2014年9月28日日曜日

USCペリオドンタルマイクロサージェリーコース

今日は日本の某スタディグループの先生が来て、USCのペリオのレジデントにペリオドンタルマイクロサージェリーを教えるというコースを手伝った。



日本人講師がレクチャーすると言う事、マイクロスコープを使用する事、エンドのクリニックを使う事から、エンドのレジデントである私が呼ばれたわけだ。

しかし、結局この日の事を総括すれば、USCの場当たり的で全く準備というものもせず、極めて礼を欠いた振る舞いに憤りを感じざるを得なかった。

まず私はエンドのレジデントである。ペリオの教授がマイクロサージェリーをレジデントに教えたいからと言う理由でこの日の企画は組まれたわけだ。だとすれば、企画、準備、後片付けはペリオの方がきちんとすべきである。しかし朝、現場についても何もなされていない。しょうがないので私とエンドの同級生レジデントが顕微鏡を全てセットアップした。

その後、日本人講師の先生が講義し、エンドのクリニックで実習に移った。
ここでも打ち合わせ不足でやれ講義室で顕微鏡を使いたいだの、それをモニターでみんなに見せたいけどどうしたいいだの、ラバーダムがブルーしか無く縫合の実習ができないから違う色は無いかだの、そして肝心の視度調整の為に私は呼ばれたと認識していたが、誰も視度調整もせずに顕微鏡を相変わらず使用し始めた。顕微鏡の某業者も来ていたが、それに関してはレクチャー無し。基本も何もあったもんじゃない。
そもそもデモをマイクロでするのに、モニターでみんなに見せれるようにしなければ意味が無いのは最初から分かるようなもんだが、ここも準備不足で結局1つのモニターを20人が囲むという異常事態になった。



実習は羊の頭を用いた。
実習自体はスムースに進んでいたようだ。
みんな楽しそうにやっていた。
しかし、ここはクリニックだ。やるならlabですべきであり、患者に礼を失していると指摘されても私は弁解できないと思う。
色々あって終わったのは5時。
この間、何度も写真を撮影するように教授に頼まれ、他の雑用もこなした。

しかし、終わったら彼らはそそくさと帰っていってしまった。片付けも何もせず。
勿論何人かは、私にねぎらいの言葉をくれた。
しかしペリオの教授から私にそうした言葉は一言も無かった。
正直、不快である。そして極めて無礼だ。
エンドのクリニックを使用していたため、私は後片付けが終了するまで帰れないし、顕微鏡を取り外し、収納しないといけない。しかしクリニックの鍵を閉めるのには後片付けが必要。USCから後片付け要員が呼ばれていたが、何と1人。彼と私で片付けを行なった。
朝6時半に起き、終わったのは6時半。疲れた私は論文も何も読めずそのまま寝てさきほど目が覚めた。すると猛烈に怒りが沸き起こってきた。

まず私はUSCペリオドンタルマイクロサージェリーコースのスタッフではない。
USCのゴミ清掃員でもなければ、あなた達の従業員でも、弟子でもない。
月曜日にはliterature reviewもあるので論文も読まなければならない。
また月曜日にはDr. Slotという細菌学が専門の教授の授業があり、そこでプレゼンをしなくてはいけない。しかもHIV virus。それを英語でだ。
そうした事を週末する時間を割いて私はボランティアで参加した。
ここの教授は私の事をUSCスタッフ程度にしか考えていないのだろう。

しかし私から言わせればもう二度と彼らに手を差し伸べる事はないだろう。
礼節を欠き、準備はできていない、全てが場当たり的。
正直、これを書くのもためらわれたが、ぶっちゃけ言えば前回のエンドのコースも酷かった。そもそもこんなに顕微鏡あるなら、なぜ先週は日本人の彼らには貸し出さなかったのだろうか?彼らはオプショナルで15万も支払っていると聞くのに、あのざまじゃぼったくりもいいところだ。USCという思い出を彼らに与えるから?certificate与えるから?(実際それも無かったけど)どうせ日本人で二度と来ないから?失礼だ。ここの学校のそういうところは色々な人の話を聞いても失礼だ。
彼らはエンドに興味があって参加してくれたのになぜ彼らには抜去歯牙をクリニックでさせなかったのだろうか。
お金も払っていない、ペリオのレジデントにはなぜエンドのクリニックを使わせて顕微鏡も外部の業者を使用してまで準備させたのだろうか?
日本のエンドの実習付のコースの方が、質、与えられる教材、内容全てにおいて上回っている。

