRoot ZXでApexまで測定しレントゲンを撮ると・・・


私が格闘していたのは、なんと2根ある片方の方であった。。。
しかしどう考えても合点がいかなかった。
レントゲンは偏近心から撮影しいるので、ファイルが入ってないのはより舌側??
しかし上図の根管の位置から考えて、これ以上舌側にもう一つ根管があるのだろうか?
これ以上舌側に追求すると間違いなくパーホレーションしそうなので私は混乱したままもしかしてファイルを挿入ミスしたのではないかと思い、上図の2根の拡大形成を先に行い、ポイントを試適してレントゲンを再度撮影した。


しかし・・・・状況は変わらなかった・・・。やはり上図の2根管は未着手の根に比べてより頬側に位置しているようである。

私は完全に混乱した。一体これは何が起きているのだろうか??

ここで私はUSCエンドの重鎮ファカルティであるDr.シェクターとDr.コールマンに上図の症例に関して術前にCBCTを撮影する許可を得るために、2人に別々に相談した。

すると2人ともこのレントゲンを見せて二つ返事でこういう言葉が返ってきた。

『これは、C-shaped root canalだな。』

C-shaped??下顎の第2大臼歯でしか私は見たことがないが・・・でも教科書見てもそういうことあまり書いてないんですけど・・・と質問してみると、

『OK。じゃあランチを賭けよう。もしAkiraが正しいなら(私は何も自分の意見を言ってないのだが・・・)、10ドルのランチをおごってやる。でももしC-shapedだったら・・・わかってるな(笑)?』

3階の矯正の診療室にCBCTがあるのでそこで撮影の予約を取り、早速CBCTを分析してみた。すると・・・

C-shapedであった。。。画像が判然としなくて申し訳ないが、別の切り口では完全にC-shapedであった。しかも頬側の歯槽骨は完全に消失している。



私が根管形成したのは、遠心の頬側と舌側だったのである。


なんと近心にtinyな根管口がCBCTで見える。それは舌側と頬側のほぼ中央に位置しているように見える。

つまり、私はアクセスの外形をこのようにmodificationしなければならない。


と言っても、この3番目の根管が見つかる保証はないし、見つけたとしてもC-shapedなのでフィンがあるので、そこも修正を強いられる。要は、頑張っても非外科的な治療では難しいかもしれない。

そこで治療前に、この3根管目が見つからない時にどうするか?について患者さんにインフォームドコンセントしなくてはならなくなった。
つまり、うまくいかない時、外科をするか抜歯をするか、はたまたもう今の時点で抜歯するかである。
外科もこの場合、歯根端切除か意図的再植術かの2択になる。Dr.シェクターは私に強硬に意図的再植術を進めてきた。理由はc-shapedをApicoectomyで逆根管形成するのは難しいという理由であった。

以上を整理し、患者さんに説明を行った。
①あなたの下顎小臼歯は非常に複雑な根管形態であるということ。(C-shape)
②3番目の根管を見つけるように最大限努力するが、最終的に見つからないかもしれないこと、その可能性が濃厚であること。
③その時は、今見つかっている2根管のみ根充して、経過観察後、(必要が生じれば)外科治療へ移行する必要があること。(おそらく外科治療が濃厚であること)
④外科治療には2つの選択肢があり、1つはApicoectomy。もう一つはIntentional Replantationであるということ。
⑤それが嫌なら現時点で抜歯するか、3番目の根管が見つからない時に抜歯するか?

しかし、私はエンドドンティスト(に将来なるので)なので、極力保存したいという自分の希望を伝えた。



すると患者さんは、保存を強く希望した。もし彼女がこの歯を失うと、彼女は右下の臼歯部にインプラントを最大3本埋入する必要が生じてくるからだ。

CBCT撮影&診断、インフォームドコンセント後、治療を午後3時半からスタッフが嫌な顔をするのを横目に開始した。

そして格闘すること2時間、午後のfacultyであるDr. Lazarと一緒にああでもないこうでもないと言いながら、超音波やMUNCE Discovery Burを用いながら彼はロードマップを発見しようと、私はヒポクロでバブルが確認できるところを超音波ですこしずつ拡大しながら根管の発見に努めたのだが・・・見つからなかった・・・。診療は1時から開始したが、終了したのはなんと6時。最後まで私に付き合ってくれたDr. Lazarにはありがとうとしか言いようがない。そして患者さんにもだ。次回、再度トライしてもし見つからなければ仕方がない・・・。

今回、この症例を通じて私が感じた最大の感想は、
"下顎小臼歯は根管の形態がバラエティーに富んでいて難しい”
ということである。

GPの時は、下顎の臼歯が欠損していた時、私は治療のオプションの一つとしてブリッジをインプラントと同様のランクでフラットに患者さんに説明していた。

しかし、私は今後、下顎小臼歯を支台歯とするブリッジをそれが生活歯であろうと、失活歯であろうと、第1選択としてGPの先生に勧めないだろう。

もしも下顎小臼歯の補綴にエンドのトラブルが発生したら、外科になる可能性が少なからずあることを事前にアドバイスするだろう。

これは私の中で、エポックメイキング的な出来事だった。

今まで、第2大臼歯を除くブリッジに関してはインプラント=ブリッジだったが、今では欠損補綴に対しては、インプラント>ブリッジである。といっても、もう今後2度とそういう治療をする機会はないが、アドバイスするとしたらそういうことになるだろう。

非外科的な根管治療の可能性と、限界を見た1日だった。

2014年10月25日土曜日

開業の準備スタート

日本帰国まで1ヶ月半になった。
おいおい、まだまだ全然終わってないでしょう?と言われそうだが、そろそろ帰国時の開業地を探さなくてはいけない。

通常、歯科医院を開業するには1年か1年半前から準備しなくてはいけない。
残念ながら私の財力では、帰国してから開業地をゆっくり探して・・・などという悠長なことを言っている暇はない。

家族や、スタッフ、そして自分も生きていかなければならない。私が今こうやって学習している時間を頂いていればいるほど赤字になるのは税理士から言われなくてもよくわかっている。

Live for Todayで、私には傷ついた?羽を休める時間はないのだ。
私は帰国してすぐにでも働かなければならないし法人の理事長として、常に先のことを考えて生きていかなければならない。

エンド専門で開業するので、実はユニット1台で開業できる開業地を模索している。
スタッフも最初は1人いればいい方で、下手したら自分だけでも構わないが昨今様々な問題も世の中では起きていることを聞くので、やはり1人は最低必要だろう。

広さは10坪もあればいい方で、それ以上の規模は考えていない。ビル診で博多駅周辺がベストだ。すでに何箇所か目星はついているが、いずれも家賃が10万ちょっとくらいで今のロスのアパート代(20万が相場)よりもはるかに安いので安堵している。

開業!というと数千万かかるのが通常だが、私の次の開業ではそれほど費用はかからない。強いて言えばテナントを借りる時のまとまったお金と、内装工事費くらいだろうか。帰国すると保険医をしないので、もう新しいクリニックに看板はいらない。

宣伝も全くする気もない。ネットで十分すぎると思っている。
ユニットも既に持っているが、最悪新しく入れてもリースで十分である。
滅菌のシステムもそうだし、エンドの器具は既に所有している。
あとはレントゲンのシステムのみであるがこれも保険医では必須のパノラマは私には必要がない。PAだけ撮れるシステムがあればいいのである。
超音波もすでにあるし、外科の器具もあるし、あと考慮しなくてはいけないのはマイクロスコープををプロエルゴに変えるか、CT を入れるかくらいだろうが、CT撮影できる病院が近くにあるので(福岡歯科大学)、それも最初はいらないだろう。

最初は慎ましくやっていくのが自分に合っている。
また、もしこの地で私の需要がなければ、医院を閉めて次の場所へ移動することができる。それが日本国内でなくてもいいわけである。なんならここLAでもいいわけだ。(その気はゼロですが。)

エンド専門医のいいところはここである。開業時の初期投資が少なくて済む。機材も学生時代に揃えてしまえば、新たに購入すべきものが見当たらない。新たなファイルシステムが出たとしてもたかが知れている。自分が開業地としてそこが気に入らなければ次々移れるのだ。また自分で開業しながら他院さんの患者さんを治療することもできる。(現時点でありがたいことに既にそのような話を頂いている。)北米では事実そうである。私の同級生の奥さんが既にエンドドンティストだが、彼女はしょっちゅうオフィスを移転している。なぜエンドのPGプログラムにみんなが入りたいかという理由の一つがここにある。

もう自分は、自分の納得できない仕事をする気はさらさらない。価値観が合わなければそこまで、である。

次回、12月に帰国するのでその時に適切な場所かどうか今ある物件を自分の目で確かめてみたい。(ということでこれをご覧のO税理士法人のSさん、N銀行の例の方に次回帰国時に物件の件、お伝えください。)

2014年10月24日金曜日

隔壁、作らない?

