2014年8月11日月曜日

夏セメスターいよいよ終了。

希望に満ちた大学院生活の夏学期が今週で終わりを告げようとしている。

先週末はヒューストンで学会に参加するはずが、ロスの空港の異常なセキュリティのために(40分かかった)、ヒューストン行きの飛行機に韓国人レジデントと私は乗れず、次の飛行機も一人しか空きがないとの事で、押しの弱い典型的な日本人の私は彼にその最後の一席を譲った為、私はレジデントの中でただ一人留守番をまかされる事になってしまった。
今日、予想通り学校に行ったら『おいおいどうしちゃったんだよ〜』と一斉に揶揄われてしまった(笑)。

ヒューストンのAPICESは随分とレジデントには好評なようだった。
特にというかやはりというべきか、ペンのDr.Kratchmanのケースに皆釘付けになっていたようだった。意図的再植は日本でも何ケースかやったが、抜歯に対して安全に確実に行なう事ができるのか?という不安が常につきまとう処置で、私はこの事からも留学が必要だと決意したのを覚えている。どんな話だったかご報告したかったのだが・・・

もう一つ皆の興味を引いたのは、エンドドンティストとしてどう開業していくか?という話だったそうだ。これも直接聞いてないのだが、演者はワシントン州で開業していて、週3回しか働いてないという。残りは??Shopping!!と連呼して会場を沸かせていたという。彼は1回の治療でどの歯でも一律1500$のチャージをするという。1日4人までしか診療しないそうだ。

ということは、1日$1500×4×3×4=Max: $72000/1ヶ月!!
そりゃあ、週3だけでいいでしょうね(笑)
しかしそれだけアポが埋まっていると言うのがまた凄い。
余程太い紹介先が彼にはあるのだろう。
一つの生き方として参考にさせてもらおうと思う(笑)。
APICESはAAEのContinuing Educationでも聞けるので、興味がある方は是非聞いてみてください。私も夏休みに是非聞いてみたいと思う。

その彼に言われるまでもなく、私は本来歯科治療と言うのは、1日まあ良くて4人、通常どう見てもルーティンには2、3人しか1日に治療できないと思っている。(新患さんや再診やコンサルテーションは除く)
日本にいる時はGPだったが、やはり1日最大4人くらいしか治療できなかった。
歯科治療は専門性が高いので、特にマイクロ使用となると、集中力を相当使う。
何かの、確かヤフー知恵袋か何かで、まつうら精密歯科医院は採算が取れなくても、マイクロスコープを使用して保険診療します!と誰かが私の代わりにご丁寧にお答えいただいているが、そのような事は残念ながらあるはずも無い。

よく考えても見てほしい。
日本の根管治療費は前歯で数千円、大臼歯で約1万円。(患者さんはそのX割負担)
それで1日最大4人治療したら、私は赤字でテナントから追い出されるだろう。
従業員を養う事も、家族を扶養する事もできない。
この疑問・ジレンマは歯科医師なら皆知っている。
その昔、藤本研修会のパート2の一杯会で受講生と順平先生との間で大激論になったほど、歯科医師でも考えが分かれる深刻な問題だ。
ある人は、皆の為に安くなるべくいい医療を提供したいという。
一方で、自由診療中心で専門性を高めて行きたいという人もいる。
私はどちらがより優れていて、どちらがより劣っているとは決して思わない。
要は、歯科医師としてどうありたいか、どう生きたいかの問題なのだから。

実際、経験ある人なら分かると思うが、実際にマイクロスコープ下で、抜去歯牙をアクセスから根管充填までしてみてほしい。
恐らく、相当疲れるはずだ。
それが1日4回だと・・・?
間違いなく、心身をすり減らす仕事であるのに間違いは無い。
そしてこれは同時に“誰もが容易くできる仕事”ではない。

そんなもの、顕微鏡なんかわざわざ使用しなくたって・・・という方は、なぜAAEが1998年から北米の大学のエンドの講座でマイクロスコープを必ず使用して臨床を行なうと言う事が必須になったのか、調べてみる事をお勧めする。見えないものを治療する事はできないんですよ。。。

私は何かにも最近書いたが、歯科医師になってから一貫して変わっていないポリシーがある。それは歯科医師として患者さんに対してなるべく良くありたいと思っている。
だから、私は歯科医師として、そう言う生き方を貫徹しようと決意して渡米した。
実際、こっちのUSCのレジデントも1日2人か3人診療がいいところだ。
(ただし、こちらにはナイトクリニックがあり、それにでれば、もっと治療ができる。私はこの恐らく皆が嫌がるであろうナイトクリニックに率先して手を挙げたいと思っている。)
日本で1日40人くらいしないと採算取れない的な話をすると、一斉にCrazy!呼ばわりされる。

それはさておき、今日、私にもいよいよ今週末患者さんが配当されそうな気配(今週末にお前に一人見させるから、はよ抜去歯牙終われ的な圧力)をDirectorが醸し出してきた。

