2014年11月14日金曜日

理事長診療のお知らせ

この記事は、まつうら歯科医院のホームページからの転載です。
主に、患者さん向けとなります。

患者さんにお知らせです。
この度、理事長が米国より定期的に(3〜4ヶ月に1度)一時帰国し、患者さんの診療を行なう事になりました。

第1回目の診療は12月15(火)〜12月29(月)までを予定しています。

つきましては、診療をご希望される患者さんにつきましてはご予約をお取り致しますので、医院の方までご連絡ください。
なお診療内容につきましては、理事長の日本での滞在期間が2週間と限定されますため、歯内療法に関わる治療(抜髄・壊死歯髄根管治療、再根管治療、歯内療法外科、リヴァスクラリゼーション、吸収、外傷等)とそのご相談に限定させていただきますので御理解の程宜しくお願い致します。

<診療内容>
・歯内療法全般(抜髄・壊死歯髄根管治療、再根管治療、歯内療法外科、リヴァスクラリゼーション、外傷等)に関わるご相談
・歯内療法の患者さんの治療

<診療費用>
・初診料(主訴のみ。その日に理事長により、診査診断およびご説明。1時間程度お時間を頂きます)・・・¥10,000
・診察料・・・症例により異なりますので、直接医院の方かmturakr@fukuoka-endodontist.comまでお問い合わせください。
 ※今回の診療に関しましては、自由診療のみとさせていただいております。 

<理事長より>
患者さんにおかれましては大変ご無沙汰しております。理事長の松浦です。
現在、米国の大学院にて歯内療法専門医になるべくこちらのカリキュラムを受講中のため、日本の患者さんには大変ご迷惑をおかけしております。この度色々と話し合った結果、こちらの大学院が休暇に入った時に限り定期的に日本で診療を行なう事になりました。滞在期間は概ね2週間程度です。
歯内療法は概ねどの処置に関しても治療回数が1回もしくは2回で終了致しますし、その後の経過観察に関しましても、通常、治療後より3~6ヶ月程度時間を要しますので、根管治療全般に関しましては上記のような変則的なスケジュールでも問題ない事をお約束致します。限られた時間ではございますが、多くの患者さんにお越し頂ける事を心よりお待ち致しております。

医療法人精密会 まつうら歯科医院 理事長 松浦 顯

2014年11月10日月曜日

USCエンド、実は存在する?

USCでは症例が1つ終わるごとに、facultyにチェックを受け、可とならなければその症例が症例として認められないシステムである。9月から2ヶ月経過したが、10ちょっとの症例を終了しただけなので、少し私は焦っている。なんせ最低200ケース、平均300というのだから基本、1回法で終わるくらいの心構えがないと私には無理である。もちろん、毎週火曜日のナイトクリニックの私は常連。私は、講義<<臨床なので。

しかもその上、1ヶ月に1回ケースや授業の取り組み、Lit reviewへの参加度や貢献度に対する4者面談(レジデント1人+ファカルティ3人)があり、そこで色々ありがたいアドバイスを受けるわけだが、私はいつもファカルティに言われるのが、アンダーであるということである。

USCでは作業長はRIL-0.5mm。理由はKuttlerの1955の論文から。
なので、今は日本にいた時よりもかなりアグレッシブである。
こちらでは、シーラーパフは許容されるというか、シーラーパフしないものは全てアンダーもしくはdentin blokageしていると判断され、お前どうやって作業長設定しているか言ってみろと詰問?される。
シーラーパフはApical Foramenから流れでた証拠であり、overextendedでなくsurplusであるという考え(シルダーのコンセプト)。
しかもUSCでは.04テーパーが主流なので、日本での.06よりもテーパーが少ないので、シーラーが溢出しやすい。

従って私の現在の症例は、WL-4~5mmでアピカルプラグを作りCWCTもしくはBC sealerでシングルポイント。そしてほぼ100%シーラーパフしている。
ペンエンドの先生方には顔向けできないが、すいません今は私は完全にシルダー派を演じています。