先週の火曜日の午後から上級生のCase Presentationが始まった。

毎週火曜日は交代で朝ごはんか昼ごはんをエンドのレジデント、スタッフのために用意し、朝9時から教授の授業1時間、その後は我々はOral bilogyの授業、2年生はliterature review。午後1時から3時までケースプレゼン。3時から5時までがラスティンの授業。そ5時からナイトクリニックがあり、9時まで学校に毎週いるという生活で1日がとてつもなく長い。

Caseは非外科のInitial, Re-Tx、外科、リバス、その他の治療に関して6ケースを発表するというものである。

ケースプレはBoard Certifiedの試験用のひな形に準じて行なわれる。



ケースを通じて(といってもまだ2人しか見ていないが)私が個人的に特に気になったのは、

①カリエスの完全除去ができていない(コンタクトカリエスがそのまま)

②昔のコンポジットやアマルガムが明らかにそのまま隔壁として使用されている形跡

③作業長と根充後のデンタルを比べると、明らかにオーバー。シーラーパフもたくさんあり、私ならこの症例は人前に出さない。

④作業長のレングスコントロールをどのように気をつけて行なっているのか?

⑤根尖部の拡大不足?(IBFがないので分からないし考え方の違い?)

⑥仮封材と根充材の間に隙間。細菌漏洩(感染)の温床

⑦PA(デンタル)の偏心があまり効いていない

⑧下顎大臼歯のHot tooth case(Symptomatic Irreversible Pulpitis)で1回法で根充まで行ってるが、どのように疼痛をマネージメントできたのか?

⑨疼痛や打診痛があるがそもそもなぜ1回法か?

等だが、特に気になるのが①、②である。

これがケースで出されるとおいおい根管治療の目的ってなんでしたっけ??と質問したくなる。しかも誰もそこに突っ込まない。

日本でもそうだったが、カリエスが深く、すべて取るとおそらく露髄すると思われるケース(病名で言えばSymptomatic/Asymptomatic irreversible pulpitis)でどのように隔壁を作るべきか?いつも頭を悩ませてきた。

特に難しいのが#2,15,18,31の第2大臼歯である。それ以外であれば数歯(1歯)遠心にクランプをかけて患歯のカリエスをとり(どこまで取るべきかはここでは割愛させて頂く)、トッフルマイヤーを巻いてウエッジを挿入し隔壁を綺麗に作るという保存修復時のスタイルでラバーダムをかけることができる。

またなるべくこの隔壁は治療後外したくないので(めんどくさいからである)、可能な限り露髄しない程度カリエスが除去され、防湿できれば、コア用のコンポジットレジンを用いて隔壁を作ってしまう。ただし、ラバーしているのにもかかわらず防湿が不完全な場合(縁下カリエスの場合)、コンポジットで隔壁を作ると漏洩が大きくなるのでGlass Ionomerを選択する。これは概ね保存修復の教科書に書いてある通りのマテリアルの選択であると思うが、問題はこのような場合、根管治療後にこの隔壁を取るかそのままにするか?であるが、外すのであればラバーダムができない歯なのでメタルで築造してもらうかそもそも治療することを諦めるか、クラウンレングスニングをペリオ専門医にしてもらうか、補綴的に許されれば挺出してもらうかの4択に私の場合は基本移行する。

なお、これを無理やりレジンで築造するなら私はグラスアイオノマーを外すことはしない。防湿できないのにレジンを使用してもしょうがないからだ。あえてグラスアイオノマーを可能な限り薄く一層残してレジンで築造し、クラウン形成の時に補綴担当医になんとかしてもらうしかない。日本では自分で補綴していたので自分でそうやってなんとかしていた。圧排糸を2本は使用し、顕微鏡を覗いてなんとか歯冠形成したものだ。当然マージンはややヘビーシャンファー気味になる。仕方がないのである。条件が悪い歯を治療して残すという判断になったのだから。ここでよく議論になるのがこういう場合はクラウンレングスニングをしなさい!とか、挺出しなさい!という話でかつてGPの時代にはそのようなアドバイスをいただくことが同業他社様から時折あったが、それらが補綴的な問題を決して完全に解決できる手立てではないことは、これだけネット社会が広がった今、多くの方が認識されているのではないだろうか?昔は、縁下深いマージン=クラウンレングスニングor エクストルージョンと誰が決めたかわからないが謎の方程式が存在したものだが。。。

話が逸れたが、私が言いたいのは隔壁のことである。
以上はまだ患歯が第2大臼歯ではない場合で、しかしこれが第2大臼歯だとそううまくいかない。まずラバーダムのクランプを第3大臼歯(親知らず)にかけることが事実上不可能だからだ。抜歯されている場合も多いのでこの場合、第2大臼歯にクランプをかけるしかないのだ。すると困るのがコンタクトのカリエスをどう処理するかである。マトリックスバンドで巻きたいところだが、ラバーダムのクランプが邪魔で無理である。ラバーを外してトッフルマイヤーを巻いてそこにラバーダムかけるという試みも何度か試したがこれも多くの場合物理的に無理である。結果、日本ではラバーを外し、Zooに切り替え、そこで可及的に防湿を行いグラスアイオノマーで隔壁を作るか、そもそもバンドを巻かずにエンド後のクラウン形成中についでにはみ出したグラスアイオノマー(レジン)を除去してもらうかしたものである。

こちらではどうやって隔壁をみんな作っているのか?気になって特にそこに注目して話を聞いていたが、カリエスはそのまま、昔の充填物は外さない、ということが多い。私が最初Facultyと話がかみ合わなかったのはここである。

"君は根管治療をやりにここにきているんだろう?”
"時には防湿が不完全になるときもあるさ。。。問題はこの歯を残したいってことだ。違うか?”
”(縁下カリエスに対して)ラバーダムすることはここでは絶対不可避だ。絶対にラバーダムしてグラスアイオノマーで隔壁作るように。”

と自分が気になる、このような縁下カリエスがラバーよりも下にくる場合どのようなマテリアルを選択してどのように隔壁を作った方がベターなのか?あるいはそもそもこの時点で抜歯なのか?に関して示唆をくれる意見をまだ得れていない。
いや実は自分でも薄々感じているが、答えはもうお互い暗黙の了解で出ているのかもしれない。なので自分は(この部分に関しては保存修復でのロジックがあるので説明しろと言われれば何故自分がそうするか?を説明して見せることはできるのだが、そうした瑣末?な細かい?ことに関してエンドの科で議論することがもはや場違いなムードが漂っているせいか、最近はここにいる間は)割り切って患者さんには申し訳ないがバンドも何も巻かずにそのまま穴にグラスアイオノマーを無理やり突っ込んで隔壁を無理やり作り、エンドの症例が欲しいがためにエンドに早く持ち込み、そしてエンドをなるべく早く終わらせ、後はよろしくね、になってしまっている。

確かに症例を300こなさないといけないのでそんなことを言っている暇はないのかもしれないが。。。手技ばかりに目が行くのも何か違う気がするのは自分だけだろうか?


2014年10月20日月曜日

Patency File、是か非か?

最近、ある歯科医師の方から、Patency Fileに関して私が否定派なのはどういった根拠からか?実は自分は賛成派で、臨床上もほぼトラブルなく過ごしているし、Pathway of the PULPを読んでみても否定的な書き方はされていないと思うのですが。というご質問を頂いた。

Patency Fileとは根尖部に詰まった削片を小さなファイルを用いてアピカルフォラメンから数mm出すことで除去し、作業長を可及的に維持するための処置である。

AAEの用語集では、apical patencyとして収録されており、
” A technique where the apical portion of the canal is maintained free of debris by recapitulation with a small file through the apical foramen.”と定義されている。

さてこの行為について私は大学時代、習った記憶がない。この方法は開業してから知った方法で、歯科雑誌か何かに乗っていたような気がするが、記憶は定かでない。
USCではDDSプログラムで作業長を維持するための必要なテクニックとして学生にしっかりと教えている。したがって実習で学生が作業長までファイルが到達しないという局面に達すると、patency fileをしてこの根尖部の詰まりを除去することでそうした問題を解決してあげている。(ただし彼らのほとんどは抜去歯牙での根管形成中、洗浄液を根管に満たさずにファイル操作している。これが詰まる最大の原因だが。。。)
しかしこの方法を教えている北米の歯科大学(DDSプログラム)は約50%だという。
このことからしてもPatency Fileというのは議論が分かれる治療行為といえるだろう。