とにかく、人をバカにし過ぎだ。もう二度とかかわり合いたくない。
私をよく知る人はご存知と思うが、見かけほど実は度量が大きいわけじゃないんで。
ジャイアント馬場みたいに、一度そういう事があると二度とかかわり合いを持たない、と思う人なんで。

とにかく、私は著名な歯科医師になりたくてここに来たわけじゃないし、ここで(LAで)開業する気もないし、USCのファカルティになりたいなんていう気もさらさらない。
だから改めて言いたい。準備や企画はちゃんとしなさい!最低限の礼節を持ちなさい!、と。

この大学のこういうところだけは私は本当に理解ができない。

2014年9月18日木曜日

BC sealer, GC GENESYS, ProTaper Gold…新しい材料を用いた歯内療法。

現在自分の今までの術式を少し軌道修正するという必要性に迫られている。

歯質をなるべく保存しましょうと言う流れが今のエンドの潮流にあり、従来のNi-Tiテーパー.06から.04のものを主として使用するようになった事がその理由である。

今まではアピカルプラグを作業長から3mmで作製していたが、テーパーが.04だとアピカルプラグが仮に作れたとしても、その後のバックフィルする際のニードルがアピカルプラグに到達しなくなってしまう。結果気泡ができてしまい満足する根充後のレントゲンが得られにくくなってしまう。つまりざっくりいうとアピカルプラグをどの位置で作るか?という問題に直面している。
現在のところ、通常の根管の場合3mmから4mmもしくは5mmに変更している。(もっといえば、顕微鏡でアピカルプラグが視認できる位置まで)
長い根管や湾曲が強いものは、BC sealerで根充するようになった。(シングルポイント)

今日の初診の患者さんも#4で何と作業長が25mm!である。こっちの人は根が本当に長い。こんなに長いとCWCTでは厳しくなるので、BC sealer+ BC Guutaでシングルポイントで根充させてもらった。

根充の方法で予後に大きく差がでないとはいえ、何となくこのまだ道の材料で根充するのには若干ためらいがあるが運良く?日本でこのバイオセラミックシーラーに関して発表する機会があったので、その時の理論でfacultyに自分の術式を正当化させている。側方加圧でアピカルプラグを作ってその後バックフィルするという方法もあるが関羽雲長のような風貌のアルメニア人の患者に時間がないから・・・とアピールされてBC sealerで即断即決だった。日本ではまだこのBC sealerは手に入らないようだ。2本で日本円にして約15000円。ユージノールシーラーに比べ圧倒的に高額である。しかし早い。レントゲンも相当上手く見える。このままバイオセラミックシーラーがエンドの世界を席巻していくだろうか?こちらでリサーチをしなければならないのだが、やはり乗りかかった船、このBC sealerに関して調べてみたいと漠然と今思っている。

また日本に帰った時に、GCさんのご好意でGENESYSをこちらで使用させていただいている。これが本当にいい!今までのβは凄く使いにくかったし、先端が熱くなって患者さんにあたって軽い火傷をさせてしまった経験がある私にとって、GENESYSは救世主のようだ。

もうこれ無しでは生きていけないとみんなが言っていた意味が分かった。新しいもの好きのレジデントはGENESYSにビックリしていた。圧倒的にみんながBL社のものかobtura & systemBを使用しているため、このペンタイプのシステムは画期的だと思う。また別の患者さんで#3の根管治療でNEXNi-Ti rotaryも使用させていただいた。やや硬い感がしたのは気のせいだろうか??それでも治療では問題なく機能したので、日本の歯科医の方はこのシステムを使用してみてはいかがだろうか。