こちらでは、wire film撮影後にチェック、ポイント試適後にチェック、Initial obturation後にチェック、根充後にチェックを受ける必要がある。

今日も、#27の再治療で私としてはRILのX-ray(Apex locaterでApexの位置のMAFのX-ray)からすればレントゲン上ではアンダーに見えるものの、うまく作業長のコントロールができ、WL-1mmの範囲に収まったと判断したが、教授のRogesからは『Akira、まだわかってないな。どう見てもショートだろ。形成をやりな直してもう1回呼びなさい。』とダメ出し。


結果、やはりシーラーパフして根充材の位置はwire filmでのapical foramenの場所とほぼ変わらないように見えて、私としてはオーバーかな・・・という判断だったが、facultyは誰に見せても『Perfect!良くなったなあ!』と称えてくれるのでどうしたものか・・・とさらに悩んでしまう。
他のレジデントの症例を見ても皆、どoverである。ひどいやつだと根充材がとぐろを巻いている場合がある。
この術式のロジックをいつ聴いても私は納得ができない。
ただ、今は100%いうことを聞かなければいけない立場なので、私は毎日なぜこの方法がベターなのか?を拙い英語で必死に理論付けようとしている。

USCエンドなんて、存在しないよとfacultyは言うが、私には最近USCエンドなるものが実在するように見えてしょうがない。明日は、私は症例をたっぷり持って行ってdiscussionしなければならないので、是非このところの疑問を解消するような答えを見つけれればと思う。

今月は来週、USCエンドシンポジウム。そして再来週はBuchananのHands-onコースが又してもサンタバーバラである。そしてテストがあり、冬休みに入る。あっという間に半年という時間が過ぎようとしていることに驚きを隠せない。。。

2014年11月6日木曜日

下顎小臼歯、2根管でなく樋状根・・・

以前の投稿で、下顎の小臼歯が2根管であるという症例の治療をしたというお話をした。

あれから色々検索してみると、やはりストレートラインアクセスをしっかりやらなければ、舌側根管にはアプローチができないという趣旨の文献や教科書が多かったため、私は方針を転換し、超音波で舌側方向に拡大しストレートラインアクセスを確保しようと試みた。

すると、容易に下図のように根管が明示でき、ファイルが入るようになった。



よし!これで頬側、舌側2根管作業長を図れるぞ!とRoot ZXでApexまで測定しレントゲンを撮ると・・・


私が格闘していたのは、なんと2根ある片方の方であった。。。
しかしどう考えても合点がいかなかった。
レントゲンは偏近心から撮影しいるので、ファイルが入ってないのはより舌側??
しかし上図の根管の位置から考えて、これ以上舌側にもう一つ根管があるのだろうか?
これ以上舌側に追求すると間違いなくパーホレーションしそうなので私は混乱したままもしかしてファイルを挿入ミスしたのではないかと思い、上図の2根の拡大形成を先に行い、ポイントを試適してレントゲンを再度撮影した。


しかし・・・・状況は変わらなかった・・・。やはり上図の2根管は未着手の根に比べてより頬側に位置しているようである。

私は完全に混乱した。一体これは何が起きているのだろうか??

ここで私はUSCエンドの重鎮ファカルティであるDr.シェクターとDr.コールマンに上図の症例に関して術前にCBCTを撮影する許可を得るために、2人に別々に相談した。

すると2人ともこのレントゲンを見せて二つ返事でこういう言葉が返ってきた。

『これは、C-shaped root canalだな。』

C-shaped??下顎の第2大臼歯でしか私は見たことがないが・・・でも教科書見てもそういうことあまり書いてないんですけど・・・と質問してみると、

『OK。じゃあランチを賭けよう。もしAkiraが正しいなら(私は何も自分の意見を言ってないのだが・・・)、10ドルのランチをおごってやる。でももしC-shapedだったら・・・わかってるな(笑)?』