実際に学生実習でpatencyを行うと確かに尖通性は復活するが、この時同時に根管のdebrisがアピカルフォラメンから出てくるのが確認できる。これは大丈夫な処置なのだろうか?これが感染根管だったら細菌感染を根尖孔外へ逸出させるのではないだろうか?また術後の痛みが出ないのだろうか?と色々考えてしまう。

私自身も気に成っていたトピックであり、この先生から御質問をいただいたので少し調べてみようと思った。数年前に某講習会でこの話を聞いたときは、確か”しないほうがいい処置である”という記憶がある。

まず各種教科書ではどのようにこの行為を捉えているだろうか?有名と言われている教科書を全てレビューしてみたら賛成派と反対派に分かれている。また全くこの件に関して記述がないものが見られた。(その多くはヨーロッパのエンドドンティストの教科書だった。)

概ねこの行為は、”作業長の維持には有効だが、この行為自体がいまだいいのか?悪いのか?十分なエビデンスがない”という評価である。

その中で、肯定的な意見を見てみると、①作業長が維持できるので根管形成による人的エラーのリスクを減らせる②デブリが除去できる?③術後疼痛を引き起こさない④ヒポクロを根管内に満たしておけば、これで感染する可能性は最少⑤突き出すことで根尖部の炎症や感染の状態を把握できる(例えば浸出液や排膿が確認できれば感染や炎症の程度が確認できるby Ng)⑤洗浄液の到達が良くなる?(エビデンスはないが)⑥Patency Fileを行うと、エンドの予後が向上した(retrospective study)⑦グライドパスを確立または維持できるというものであり、どちらかといえば生物学的な理由よりも機械的な理由(根管形成や充填を上手くやる)が優先されている。

patency大反対の急先鋒は多くの鮮やかな組織切片を我々に提供してくれているD. Riccuciだ。彼はpatency fileが治癒を促進するのか悪化させるのか、治癒にどのような影響を与えるかははっきりしたエビデンスがまだないと断言し、しかも自分の臨床の中でPatency Fileを行なっていないと述べている。またGuttmanもPatency Fileは経験主義的でこのコンセプトとテクニックをサポートする十分な研究はないと教科書で述べている。またWilliam T. Johnson とW. Craig Noblett もデブリや洗浄液細菌の突き出しに対する懸念が考えらるし、それにより根尖部歯周組織に感染源を供給するし、治療の失敗は根尖孔外細菌感染で起きるわけで、patencyをやっても細菌が減ることもないし、トランスポーテーションも起きにくということはないと述べている。また小さなファイルがデブリの除去にそれほど有効でもないとも述べている。
BergenholtzやØrstavik に至ってはこの項目すら教科書にない。それだけこのトピックに関して彼らは懐疑的なのであろう。現に、Bergenholtzの前のtextbokにはその記載があったが、最新版ではpatencyが削除されている。

さてこれらを総合的に考えると一つの結論に達する。
この行為は臨床的に有効だが、まだよくわかっていないことが多すぎるテクニックであるということだ。となるとこれをするのもしないのも、臨床家その人の考え次第ということになる。

例えば抜髄ケースで根尖部がブロックしたらいい気はしない。なので私はpatencyをこの時はするかもしれない。(ただし逆に抜髄の時は詰まったほうがいいという意見もある)
あるFacultyに聞いたとき、彼はこの意見を肯定していた。”patencyは歯周組織を傷つけているわけではない。例えて言えば皮膚の表面を擦っているようなものであり、それで炎症は起きないでしょう?”という理屈だった。しかし、それをサポートするペーパーはないので、やはりこれも経験主義的であると言わざるを得ない。この前講義を受けたラドルは超肯定派である。1mm出せ!そうすればアピカルフオラメンで#12となり、次の#15mmが容易に作業長まで入る(拡大率が50%→25%に減少するので)、patencyを確保しろ、Glide pathをしっかりやれ・・・という具合である。しかし教授のロヘスはやはり否定的だった。理由はペーパーで裏打ちされていないことはdiplomateとして、肯定する意見をEndodontistおよびEndoのレジデントに与えるわけにはいかないというものである。彼はペーパーにないことや懐疑的であることは一切しない主義である(しそうに見えるが)。

では壊死していたり、再治療で病変があるケースはどうだろうか?
この時は、細菌が根尖孔外へ逸出する可能性が否定できない。ということはそれが原因で難治化する可能性はなくはない。なのでこの場合は私はしないだろう。確かに根管にヒポクロを満たしておけばファイルの突き出しにより根尖孔外に細菌感染は起きないとする論文はあるが、in vitroでしかも1本だけであった。またこれはエビデンスはないが同期のレジデントがヒポクロを満たして作業長をレントゲンで計測、そこで若干ショートだったので少し調整したらヒポクロアクシデントが発生したという。またデブリの除去に関してもどれほど除去できるか分からない。術後疼痛に関しては壊死している場合patencyしたほうがしないものより術後疼痛が1/3以下になるという。デブリや細菌にまみれた汚れを根尖部に残しておく方がpatencyの刺激よりも炎症を引き起こすからだというのが考察としてあった。しかしこれには統計的有意差がなく、しかも術前に痛みがある場合や下顎の歯は上顎にの歯に比べて、patencyすると逆に痛みが出やすいという。色々な変数を考慮すると、patencyしたほうが術後疼痛のリスクを下げるのではないか?という結論であったが、確かになんらかの相関性はあるのかもという感じだが、歯切れが悪くなんとも言えない。

Patencyが!というよりも、前に述べたかもしれないが、根管が詰まる最大の原因は根管が乾燥していたり、洗浄不足である。私がつい先月まで作業長がややアンダー気味になっていたのもおそらくはラバーダムの継ぎ目を塞ぐマテリアルを持っていなかったがために、ヒポクロでの洗浄が曖昧になって十分な根管の洗浄ができなかったからではないかと推測する。現に、日本にいるときもそしてここに来て最近の臨床でも作業長がおもいっきりアンダーになることはもうほとんどないからだ。

以上を総合的に考えると、感染がないケースで、レントゲンを美しく見せたいなら、また根尖部の目詰まりが嫌ならpatencyをするのかもしれない。ただ、私はRiccuciやロヘスと同じく、patencyは全否定ではないができればしたくない処置であるということがやはりここからも結論付けられた。

もちろん、この処置で臨床的に問題が出ていない!という意見はよくわかるので、この件に関してもっと様々な研究がなされてペーパーの数も増え、エビデンスレベルも上がったリサーチが出て来れば白黒がつくことになるのかもしれない。

ここからは私の個人的な考えになるが、我々は歯科医師であるので、機械的な器具操作の良し悪しや術後の根充のレントゲンの美しさは無論、ある程度は重要である。
しかしながら、我々は何を相手に治療を行っているだろうか?根管治療であれば細菌、ということになる。
抜髄なら細菌を入れない、再治療や壊死ケースなら細菌を可及的に減らすということが目的と考えると、私の意見としてはもはやこの行為はテクニカルな目的で行うという以外、言及すべき言葉が見つからなかった。

これからのさらなるリサーチを待ちつつ筆を置きたいと思う。


2014年10月16日木曜日

下顎第一小臼歯、2根管

今日の午前中はほぼ1週間振りに患者さんの治療を行なった。

最近はどうもキャンセルや無断キャンセル、受付で支払いで揉めて帰る、診断だけしか今日はできないと説明したら怒って帰るetc...などが続き私にはいっぱい論文を読む時間が与えられたのだが、やはり臨床ができないと言うのは寂しい。全てのペーパーは臨床の為にこそ存在するがその臨床を奪われた感じである。

臨床に繋がらない研究やペーパーは臨床家にとって退屈である。勿論そういう授業も。
現在、様々な授業があるが一番面白くないのはやはり臨床から一番遠いMicrobilogyだ。
まるで高校、予備校時代の生物の授業のようであり、”決まり事”をスライドにして発表させるものだから私は毎回literature reviewの為の時間に回している。この授業からはほぼフィードバックが無い。来年の1月にはresearchの内容を決めなければならないがその時のテーマは私が臨床で最も関心があるテーマに特化したいと考えている。

話がそれたが、臨床家にとって最も重要なのは臨床であり、そこから学ぶものは強烈に印象に残る。

今日の患者さんはメキシコ人の女性で主訴は歯茎が2週間前に腫れたと言うものだった。
口腔内を見ると、#28-29-30に#281本支台のカンチレバーPFMが装着されている。ただ、#31にもPFMがあることから本人に問診すると、このブリッジは20年前に作製しその時は#28-29-30-31(欠損歯は#29のみ)だったが、10年前に#30を抜歯してその際、#30-31間、#29-30間でブリッジを除去して以来そのままだという。今回はそのブリッジの唯一の支台歯である#28に腫れが生じた訳だ。
口腔内を検査するとPFMは無惨に破折し内部のメタルが咬合面には透けていた。
#28の頬側は若干腫脹し、歯肉は若干退縮し一部見える歯頚部は茶色く変色していた。
Cold(-)、EPT図れず。Palpation(+), Percussion(-), Bite(+)。Sinus tractは無い。Pocketもwithin normal limit, Mobilityも同様。また全身状態も健康そのものだった。