またこちらでいろんなシステムに親しみなさいというDIRECTORからの命で、今日からPro Taper Goldを使用し始めてみた。まだ患者さんには応用していないが、今週末早速抜去歯牙で練習してトライしてみようと思う。


今週末は日本から歯科医の方々がUSCに来られており、エンドのハンズオンコース?の手伝い件通訳を命じられてしまった・・・。
また再来週も某大手スタディグループの先生がペリオのマイクロオペの講師でperioのCEコースでこちらに教えに来られるそうで、これまた手伝いを頼まれてしまった。エンドならまだしもペリオのコースの手伝いしかもマイクロスコープ使用というのはこれまた荷が重い。。。Directorが私を通訳者として起用しようとしているが、それは2アウト満塁、一打サヨナラの状況で成績不振でスタメンから外された外国人打者を代打で送るようなもので結果は見えてるでしょうに・・・といいたいところだが何とそれを英語で伝えていいかも分からないので結局私は打席に立たざるを得なくなってしまった。

明日は午前が中間テスト(メールを送るだけ)、午後は患者さん。
終末はUSCジャパンコースの手伝いと休む間もなく9月ももうすぐ終わろうとしている。
時間経緯が最近は本当に異常に早い!まだまだシステムに慣れないが大学院生活も何とか前へ進み出した。

2014年9月12日金曜日

ティーチングスタート

今日からティーチング(歯学部1年生)が始まった。
毎週金曜日の午後1:00~5:00、ファカルティ数人とレジデント1年生が5人一組交代で、100人近くいる学部生に教えなければならない。

ティーチングの流れは、
①学生、レジデントが毎回宿題論文を読む
②実習前に前回の実習と論文のQuiz(小テスト)
③宿題論文をレジデントと学生でディスカッション
④実習開始
という流れだ。

私は今日が初めてで何をどうしていいか分からない上に、本来私に様々な指示を出すべきFacultyがかなり自由な方で、好きにやっていいし君にここのブロック(約20~30人)任せたよ、論文も読んでないし。好きに始めちゃっていいよ(笑)などと仰るものだから、本当に私が1人でやらなければならなくなった。

ちなみに今日の論文は、Hamid JafarzadehのLedge Formation: Review of a Great Challenge in Endodontics.: J Endod 2007; 33:1155–1162。レッジに関するレビュー論文である。多分、たどたどしく説明は無理だろうなと思ったからわざわざ彼らの為にスライドを用意した。これがあるだけで精神的にかなり気楽だった。







『君たち読んできた?』

『何について書かれてた?』

『レッジって何?』

『レッジができる原因は?』

『レッジの予防法は?』

『レッジができたらどう対応する?』

などを私は約20人くらいの歯学部生に囲まれて15分くらい彼らとdiscussionを行なった。

しかし相手は1年生。生まれて初めて抜去歯牙で抜髄をする人たちばかりだからレッジだ、ストレートラインアクセスだとか言ってもピンと来てない様子。明らかに集中してないのを察した私は、

『まあとにかくやってみよう。それから考えよう!実習開始!質問あるときはどんどんして。但し俺は日本人だからゆっくり喋ってくれ!!』
とどこのグループよりも早く実習を開始させた。

今日の実習は上顎前歯を用いて、アクセス、ストレートラインアクセス、作業長測定、Initial Binding Fileの決定、MAFの決定、そのMAFでのハンドファイルを用いてのStep back形成、ポイント試適、フィンガースプレッダーによる側方加圧充填という流れ。そのすべてを私が自分の責任でチェックしなければならない。

アクセスから始まるや否や、外形はこれでいいか?と次から次へと質問がくる。
中には上顎前歯だというのに、下顎を持ってくる学生とか(どうやら真剣に上下の区別がつかなかった模様)、犬歯はダメだよというのにすごく長い犬歯を持ってくる学生がいたりしたが、

“外形はまず逆三角形。ペンで書いたら持ってきて!”と言うや否や私に行列。まるで何かの握手会のような状況につい私は卒業後就職した歯医者をすぐにドロップアウトして、某スーパーのチェッカーをしていた時代を思い出してしまった。あの時はバーゲンだったよな・・・と感傷に浸る間もなく次ぎから次へと、で次はどうしたらいいんだ?との質問。