3階の矯正の診療室にCBCTがあるのでそこで撮影の予約を取り、早速CBCTを分析してみた。すると・・・

C-shapedであった。。。画像が判然としなくて申し訳ないが、別の切り口では完全にC-shapedであった。しかも頬側の歯槽骨は完全に消失している。



私が根管形成したのは、遠心の頬側と舌側だったのである。


なんと近心にtinyな根管口がCBCTで見える。それは舌側と頬側のほぼ中央に位置しているように見える。

つまり、私はアクセスの外形をこのようにmodificationしなければならない。


と言っても、この3番目の根管が見つかる保証はないし、見つけたとしてもC-shapedなのでフィンがあるので、そこも修正を強いられる。要は、頑張っても非外科的な治療では難しいかもしれない。

そこで治療前に、この3根管目が見つからない時にどうするか?について患者さんにインフォームドコンセントしなくてはならなくなった。
つまり、うまくいかない時、外科をするか抜歯をするか、はたまたもう今の時点で抜歯するかである。
外科もこの場合、歯根端切除か意図的再植術かの2択になる。Dr.シェクターは私に強硬に意図的再植術を進めてきた。理由はc-shapedをApicoectomyで逆根管形成するのは難しいという理由であった。

以上を整理し、患者さんに説明を行った。
①あなたの下顎小臼歯は非常に複雑な根管形態であるということ。(C-shape)
②3番目の根管を見つけるように最大限努力するが、最終的に見つからないかもしれないこと、その可能性が濃厚であること。
③その時は、今見つかっている2根管のみ根充して、経過観察後、(必要が生じれば)外科治療へ移行する必要があること。(おそらく外科治療が濃厚であること)
④外科治療には2つの選択肢があり、1つはApicoectomy。もう一つはIntentional Replantationであるということ。
⑤それが嫌なら現時点で抜歯するか、3番目の根管が見つからない時に抜歯するか?

しかし、私はエンドドンティスト(に将来なるので)なので、極力保存したいという自分の希望を伝えた。



すると患者さんは、保存を強く希望した。もし彼女がこの歯を失うと、彼女は右下の臼歯部にインプラントを最大3本埋入する必要が生じてくるからだ。

CBCT撮影&診断、インフォームドコンセント後、治療を午後3時半からスタッフが嫌な顔をするのを横目に開始した。

そして格闘すること2時間、午後のfacultyであるDr. Lazarと一緒にああでもないこうでもないと言いながら、超音波やMUNCE Discovery Burを用いながら彼はロードマップを発見しようと、私はヒポクロでバブルが確認できるところを超音波ですこしずつ拡大しながら根管の発見に努めたのだが・・・見つからなかった・・・。診療は1時から開始したが、終了したのはなんと6時。最後まで私に付き合ってくれたDr. Lazarにはありがとうとしか言いようがない。そして患者さんにもだ。次回、再度トライしてもし見つからなければ仕方がない・・・。

今回、この症例を通じて私が感じた最大の感想は、
"下顎小臼歯は根管の形態がバラエティーに富んでいて難しい”
ということである。

GPの時は、下顎の臼歯が欠損していた時、私は治療のオプションの一つとしてブリッジをインプラントと同様のランクでフラットに患者さんに説明していた。

しかし、私は今後、下顎小臼歯を支台歯とするブリッジをそれが生活歯であろうと、失活歯であろうと、第1選択としてGPの先生に勧めないだろう。

もしも下顎小臼歯の補綴にエンドのトラブルが発生したら、外科になる可能性が少なからずあることを事前にアドバイスするだろう。

これは私の中で、エポックメイキング的な出来事だった。

今まで、第2大臼歯を除くブリッジに関してはインプラント=ブリッジだったが、今では欠損補綴に対しては、インプラント>ブリッジである。といっても、もう今後2度とそういう治療をする機会はないが、アドバイスするとしたらそういうことになるだろう。

非外科的な根管治療の可能性と、限界を見た1日だった。