レントゲンを正方線、偏近心、BT-wingで撮影。
根尖部には病変が見られた。
また正方線でも、偏近心でも明らかに複数の根管が確認された。頬側と舌側の2根管である。おそらく予測するにVertucci TypeⅤでないかと疑われた。



下顎の第1小臼歯が2根管である可能性11.5%–46%で人種、性別、リサーチの方法により数値は変わるが少なくとも複数根管を有する可能性を頭に入れておかなければならない。かくいう私も下顎の第2小臼歯は2根管だ。しかし、私は日本にいるときも下顎小臼歯の2根管など治療した事が無い。つまりこれは私にとって初めての下顎小臼歯2根管ケースと言う事になる。

PFM Bridgeを#28-29間で除去しそのまま#28にラバーダムをかけて治療が開始された。こちらではクラウンにそのまま穴をあけて治療するケースが非常に多い。この患者さんも明らかに私には不適合修復物だが、患者がNoといえばNo。FacultyがNoといえばNO。よって従うだけである。こういうところでいやカリエスが残ってるかもしれないし、それを考えたらまず除去して隔壁作って、プロビジョナル作って・・・・などという議論をここでするつもりはないし、無意味だ。なぜなら私はここでレジデントとしてお金を支払って歯内療法という臨床経験をしにきている訳だから。

アクセスキャビティープレパレーション後、ストレートラインアクセスを行ない、主根管である頬側根管の根管長からまず測定した。その後、舌側へアプローチする訳だが、クラウンが装着されており元の歯冠形態が損なわれているので、どの位置に舌側が?と迷うところだが、顕微鏡の強拡大で根管を探索すると明らかに舌側に天蓋が残存しているのが見つかった。こういうところが、エンドでマイクロスコープが必要であるゆえんだろう。抜髄ならまだしもこの歯は壊死ケースで病変もできているので根管の見落としは避けたい。レントゲンで確認できたが、実際は見つかりませんでしたとなると目も当てられない。残念ながらルーペではこの根管を攻略はできないだろう。
ともかくその天蓋を超音波で除去していくと実にtinyな根管口部が発見された。
しかしここで問題が起きる。ファイルが入らないのである。いや正確に言えばファイルを曲げないとファイルの挿入ができない。K Fileの31mmをベンディングさせると根管が触知されたが、私は作業長が図りたい。でもストレートラインアクセスしないとその作業長は短くなるし、レッジはできるし、ファイルの破折の問題も生じる。
歯軸に垂直に頬側根管は奏功しているが、舌側根管はこの写真のBように主根管から角度がついているためファイルを曲げないと入っていかなかった。つまりストレートラインアクセスを得る為にはゲイツやorifice shaperを歯の長軸に対して、Dの写真の角度αだけ傾けないと行けないのである。ただ悲しいかな角度αで舌側根管にゲイツもorifice shaperも入っていかない。(歯がなければ入っていくけど・・・)
つまり私にこの時残された手は、ファイルをベンディングして手用でストレートラインアクセスを得るか、何とか#10のNi-Tiをするりと舌側根管に挿入するか、超音波でこの舌側根管上部の象牙質をもっと除去するかしない限り、この根管にアクセスできないのだ。


超音波は歯質を過剰に削除してしまうし、もしかするとそんなに歯質が舌側には無いかもしれない。CBCTも無い。これ以上の切削は怖くなりこの選択肢は除外した。
ファイルを90度近く曲げてストレートラインアクセスをする事も、この舌側根管から根尖部までの距離が分からないしファイル操作しようにも手が邪魔で顕微鏡で根管の位置が確認しづらいので却下。そこでMB2を攻略するときのシークエンスを参考にEndosequenceの#10.02, #10.04, #10.06を用いてみた。すると10.02がするっと舌側根管に入ってくれた。そのままテーパーを上げて10.06まで行ったところでファイルを挿入し根管長を測定しようとしたが・・・手用ファイルが入らない。プリベンドしても入らない。90°に曲げると入るがこれではファイル操作ができないので作業長も図れない。格闘する事15分、何とかファイルをプリベンドして舌側に入った!と思ったらそこは舌側でなくて頬側根管だった・・・事が判明して衛生士の予約が13時からあるからはよ片付けてと催促されてこの日は終了した。

診療後、このようなケースはどのようにあたるべきか?Case reportを探してみたが、詳細な記述のあるペーパーを得る事ができなかった。

但し、こういういわゆるVertucciのType5型の小臼歯の解剖をCTで研究したものがあり(Lie et al. 2012)、そこでは舌側根管は根管2/3の位置から始まる事が多いこと、根管自体が湾曲している可能性がある事、上図のいわゆる角度αはそこまでないもの、最大で70°近いものまで様々であったとの記述があった。

さて私はこの今日の失敗(舌側にファイルを入れる事ができず、作業長が図れなかった)と上記のペーパーから何を学んだだろうか?
舌側根管は主根管である頬側根管から根管の2/3あるいは根尖1/3で分岐していること。
舌側根管があると思って、舌側は超音波で歯質を削除する必要がある事。
舌側根管へファイル挿入するのは非常に難しいこと。
根管口部の拡大はファイルをプリベンドするかNi-TIを用いるか否か?(要はテクニカル的な意見を多くのファカルティに聞き出しdiscussionすること)
などだろうか。

術後にfacultyのDr.  Schwarzbachとdiscussionしてみた。するとNi-TiがはいったのならNi-Tiが舌側根管に入ったところでモーターを止めてそのままハンドで使用してみては?と言う意見を頂いた。これを少しアレンジして次回何とか作業長を測ってみたいと思う。

しかし最近はこのような難症例ばかり配当されるので色々試行錯誤できて楽しい。
気がつくとこのtermももう10月半ば。いくつかの授業はmidterm testも終了した。
未だにカルテの書き方に慣れずに苦しんでいる事以外は何とか順応している。

今週末はラドル、フリードマンの講演、来週末はUCLAでエンドのセミナーがあり、今月はあっという間に終わりそうな気がする。

2014年10月9日木曜日

Tooth Projectのプレゼンテーション

今週の火曜日にTooth Projectと呼ばれる、抜去歯牙を根管形成して根管充填まで行ない、なぜ自分がその術式、その根充方法、その結果になったのかを発表してdiscussionするという日本人の私には最もタフなセッションがあった。


例えば抜去歯牙なので、作業長はこのセッションでは議論してもあまり生産性が無いが、作業幅径は議論に値する。なぜその号数まで拡大したか?と言う質問はたいてい拡大不足/過剰という認識から来るものであるので、自分の中にある考えを皆に伝えないといけない。伝えないと一斉にwhy? how?と言う質問が来て母国語が英語のレジデントでも答えに窮してしまう。

兎に角、教授や上級生から質問攻めにされるという1時間半を過ごさないといけないのは嫌なので先に自分で答えられるように自分の意思決定の根拠や処置の判断の正当性、ミスの原因を自分であらかじめ用意しておく。




しっかり準備して対応したため、私は殆ど質問攻めに合う事は無かった。作業長が何本か変わってしまっていると言う事以外には。

ただ、これは自分のいい訳になってしまうが、ここではラバーダムの周りを塞ぐコーキング材が使用できない。なのでヒポクロが口腔内にどうしても垂れてしまう。これを今まで何度もここで経験して患者さんに嫌な思いをさせてしまっている。するとどうしても洗浄がおろそかになってしまい、デブリが詰まりやすくなり、Patency Fileもあまりしたくない私は、作業長が短くなってしまっているという現象が起きている。また最近のシークエンスの変更等もありちょっとしたアンダーのスランプに陥っている。
自分の症例を教授とdiscussionするが、最近はいつも、アンダーだろ、とか、拡大し過ぎ(と私は思わないのでこれに関しては反論をいつもしているが)じゃないかとアドバイスを受ける。

このtooth projectでも機材の不備やまあこれは自分が悪いのだが、積極性が無いが為に洗浄液を手に入れられず、シャイな私は洗浄そのものを水で行なうかもしくは面倒でスキップしてやってしまったものがあり、2mmくらいアンダーになってしまったものが何本かあった。それと最近の臨床でのアンダーの結果をリンクさせられてしまい、Akiraはいつも同じミスを繰り返している。一体どのようにハンドでの器具操作を行なっているのか?、ハンドでのシークエンスはどのようなものか?、洗浄液はちゃんと器具交換ごとに使用したのか?、超音波で洗浄したのか?Ni-Tiを無理に押し込めたのではないか?、Apex locaterに問題があるのではないか?、patency fileしてるのか?(director間でも意見が分かれている。教授のロヘスは反対派。だが、DDSのdirectorのリービィ先生は賛成派。その他は半々)に質問が集中した。