いや、アクセスだから。まず削りましょう!と指示したものの、どの方向にどうやってバーを使用していけばいいかが分からない。従って一人ずつ手取り足取り教える羽目に。中には慎重な学生もいてラウンドバーの半分しか削れてないのにアクセスチェックしてくれとかいう女子もいた。もっと削らなきゃ。ここはラボなんだから少々の事は気にすんな!とにかくいっぱい経験して失敗しなさい!と何度言った事か。。。

今日、最も多く見られたミスがいわゆるConservative Endodonticsのようなアクセス窩洞になってしまっていることだ。アクセスが小さすぎる。歯髄が全て除去できていない。deroof completely!と何度言っても髄角部分に歯髄が残ってしまっているのだ。私があまりにも合格サインを出さないものだから、中には別のレジデントにサインを求めている者もいた。そうこうしているうちに、流れは気づいたらストレートラインアクセスに。彼らが使えるのはゲイツとorifice opnerだけなので(顕微鏡は使えない)、正直見えない。ただ、何度もリンガルショルダーを除去しろよ!ストレートラインアクセスに一番時間をかけなさい、それが終わるまで絶対ファイルを入れては行けないよ!というのに次から次へと勝手にファイルを突っ込んで早くもレッジやブロックを起こしている学生が多数出現。あんた達、論文読んできたの?!と聞くとみな笑顔でNo!だった(笑)

慌ただしくWLを決定すると、次の流れはどうやってMAFを決めるか?に移行していた。
この実習ではInitial Binding Fileからファイルサイズを3〜5号上げる事になっていたので、IBFを調べなさい!というものの、IBFって何?という質問をほぼ全員にされ、ほぼ全員に作図しながらIBFとMAFの関係について説明した。そしてStep backを説明し今日はここで時間切れ。

私は気がついたら1時から最後の生徒が帰った5時半までずっと喋っていた。なんせ次から次へと質問が来るので休憩させてくれない。気がついたら5時半で、学生以外に残っているのは僕とDr. Sだけであった。他のレジデントは5時になったから学生をそのままにして自動的に帰ったようだ(笑)。今日は今までで最もきつかった。ただ気づいたら英語に対する恐怖がなくなっていたのも事実である。完全なブロークンイングリッシュだが、そんなものはもうお構いなし。英語に慣れるというのはこういう事だろうか。



正直、実習前は不安でいっぱいだったが、いざ教えてみると意外なことにすごく楽しくて時間があっという間に過ぎていった。

学生からは、来週も来てくれるのか?すごく分かりやすかった!(多分、お世辞だろう)またいっぱい教えてくれ!楽しかった!最後まで教えてくれてありがとうDr. Akira!とまずまずの反応だったと思う。

今日は彼らにとって生まれて初めて神経をとった日になったわけだが、私にとっても祈念すべき学生指導の初めての日。今日は彼らにとっても私にとっても一生忘れる事ができない経験になったのでないかと思う。人に教えるというのは自分も勉強させられる。今日質問されてそういやそうだよな・・・という事が何点かあったので早速クリアにして次回はもっといいアドバイスができるようにしたいなと思う気にさせられる程、ここ米国(USC)の歯学部生にはパワーがあった。彼らがやる気があるから教える方もそれに応えたくなるのだ。相乗効果が生まれて学校に活気がある。

一方、今の日本の歯学部学生実習はどんなだろうか?
私の知るそれは、どこかやる気がなく、負のオーラに包まれ、気に食わない学生には意地悪をしたりするあの陰気くさい感じは何なんだろうか?少なくともこちらの学生の方が私の学生時代よりもWHY? HOW? WHAT'S NEXT?という姿勢やエネルギーがすごく強い気がする。

彼らの目は皆輝いている。歯科医に未来を感じているからだ。
でも日本は??
悪いが、歯学部1年生の最初の実習の時点で既に我が国との勝負が決まっているのかもしれない。

もっと頑張れ、日本の歯学部!