またちょうどいいタイミングでツァイスからマイクロスコープが到着。
組み立てしてくれるのか!と思いきや、バラバラのパーツを置いて、マイクロの使い方を皆にレクチャーするわけでもなく、気がついたらいなくなっていた・・・
こちらではツァイスの評判が著しく悪い。あとHenry Schein。
このアームとポールは家に持ってかえってね(笑)と担当者は微笑むが・・・




おいおい、これは卒業後用に使うやつで、この2年では使わんのんかい!!早く言ってほしい!!しかも名前間違ってますけど・・・

しかも2年目からはプロエルゴも使えるよ、だと!!
私は300万をどぶに捨ててしまったようだ。。。
要は必要だったのは顕微鏡本体だけだったのだ。。。
(ちなみにあの黒と黄色の天龍カラーの鞄の中に顕微鏡本体が無造作に入っていた。こういう渡され方をしたのは初めてだ。。。)

とにかく、何でも予定が変更される。。。

これは最近、留学しているY先生から聞いて納得した話だが、
“1日何も起きなかったとしたら、今日はいい1日だったと思うようにし、何か問題が起きたり、頼んだ事が片付いていないのが普通” だと考えるようにしている。

にしても、このツァイスとDirectorの話の変わりようといったら・・・
アメリカでは、自分の意見をどうやら押し通した方が良さそうな気がしてきた、今日この頃である。

2014年8月2日土曜日

Tooth Project、終わらない。。。

週末はクリニックのオリエンテーションがあったが、そこで抜去歯牙のプレゼン用の資料作りが終わったレジデントから患者を割り当てるという旨の通達があった。
レジデントリーダーのN氏やサウジアラビアの国から全ての生活費や学費を賄われていると言うZ氏は祖国で既にEndodontistとして活躍しているので、颯爽とそのラボワークを終了させ、来週からのきたる患者への対応に心躍らせている。

私はと言うと、器具などの問題があり(根管充填器が来ない、超音波が来ない)まだ実は1本も終了していない。
そこで今日、鍵を借りて一人朝から夕方まで抜去歯牙と格闘していた。




ここまでの抜去歯牙の実習の流れは、業者が来る→テクニックを伝える→それを見よう見まねで抜去歯牙でトライするというものなので、例えば昼休みによく話題にでるのが、根管充填に関する悩みで、

『何で気泡がアピカルプラグとバックフィルの間にいつも入るのよ!!』
とか、
『アピカルプラグ作るんだけど、何だかボソボソで。。。レントゲンの写りの問題かしら?』
とか、
『.04テーパーで根管形成したんだけど、SystemBやオブチュラのプラガーやニードルが入らないんだよな』
とか、
『25Gより細いニードルが欲しいよ!』
とか、

そりゃあ日本語だったら私がすらすら説明しまけど、、、というものが多々ある。

他のレジデントの抜去歯牙のケースをみてみると、お世辞にも人前に出せるものであるとは言いがたい。。。(少なくとも、私ならペンエンドでは出せない。)

彼らには顕微鏡の視度調整も、瞳孔間距離の設定も何も教えられていない。
力技で、それぞれが何とかしてる?のだろう。

私は顕微鏡はアクセスやストレートラインアクセス、そして根管充填の時などなくてはならないものであると実感しているが、彼らの多くは裸眼でCWCTに挑もうとする勇敢な戦士が多々見られる。

ああ、英語が堪能だったら・・・といつも忸怩たる思いで眺めている。。。

同級生にはエジプト歯内療法学会?認定のエジプト人の歯内療法専門医がいて、彼がレジデントを引っ張る頼もしい存在だが、彼が私に、『Akira, 俺は顕微鏡を使用して臨床した事がないけど、すぐ慣れるのか?』と不安げに聞いて来た。
エジプトでは、アメリカと異なり専門医のトレーニングで顕微鏡は使用しないのだという。
『君は既にエンドドンティストなんだからすぐ慣れるよ。心配無用!!』と優しく対応しておいたが、不安はよく分かる。

この抜去歯牙の根管形成から根管充填、そして透明根管作成までをドキュメンテーションして9月の2年生のケースプレゼンの時に一緒に発表しなくてはならないのである。
ようは、人前で見せるものを提供しなければならない。まさか、大きなvoidsが入ったり、ファイルが破折した症例やがたがたの根管形成の症例など出せないだろう。

私が超音波がないからと嘆くと、『再治療でもないのに何で超音波が必要なのよ?!ちゃっちゃとやって終わらせなさいよ!』と先輩に言われる始末。
いやあ〜イスムスとか象牙粒とかストレートラインアクセスとか仕上げとか洗浄とかでもいりますよね!?どうされてるんですか?という文章が出てこない。。。

私はこの夏休み、恐らく抜去歯牙は終わった事にして、学校に来て練習したいという呈でこの抜去歯牙のプロジェクトを終わらせるつもりだ。もうそれしかない。

患者さんを診たいのはやまやまだが、顕微鏡もない、器具もない、無い無い尽くしの状態では患者さんが可哀想だ。

しかも1年生の中の3名はこの雑多な環境(衛生士のユニット。ここでSRPなどを皆がやる)の横で診療をしなくてはならない。



患者を診たいなら早く終わらせる事だよ(笑)Rogesは笑っているが、今の私はとても笑える状況でないことを彼は決して知らないだろう!