それに対して一つ一つ答えていかねばならないので約2時間くらいプレゼンにかかってしまった。

プレゼン後、そのプレゼンがどのようなものだったか評価があるが、

”作業長の設定に多少甘さがあるものの、論旨が明快で準備された非常に良いプレゼンであった”との評価を頂く事ができた。

これで少しでも日本人の自分がこのプログラムに採用されているという爪痕を残す事ができたのではないかと少しホッとした。

そして実はもう一つ、これはエンドと関係なく議論が白熱したのが術前にインレーが入っている抜去歯牙だ。





これを見て彼らは一様に驚いていた。
日本人ならこれはおなじみの銀歯であるが、彼らは驚き私に質問攻め。。。

『これは一体何なんだ?』
『クロムか?この材料の組成を教えてくれ』
『いやこれはアマルガムだろう。。。でもこんなアマルガム見るのは初めてだ』
『マージン設定の位置がすごく縁下でしかも無茶苦茶不適合だな』
『これは直接法か?間接法か?』
『これはクラウンの適応症ではないのか?』

正直、私はここに質問が来るとは予想していなかった。
お陰で
-これはギリギリ貴金属だ→嘘付け!
-いや、これには12%金が入っていてあとは・・・(覚えていないので言葉に詰まる)→いやこれはノンプレシャスメタルだろ!ゴールドが入っているはず無いよ(笑)
-アマルガムは日本ではあまり使用されていなくて→何でだ?
-水銀の問題があって...→なんでアマルガムで人体に問題が出るんだ?政治的な問題で使用禁止なんだろ?(いやそうじゃないですけど・・・)
など質問攻めに合って答えに窮してしまった。。。

最後に教授が笑いながら、
『このような金属材料が口腔内に入っていると言う事自体が信じられないし、考えただけでお恐ろしい・・・まあ兎に角、go ahead(次のスライドに行け)』
との一言で、この問題に終止符が打たれた。

日本の皆さんはこの反応にどう思うだろうか?
一歩外を出ると、我々に取っておなじみのこの材料がこのような驚きを持って彼らには(日本以外の大多数の国:韓国、エジプト、スペイン、アメリカ、カナダ、ブラジル、インド、サウジ、クウェート、アルジェリア、キューバ)映ってしまっている。と同時に、何だかしてはいけないことをしている日本人歯科医師の代表みたいな後味の悪さが残った感も否めない長い1日だった。


Restorability check, 誰がやる?Endodontists? GP or Prosthodontists?

患者さんは60代のメキシコ人女性。英語が喋れない。
主訴は#11のPFM(連冠)が脱離しそう。それに伴い#11に冷水痛と温熱痛を少し感じるとのこと。
口腔内には#6-7-8, #9-10-11のPFM Crownが連冠で装着されていた。
臼歯部は崩壊し、前歯だけで咬合。
その結果、フレアアウトを起こし若干の動揺を来している。

レントゲンを撮ると、#11は既に根管治療がなされており、レントゲンでも分かるくらいの縁下カリエス。根尖病変は僅かだが存在した。ただ打診も圧痛も無い。ポケットも健全。#9も既に歯内療法処置済み。病変は無い。打診も圧痛も無い。#10のみが唯一生活歯。また#12は全くの健全歯であり各種検査に対してWNL。自ずと私の疑いの目は#10に向けられた。

#10は冷水痛にも温熱痛にも反応無し。EPTには反応。その後繰り返し冷水痛試験を繰り返すが、やはりNo reactionだった。
なお、PFMは唇面が破折し、マージンは下がり、目でもつぶって形成したのかと言うくらい不適合マージンで、既に歯根が大部分露出していた。
打診痛、咬合痛試験には反応無し。ポケットは#10の近遠心のみ4mmだったが、動揺が1〜2程度あった。また圧痛を感じた。ただこれは疑陽性の可能性が高い。なぜなら健全部位でも痛い!と言ったので。

私の診断(#10)は歯髄診断はNormal根尖部歯周組織の診断もNormal。
#11は歯髄診断がPreviously treated, 根尖部歯周組織の診断はAsymptomatic apical periodontitis.
確かにReferalがいうように、#11はブリッジを遣り替えるなら再治療した方がいいだろう。
しかし、それ以前にrestorabilityがあるだろうか、私にはかなり疑問だった。
#10に関してはReferelの要求ではないので何も言えない。

もしも彼女がブリッジを遣り替えるのなら、##11の再治療(但し補綴治療が可能であれば。)。#10は再度歯髄診の上、生活性が担保されるならやはり経過観察。便宜抜髄を希望すれば、抜髄。
#11の予後はquestionableもしくはguarded。要は歯内療法を行なう前に、Restorability checkが必要な症例なのである。

しかし、レントゲンを見る限りは保存するには複雑な治療が必要と考えられる。
たとえクラウンレングスニングやエクストルージョンを行なっても、臼歯部が無いので早晩クラウンの破折を繰り返すだろう。もし治療するなら相当複雑で長期的な治療が必要である。私はそのことを彼女に説明した。するとこのメキシコ人の女性は複雑な治療を希望された。しかし私はエンドレジデントであるので、補綴計画には関知しない。私がやるべきことは、#11が保存可能なんであれば再治療だし、#10の便宜抜髄が必要ならそれをするまでだ。

ここに一抹の侘しさを感じたのは、まだレジデント1年目だからだろうか。
彼女の主治医はもっと包括的な良い治療計画が立てられないのだろうか?とつい思ってしまう。
少なくとも私なら、臼歯部の咬合を早く何とかした方がいいと思うが、Referalはそこはおかまいなく、#6-7-8-9-10-11のPFM Bridgeを再製したいようだった。

歯内療法専門医が一番忸怩たる思いで症例をこなさないと行けない場合はこういうときだろう。エンドの予後はご存知のように、かなり高い。
しかし、治療全体を決める司令官は補綴医(もしくはGP)である。
我々はその意味では、下請けである。
しかしエンドの予後は高いのに、修復の予後が低ければ治療が上手く行かなかった時に失望するのは患者さんだろう。こちらまで恨まれかねない。

その意味でも、エンド治療の前のカリエス除去およびRestorability check(修復治療できるかどうかを確認すること)は非常に重要なステップになる。
この仕事は、通常補綴医が行なう。歯内療法専門医の範囲外である。
我々は補綴医が修復可能と踏んだ歯に対してのみ、歯内療法を行なう。Restorabilityの無い歯には修復治療はおろか、歯内療法は行なえない。Referalにはその意を電話にて報告し(ようとしたが私の英語が頓珍漢でFacultyに代わりに説明してもらったのだが・・・)た。

この患者さんを通じて将来の開業時の在り方を考えさせられた。
エンドドンティストとしてRestorability checkを行なうべきか、それともそこは自分の仕事じゃないとGPや補綴専門医に任せるのか。もし自分でcheckを行なってその歯が短期で補綴的に失敗した場合、その責任の一端は自分が担わなければならない。となると、補綴治療をしない私にとっては責任の範囲を超えてしまう。日本での慣習がまだ私に強く残っているので、つい仮歯とかを作って治療してあげたくなる衝動に駆られるが、逆に保存が怪しい歯を無理矢理エンドして補綴医がこんな状態じゃ補綴できないよ!となるとそれまた問題だ。
事実、こちらでもそういう問題が非常に大きい。つい先日もエンドはできたが補綴に回されて補綴科のレジデントがこんなのどうやってクラウンするんだよ、コアがグラスアイオノマーだけどどうみてもやるならメタルポスト&コアだろう、何考えてんだエンドのレジデントは!というようなもめ事があった。
エンドのレジデントが縁下カリエスの歯に無理矢理グラスアイオノマーで隔壁を作り、sのままそれを全て除去せずに一部レジンで築造した為、彼らがクレームを付けたのだ。
しかし私からすればそれは至極もっともな話である。ラバーダムがかからない歯に無理矢理レジンのコアやファイバーポストを立てても脱離する。ましてやグラスアイオノマーでは。。。このような状態で脱離したらクラウンごと取れるので、責任は補綴医が取らなければならないが彼らにしてみればいやいや(ポスト)コア立てたのエンドでしょう、と言う話になる。