2014年9月9日火曜日

Cpoint

今日は午前中に、Cpointという新しい根管充填材の説明をしにボストンのEndodontist、Martin Levin先生が3時間の講義をしにやってきた。



歯科関係者の方は、このCpointという根充材をご存知だろうか?
なんとコンタクトレンズと同じ素材(ハイドロゲルポリマー, polymeric hydrogel)でできていると言う。
コンタクトは濡れていると安定するが、乾くと収縮する。
Cpointはやや湿ったケースの中に密封されており、根充するときも根管内は程よい湿度が求められる。程よい湿度の元でBCシーラーとともに根充すると根管を密封するそうだ。
論文もいくつか出ているようである。

術式は何の事はない、Braseeler USAから出ているバイオセラミックシーラーを用いて、シングルポイントで根管充填する。なお、試適をすると濡れてしまうのでverifiersと呼ばれるプラスチック状の少し硬い試適専用のポイントを用いなければならない。



世界的に根管周囲の歯質をなるべく温存させるという流れが、バイオセラミックシーラー&シングルポイント根充の使用促進に一役買っていると思われる。

今回の商品もその流れに則った物だろう。

USCではバイオセラミックシーラーを用いた臨床は許容されている。
但し、facultyに説明できなければならない。
理屈が通れば尊重される。
但し、何年の論文で誰が言ってたのだ?とまで聞かれる事があるので日々自分の術式を理論武装しなければならない。

さて、やはりレジデントからはこの新しい根充材は不評だったようだ。
講義中も容赦なく、反論がぶつけられる。
彼が一切PA(デンタル)をとらないでCBCTのみ撮影してすべてを診断するという姿勢も反論に拍車をかけた感が否めない。
しかし私の個人的な意見で言えば、少し面白そうな材料だなと思った。
特に根が長かったり、湾曲が強かったりすれば使い勝手はあるのかもしれない。
多分、現時点でBC Gutta percha(69$)よりも値段が安い(41$)ので、日本に売り出せば新しい物が好きな日本人は真っ先に飛びつく気がしたが、言うまでもなくこの材料で根充すればどんな病変でも治癒する事などはない事を強調しておきたい。

正直この先生の講義は残念ながらややバイアスが強かった感が否めないが、多分これからAAEでもテーブルクリニック等で話が聞けるかもしれないので、興味がある先生は講義を聞いてみる事をお勧めする。

2014年9月6日土曜日

クリニックスタート

今週から学校が再開し、クリニックがいよいよスタートした。
自分の予約表をチェックすると10月半ばまでアポイントが埋まっていた。
USCのエンドの治療費は激安なので車で2、3時間かけてわざわざここまで来たという人がすごく多い。患者層は多くがヒスパニック系と黒人。彼らは歯が痛くてきているので、みんないきり立っている。
アメリカで初めての患者さんはヒスパニックの男性で、#9がdeep cariesをコンポジットで治療して壊死&根尖病変、その他も2次カリエスが多数ありエンドが必要な歯が5、6本はあった。
こちらの診療システムの特徴は、自分で診査し、診断し、それをfacultyに報告する。
そこでの説明が理にかなったものであれば、治療許可のサインが得られて晴れて治療がスタートするわけだ。

この辺りの診査・診断は、日本で行なわれているものと全く異なる。
例えば上記の私の米国初の患者さんは日本だと明らかにperである。
従って日本だと治療が即開始されるわけだが、こちらではそうはいかない。
日本の保険診療には、歯髄や根尖部歯周組織の診断というものが無い。従って患者さんの主訴とレントゲンと症状だけで通常、根管治療はスタートする。しかしこちらでは、歯髄の状態の診断と根尖部歯周組織の診断の双方をつけなければならない。そして予後判定と治療計画。これはPESCJで教わった事とほぼ同じである。驚いたのは、アメリカではdeep cariesは即抜歯と聞いていたが、以外にここUSCでは日本と同じように深い虫歯でも何とか残して(クランレングスニングや挺出などせずに)治療するケースが多い。