私は今でもあまりレジンの築造を信じていない。ラバーダムが容易にできる歯であればよいが、そもそも前歯は別としてポストコアを立てなければならない症例はラバーがかなり怪しい感じでしかかからない。防湿が不完全になる。こちらでもそうしたことが多々ある。私は保存不可能。でもfacultyはいやいや保存可能でしょう!と話が噛み合ない事が多々ある。でもメタルコアだと印象しなければならないので自ずと防湿はできないし、仮歯も相当不完全で細菌漏洩が多くなる。こんな時、CAD/CAMでメタルコアを即時で作れればどれほど便利だろうと個人的には思う。

以上を鑑みると、現時点ではやはり私はRestorability checkに足を突っ込むべきでないなと言う気がする。自分で責任を負えない事までしなくてはならなくなるからだ。
せいぜいやっても、隔壁、コアの築造までだろう。ポストコアをたてる勇気は今の私には無い。それは補綴医でやってね、と言う話になる。(但し、前歯は別。)

こちらに来てもう10月。あっという間に5ヶ月目を迎える。日々、プログラムを修了した後の自分のプラクティスの在り方を考えながら臨床に取り組まなければならないと言う気持ちを再確認させられた1日だった。


2014年10月5日日曜日

上顎第2小臼歯、3根管。

先週の患者さんでロシア人の20代女性の再根管治療があった。妊娠4ヶ月。referral(外部)からの紹介で2時間半かけてUSCまで来院してこられた。

主訴は#13(左上第2小臼歯)の鈍痛。壊死歯髄の根管治療後激痛で夜も寝れなかったという。今は落ち着いている。

既に前医が根管治療に着手しているが根管が極端に湾曲しているとの事でEndoのresidentクリニックを受診された。

紹介状には、#13の根管治療宜しくと一言だけ書いてあった。。。

既に打診や圧痛は無い。ポケットも正常。動揺も無い。

レントゲンを撮影。根尖部に大きな透過像がある。ただ根管がいつもと違う。正方線では1根管に見えるものの、偏近心では根管が複数あるように見えた。

診断を行ない、ファカルティに根管が複数ある可能性を説明。レントゲンを見せるとこれはいいケースだ!と患者さんの前でにこりを笑うKallman先生。

麻酔してラバーダムをかけテンポラリーを除去すると根管は激しく汚染されていた。そこをヒポクロと超音波で徐々に奇麗にしていく。するとぱっとみ2根管性であったが、イスムスが見えたため、その除去に追われる。格闘する事30分、ついにイスムスはなくなり、やはり何度見ても私には2根管性にしか見えなかったので、ファイル試適して偏心撮影し教授のロヘスに見てもらった。するとやはり明らかにファイルの入っていないもう1根管がPAで見えるのである。どうやらこれは頬側根管が途中で2つに分かれるパターンのようだった。3根管である。私は恥ずかしながら生まれて初めて上顎の小臼歯で3根管を見た。教科書や論文では見た事ある3根管についに出くわすとは!しかも私が触知できたこの頬側根管(恐らく頬側近心根)はファイルをベンディングしていかないとApexまで到達しない。なんと遠心口蓋方向にフックしているのである。ちなみに口蓋根は根尖部の吸収が起こり、顕微鏡で根尖部が確認できる。ただ頬側は#8のC+ Fileでようやくネゴシエーションさせて終了になってしまった。

実にいいケースであったのだが、彼女は今月出産でロシアに帰るという。
ロシアは空気が悪くて寒くて・・・ここが一番だけど・・・やっぱり実家が一番安心できるから。。。と少し神経質な様子が伝わったが、ご主人の年齢が50代後半である事を考えると何となく彼女の事情が把握できてしまったが、私にとっては大事なケース。1年後に連絡するから必ず来てね、と伝え水酸化カルシウムを貼薬し、コンポジットレジンで仮封?して終了した。

治療後、今後の方針を教授のロヘスと相談。
まず次回CBCT撮影。そして根充。
もし半年後に治癒しなければ意図的再植を行なうように、と指示された。
根尖部が上顎洞底線を超えているからだ。但しこれは2次元での評価のため、最終的にはCTでの判断になる。
いずれにしても、再治療が奏功するかどうか経過を追わなければならない。
こうした難しい、稀なケースに出会えるのも、大学病院の歯内療法科に在籍しているからこそだろう。

さて、今更だがこちらでは歯の番号を#1〜#32で表す。
乳歯なら、a〜tで表す。

つまり例えば成人なら以下のようになる。



#1,16,17,32がそれぞれ上下左右の親知らずになる。

また小児なら、以下のようになる。




一番ややこしいのは混合歯列で、a,bやらi,jなどが#19,30などと混じるのでそれはもう混乱する。日本式のD,Eや#11,36などのFDI表記の方がその番号を見ただけで歯のイメージがつきやすいのだが・・・







2014年10月1日水曜日

Protaper Gold for Maxillary molar root canal

プロテーパーゴールドを昨日初めて治療に使用してみた。

患歯は#2。作業長がDBが25mm、Pが24mm!もある長い歯。しかも湾曲度合いが強い。

プロテーパーゴールドは、以下のようなサイズからなる。

















テーパーはvariable、つまり単純にテーパーの分ずつ大きくなるわけではない。
Protaper Universalと同じ規格、つまり同じペーパーポイントとGPを使用できる。
詳しい拡大率などはよく分からない。Dentsplyに聞いても教えられないとの返事。

西海岸派のendodontistとして著名なC.Ruddleのサイトに詳しい説明があった。SXはD6で#50, D7で#70, D8で#90, D9で#110。これはGatesのサイズと一致する。

今までとのProtaperとの違いはその弾性だろう。箱から取り出すだけでややぐにゃっと曲がってるので最初は少しビックリする。また使用する時に曲がってるのでくるくる回って根管に入りにくい。(曲がったgatesを使うみたいなイメージ)

シークエンスは基本的にはフルレングステクニック。
ストレートラインアクセス、グライドパスを#10,15までしたらS1, S2, F1,F2,F3, F4…と続けて拡大していく。SXはストレートラインアクセスに使用する。

ただ実際使用してみて分かった事が、例えばF2が作業長まで到達しないとまたF1に戻らなければならない。F2(#25)のテーパーが販売されているF2より小さいものが無いため、非常にめんどくさかった。ファイルを行ったり来たりしなければならずこれではハンドファイルと何ら変わらない。
もう一つはテーパーがvariableなので、多社のGPが使用できない。つまりdentsply Protaper Gold(もしくはUniversal)のシステムを永遠に使わなければならない。
歯内療法専門医が求めるファイルは、様々なサイズとテーパーがあるもの程望ましい。そういうものほど、汎用性が高いからだ。

しかしProtaper Goldのように#20は.07しか、#25は.08しかファイルありません!と言われると非常に使いづらい。。。まだ1度しか使用していないが、これが将来のメインファイルに躍り出る事は多分なさそうだ。やはりRaCe(Endosequence)に一日の長があると言わざるを得ない。ああいう切削感が強いもので種類が豊富なものが我々が好むファイルである。(こちらでMtwoを使用してみたいのだが、どの会社からも買えない。)

思うに、このdentsplyのラインナップはGP向けである。特にWave-1などはその最たるものだろう。(ちなみにうちのレジデントでWave-1を使用している者は一人もいない)
ただレシプロだとファイル破折が優位に少なくなるという論文もあり、個人的には面白いと思うがこちらでレシプロのシステムを採用しているFacultyも殆どいない。

ただまだ1回しか使用していないのでもう少し使用してみて結論を出したいと思う。何しろ安いのでこれでもか!と購入してしまったので。。。

こちらにいる2年間で色々なファイルを使用してその特性を体に覚えこませ、自分に一番会ったものを将来選択したいと思う。


2014年9月28日日曜日

USCペリオドンタルマイクロサージェリーコース

今日は日本の某スタディグループの先生が来て、USCのペリオのレジデントにペリオドンタルマイクロサージェリーを教えるというコースを手伝った。



日本人講師がレクチャーすると言う事、マイクロスコープを使用する事、エンドのクリニックを使う事から、エンドのレジデントである私が呼ばれたわけだ。

しかし、結局この日の事を総括すれば、USCの場当たり的で全く準備というものもせず、極めて礼を欠いた振る舞いに憤りを感じざるを得なかった。

まず私はエンドのレジデントである。ペリオの教授がマイクロサージェリーをレジデントに教えたいからと言う理由でこの日の企画は組まれたわけだ。だとすれば、企画、準備、後片付けはペリオの方がきちんとすべきである。しかし朝、現場についても何もなされていない。しょうがないので私とエンドの同級生レジデントが顕微鏡を全てセットアップした。

その後、日本人講師の先生が講義し、エンドのクリニックで実習に移った。
ここでも打ち合わせ不足でやれ講義室で顕微鏡を使いたいだの、それをモニターでみんなに見せたいけどどうしたいいだの、ラバーダムがブルーしか無く縫合の実習ができないから違う色は無いかだの、そして肝心の視度調整の為に私は呼ばれたと認識していたが、誰も視度調整もせずに顕微鏡を相変わらず使用し始めた。顕微鏡の某業者も来ていたが、それに関してはレクチャー無し。基本も何もあったもんじゃない。
そもそもデモをマイクロでするのに、モニターでみんなに見せれるようにしなければ意味が無いのは最初から分かるようなもんだが、ここも準備不足で結局1つのモニターを20人が囲むという異常事態になった。



実習は羊の頭を用いた。
実習自体はスムースに進んでいたようだ。
みんな楽しそうにやっていた。
しかし、ここはクリニックだ。やるならlabですべきであり、患者に礼を失していると指摘されても私は弁解できないと思う。
色々あって終わったのは5時。
この間、何度も写真を撮影するように教授に頼まれ、他の雑用もこなした。

しかし、終わったら彼らはそそくさと帰っていってしまった。片付けも何もせず。
勿論何人かは、私にねぎらいの言葉をくれた。
しかしペリオの教授から私にそうした言葉は一言も無かった。
正直、不快である。そして極めて無礼だ。
エンドのクリニックを使用していたため、私は後片付けが終了するまで帰れないし、顕微鏡を取り外し、収納しないといけない。しかしクリニックの鍵を閉めるのには後片付けが必要。USCから後片付け要員が呼ばれていたが、何と1人。彼と私で片付けを行なった。
朝6時半に起き、終わったのは6時半。疲れた私は論文も何も読めずそのまま寝てさきほど目が覚めた。すると猛烈に怒りが沸き起こってきた。

まず私はUSCペリオドンタルマイクロサージェリーコースのスタッフではない。
USCのゴミ清掃員でもなければ、あなた達の従業員でも、弟子でもない。
月曜日にはliterature reviewもあるので論文も読まなければならない。
また月曜日にはDr. Slotという細菌学が専門の教授の授業があり、そこでプレゼンをしなくてはいけない。しかもHIV virus。それを英語でだ。
そうした事を週末する時間を割いて私はボランティアで参加した。
ここの教授は私の事をUSCスタッフ程度にしか考えていないのだろう。

しかし私から言わせればもう二度と彼らに手を差し伸べる事はないだろう。
礼節を欠き、準備はできていない、全てが場当たり的。
正直、これを書くのもためらわれたが、ぶっちゃけ言えば前回のエンドのコースも酷かった。そもそもこんなに顕微鏡あるなら、なぜ先週は日本人の彼らには貸し出さなかったのだろうか?彼らはオプショナルで15万も支払っていると聞くのに、あのざまじゃぼったくりもいいところだ。USCという思い出を彼らに与えるから?certificate与えるから?(実際それも無かったけど)どうせ日本人で二度と来ないから?失礼だ。ここの学校のそういうところは色々な人の話を聞いても失礼だ。
彼らはエンドに興味があって参加してくれたのになぜ彼らには抜去歯牙をクリニックでさせなかったのだろうか。
お金も払っていない、ペリオのレジデントにはなぜエンドのクリニックを使わせて顕微鏡も外部の業者を使用してまで準備させたのだろうか?
日本のエンドの実習付のコースの方が、質、与えられる教材、内容全てにおいて上回っている。

とにかく、人をバカにし過ぎだ。もう二度とかかわり合いたくない。
私をよく知る人はご存知と思うが、見かけほど実は度量が大きいわけじゃないんで。
ジャイアント馬場みたいに、一度そういう事があると二度とかかわり合いを持たない、と思う人なんで。

とにかく、私は著名な歯科医師になりたくてここに来たわけじゃないし、ここで(LAで)開業する気もないし、USCのファカルティになりたいなんていう気もさらさらない。
だから改めて言いたい。準備や企画はちゃんとしなさい!最低限の礼節を持ちなさい!、と。

この大学のこういうところだけは私は本当に理解ができない。

2014年9月18日木曜日

BC sealer, GC GENESYS, ProTaper Gold…新しい材料を用いた歯内療法。

現在自分の今までの術式を少し軌道修正するという必要性に迫られている。

歯質をなるべく保存しましょうと言う流れが今のエンドの潮流にあり、従来のNi-Tiテーパー.06から.04のものを主として使用するようになった事がその理由である。

今まではアピカルプラグを作業長から3mmで作製していたが、テーパーが.04だとアピカルプラグが仮に作れたとしても、その後のバックフィルする際のニードルがアピカルプラグに到達しなくなってしまう。結果気泡ができてしまい満足する根充後のレントゲンが得られにくくなってしまう。つまりざっくりいうとアピカルプラグをどの位置で作るか?という問題に直面している。
現在のところ、通常の根管の場合3mmから4mmもしくは5mmに変更している。(もっといえば、顕微鏡でアピカルプラグが視認できる位置まで)
長い根管や湾曲が強いものは、BC sealerで根充するようになった。(シングルポイント)

今日の初診の患者さんも#4で何と作業長が25mm!である。こっちの人は根が本当に長い。こんなに長いとCWCTでは厳しくなるので、BC sealer+ BC Guutaでシングルポイントで根充させてもらった。

根充の方法で予後に大きく差がでないとはいえ、何となくこのまだ道の材料で根充するのには若干ためらいがあるが運良く?日本でこのバイオセラミックシーラーに関して発表する機会があったので、その時の理論でfacultyに自分の術式を正当化させている。側方加圧でアピカルプラグを作ってその後バックフィルするという方法もあるが関羽雲長のような風貌のアルメニア人の患者に時間がないから・・・とアピールされてBC sealerで即断即決だった。日本ではまだこのBC sealerは手に入らないようだ。2本で日本円にして約15000円。ユージノールシーラーに比べ圧倒的に高額である。しかし早い。レントゲンも相当上手く見える。このままバイオセラミックシーラーがエンドの世界を席巻していくだろうか?こちらでリサーチをしなければならないのだが、やはり乗りかかった船、このBC sealerに関して調べてみたいと漠然と今思っている。

また日本に帰った時に、GCさんのご好意でGENESYSをこちらで使用させていただいている。これが本当にいい!今までのβは凄く使いにくかったし、先端が熱くなって患者さんにあたって軽い火傷をさせてしまった経験がある私にとって、GENESYSは救世主のようだ。

もうこれ無しでは生きていけないとみんなが言っていた意味が分かった。新しいもの好きのレジデントはGENESYSにビックリしていた。圧倒的にみんながBL社のものかobtura & systemBを使用しているため、このペンタイプのシステムは画期的だと思う。また別の患者さんで#3の根管治療でNEXNi-Ti rotaryも使用させていただいた。やや硬い感がしたのは気のせいだろうか??それでも治療では問題なく機能したので、日本の歯科医の方はこのシステムを使用してみてはいかがだろうか。

またこちらでいろんなシステムに親しみなさいというDIRECTORからの命で、今日からPro Taper Goldを使用し始めてみた。まだ患者さんには応用していないが、今週末早速抜去歯牙で練習してトライしてみようと思う。


今週末は日本から歯科医の方々がUSCに来られており、エンドのハンズオンコース?の手伝い件通訳を命じられてしまった・・・。
また再来週も某大手スタディグループの先生がペリオのマイクロオペの講師でperioのCEコースでこちらに教えに来られるそうで、これまた手伝いを頼まれてしまった。エンドならまだしもペリオのコースの手伝いしかもマイクロスコープ使用というのはこれまた荷が重い。。。Directorが私を通訳者として起用しようとしているが、それは2アウト満塁、一打サヨナラの状況で成績不振でスタメンから外された外国人打者を代打で送るようなもので結果は見えてるでしょうに・・・といいたいところだが何とそれを英語で伝えていいかも分からないので結局私は打席に立たざるを得なくなってしまった。

明日は午前が中間テスト(メールを送るだけ)、午後は患者さん。
終末はUSCジャパンコースの手伝いと休む間もなく9月ももうすぐ終わろうとしている。
時間経緯が最近は本当に異常に早い!まだまだシステムに慣れないが大学院生活も何とか前へ進み出した。

2014年9月12日金曜日

ティーチングスタート

今日からティーチング(歯学部1年生)が始まった。
毎週金曜日の午後1:00~5:00、ファカルティ数人とレジデント1年生が5人一組交代で、100人近くいる学部生に教えなければならない。

ティーチングの流れは、
①学生、レジデントが毎回宿題論文を読む
②実習前に前回の実習と論文のQuiz(小テスト)
③宿題論文をレジデントと学生でディスカッション
④実習開始
という流れだ。