今週だけで4人の患者さんを治療した。
前歯の壊死歯髄症例、コンサル、臼歯部の抜髄症例、小臼歯の抜髄症例。
抜髄症例はどれもsevere painがあるので、麻酔がほぼ効かない。
こういう場合、日本では投薬をまず行ない嵐が治まってから治療してきた。
しかし、ここではそういう考えは無い。
痛いから来てるわけだから、何とかしなければいけないわけだ。
そしてfaculty達は私に有無を言わさず、髄腔内麻酔(神経に直接麻酔をするあの忌まわしきやつだ。。。)を命じる。あちらこちらのユニットから悲鳴が絶えず聞こえるのもUSCのエンドの特徴かもしれない。大の大人が大声上げて体を大きく動かしてリアクション取るからその手の患者さんが苦手なドクターには地獄かもしれない。日本ではまず考えられない。しかし彼らは歯科治療がそういうものだと思っている。痛みは仕方が無い、と。皆さん非常に我慢強い。痛みがあってもある程度は我慢する。事実治療が終了したら、そんな地獄のような痛みを与えた私に対して、皆さん一様にThank you Dr. Matsuura!と笑顔で帰っていく。patientという単語があるが、これは本当に良くできた言葉だと改めて思う。形容詞でpatientは我慢強いという意味だが、名詞では患者だ。患者とは痛みに我慢しなければならない、そういうものだ、と。これは日本との最大の違いかもしれない。

言語の問題を診療では特に気にしていたが、意外な程今のところはスムーズに行っている。授業を受けるよりも患者さんとやり取りしている方がスムーズだという英語のレベルには問題はあるのが・・・。

今週、私の患者さんのうちの一人の女性が6月にUSCのemergencyに来て激痛を受けて抜髄した、私はエンドが必要だ、ただすごくその時診査や治療が痛かったからお前が診査するだけで激痛走るからとにかく絶対に歯を扱うな、早く麻酔して今すぐエンドしろと挨拶したその瞬間からキレていた患者さんを診なければならなかったが、彼女に今の状態と6月の状態は違うから診査が必要だと言っても聞き入れてもらえず、結局彼女は怒って帰ってしまった。何が悪かったんだ?やっぱり言語の問題かな・・・?とアシスタントに聞いたが、ここではとても書けない理由を彼女達は爆笑しながら私を見つめて語りかける。アメリカには根深く人種差別があり、その一端を垣間見れた。日本でそういう事を喋ったら即アウトだが・・・こちらではまるでそれをネタのようにアシスタントもレジデントも喋っている。そりゃあ暴動も起こるはずだ。。。と一人納得した。

USCはdowntownに位置している。
downtownは非常に治安が悪く、ある人に言わせればバイオハザードさながらだ、と言う。
夜中にまず歩けない。昼間でもそういう路地が点在する。
つい最近も中国人の学生が深夜に自宅に歩いて帰る途中、少年&少女に襲撃されて命を落とすと言う事件がキャンパスのすぐそばであった。
患者さんは貧しい方が多く、クリニックは7時から受付が始まるのだが、6時半にはもう長蛇の列だ。皆、見るからにいきり立っていて、早く何とかしてくれという目で我々を見てくる。従ってUSCでは患者さんの確保に苦労しない。逆にUCLAのエリアは家賃も高く、生活水準も高い人が多い。夜中にコンビニに出歩いても大丈夫だ。従ってUCLAエリアの人達は、わざわざ大学院生に治療してもらおうという人が少ない。つまりUCLAでは患者さんの確保が大変なのだそうだ。USCではそういう事は絶対にない。特にエンドは。。。

クリニックは朝8時から始まり、火曜日以外は毎日ある。それプラスliterature review, その他基礎系の授業、治療後のカルテの記入、紹介元への文章作成etc...気づいたら1日、1日、1週間があっという間に終わっていた。

来週は午後がemergency roomの担当、金曜日の午後はLabでのteaching(学生実習の指導)、それ以外は全て診療。いよいよ大学院生活が本格的に始まった!