私は今日が初めてで何をどうしていいか分からない上に、本来私に様々な指示を出すべきFacultyがかなり自由な方で、好きにやっていいし君にここのブロック(約20~30人)任せたよ、論文も読んでないし。好きに始めちゃっていいよ(笑)などと仰るものだから、本当に私が1人でやらなければならなくなった。

ちなみに今日の論文は、Hamid JafarzadehのLedge Formation: Review of a Great Challenge in Endodontics.: J Endod 2007; 33:1155–1162。レッジに関するレビュー論文である。多分、たどたどしく説明は無理だろうなと思ったからわざわざ彼らの為にスライドを用意した。これがあるだけで精神的にかなり気楽だった。







『君たち読んできた?』

『何について書かれてた?』

『レッジって何?』

『レッジができる原因は?』

『レッジの予防法は?』

『レッジができたらどう対応する?』

などを私は約20人くらいの歯学部生に囲まれて15分くらい彼らとdiscussionを行なった。

しかし相手は1年生。生まれて初めて抜去歯牙で抜髄をする人たちばかりだからレッジだ、ストレートラインアクセスだとか言ってもピンと来てない様子。明らかに集中してないのを察した私は、

『まあとにかくやってみよう。それから考えよう!実習開始!質問あるときはどんどんして。但し俺は日本人だからゆっくり喋ってくれ!!』
とどこのグループよりも早く実習を開始させた。

今日の実習は上顎前歯を用いて、アクセス、ストレートラインアクセス、作業長測定、Initial Binding Fileの決定、MAFの決定、そのMAFでのハンドファイルを用いてのStep back形成、ポイント試適、フィンガースプレッダーによる側方加圧充填という流れ。そのすべてを私が自分の責任でチェックしなければならない。

アクセスから始まるや否や、外形はこれでいいか?と次から次へと質問がくる。
中には上顎前歯だというのに、下顎を持ってくる学生とか(どうやら真剣に上下の区別がつかなかった模様)、犬歯はダメだよというのにすごく長い犬歯を持ってくる学生がいたりしたが、

“外形はまず逆三角形。ペンで書いたら持ってきて!”と言うや否や私に行列。まるで何かの握手会のような状況につい私は卒業後就職した歯医者をすぐにドロップアウトして、某スーパーのチェッカーをしていた時代を思い出してしまった。あの時はバーゲンだったよな・・・と感傷に浸る間もなく次ぎから次へと、で次はどうしたらいいんだ?との質問。

いや、アクセスだから。まず削りましょう!と指示したものの、どの方向にどうやってバーを使用していけばいいかが分からない。従って一人ずつ手取り足取り教える羽目に。中には慎重な学生もいてラウンドバーの半分しか削れてないのにアクセスチェックしてくれとかいう女子もいた。もっと削らなきゃ。ここはラボなんだから少々の事は気にすんな!とにかくいっぱい経験して失敗しなさい!と何度言った事か。。。

今日、最も多く見られたミスがいわゆるConservative Endodonticsのようなアクセス窩洞になってしまっていることだ。アクセスが小さすぎる。歯髄が全て除去できていない。deroof completely!と何度言っても髄角部分に歯髄が残ってしまっているのだ。私があまりにも合格サインを出さないものだから、中には別のレジデントにサインを求めている者もいた。そうこうしているうちに、流れは気づいたらストレートラインアクセスに。彼らが使えるのはゲイツとorifice opnerだけなので(顕微鏡は使えない)、正直見えない。ただ、何度もリンガルショルダーを除去しろよ!ストレートラインアクセスに一番時間をかけなさい、それが終わるまで絶対ファイルを入れては行けないよ!というのに次から次へと勝手にファイルを突っ込んで早くもレッジやブロックを起こしている学生が多数出現。あんた達、論文読んできたの?!と聞くとみな笑顔でNo!だった(笑)

慌ただしくWLを決定すると、次の流れはどうやってMAFを決めるか?に移行していた。
この実習ではInitial Binding Fileからファイルサイズを3〜5号上げる事になっていたので、IBFを調べなさい!というものの、IBFって何?という質問をほぼ全員にされ、ほぼ全員に作図しながらIBFとMAFの関係について説明した。そしてStep backを説明し今日はここで時間切れ。

私は気がついたら1時から最後の生徒が帰った5時半までずっと喋っていた。なんせ次から次へと質問が来るので休憩させてくれない。気がついたら5時半で、学生以外に残っているのは僕とDr. Sだけであった。他のレジデントは5時になったから学生をそのままにして自動的に帰ったようだ(笑)。今日は今までで最もきつかった。ただ気づいたら英語に対する恐怖がなくなっていたのも事実である。完全なブロークンイングリッシュだが、そんなものはもうお構いなし。英語に慣れるというのはこういう事だろうか。



正直、実習前は不安でいっぱいだったが、いざ教えてみると意外なことにすごく楽しくて時間があっという間に過ぎていった。

学生からは、来週も来てくれるのか?すごく分かりやすかった!(多分、お世辞だろう)またいっぱい教えてくれ!楽しかった!最後まで教えてくれてありがとうDr. Akira!とまずまずの反応だったと思う。

今日は彼らにとって生まれて初めて神経をとった日になったわけだが、私にとっても祈念すべき学生指導の初めての日。今日は彼らにとっても私にとっても一生忘れる事ができない経験になったのでないかと思う。人に教えるというのは自分も勉強させられる。今日質問されてそういやそうだよな・・・という事が何点かあったので早速クリアにして次回はもっといいアドバイスができるようにしたいなと思う気にさせられる程、ここ米国(USC)の歯学部生にはパワーがあった。彼らがやる気があるから教える方もそれに応えたくなるのだ。相乗効果が生まれて学校に活気がある。

一方、今の日本の歯学部学生実習はどんなだろうか?
私の知るそれは、どこかやる気がなく、負のオーラに包まれ、気に食わない学生には意地悪をしたりするあの陰気くさい感じは何なんだろうか?少なくともこちらの学生の方が私の学生時代よりもWHY? HOW? WHAT'S NEXT?という姿勢やエネルギーがすごく強い気がする。

彼らの目は皆輝いている。歯科医に未来を感じているからだ。
でも日本は??
悪いが、歯学部1年生の最初の実習の時点で既に我が国との勝負が決まっているのかもしれない。

もっと頑張れ、日本の歯学部!

2014年9月9日火曜日

Cpoint

今日は午前中に、Cpointという新しい根管充填材の説明をしにボストンのEndodontist、Martin Levin先生が3時間の講義をしにやってきた。



歯科関係者の方は、このCpointという根充材をご存知だろうか?
なんとコンタクトレンズと同じ素材(ハイドロゲルポリマー, polymeric hydrogel)でできていると言う。
コンタクトは濡れていると安定するが、乾くと収縮する。
Cpointはやや湿ったケースの中に密封されており、根充するときも根管内は程よい湿度が求められる。程よい湿度の元でBCシーラーとともに根充すると根管を密封するそうだ。
論文もいくつか出ているようである。

術式は何の事はない、Braseeler USAから出ているバイオセラミックシーラーを用いて、シングルポイントで根管充填する。なお、試適をすると濡れてしまうのでverifiersと呼ばれるプラスチック状の少し硬い試適専用のポイントを用いなければならない。



世界的に根管周囲の歯質をなるべく温存させるという流れが、バイオセラミックシーラー&シングルポイント根充の使用促進に一役買っていると思われる。

今回の商品もその流れに則った物だろう。

USCではバイオセラミックシーラーを用いた臨床は許容されている。
但し、facultyに説明できなければならない。
理屈が通れば尊重される。
但し、何年の論文で誰が言ってたのだ?とまで聞かれる事があるので日々自分の術式を理論武装しなければならない。

さて、やはりレジデントからはこの新しい根充材は不評だったようだ。
講義中も容赦なく、反論がぶつけられる。
彼が一切PA(デンタル)をとらないでCBCTのみ撮影してすべてを診断するという姿勢も反論に拍車をかけた感が否めない。
しかし私の個人的な意見で言えば、少し面白そうな材料だなと思った。
特に根が長かったり、湾曲が強かったりすれば使い勝手はあるのかもしれない。
多分、現時点でBC Gutta percha(69$)よりも値段が安い(41$)ので、日本に売り出せば新しい物が好きな日本人は真っ先に飛びつく気がしたが、言うまでもなくこの材料で根充すればどんな病変でも治癒する事などはない事を強調しておきたい。

正直この先生の講義は残念ながらややバイアスが強かった感が否めないが、多分これからAAEでもテーブルクリニック等で話が聞けるかもしれないので、興味がある先生は講義を聞いてみる事をお勧めする。