2014年12月12日金曜日

2学期終了。

皆さんは笑気を使用しながらエンドをしたことがあるだろうか?
私は日本にいるときは1ケースもなかった。
しかしここでは笑気を使用して治療することがほぼ子供や怖がりの成人の方であれば当たり前になっている。

笑気+エンド・・・私が将来開業した時にこのオプションは残しておくつもりだが、正直言うと実に煩雑だ。

特に鼻パッドをあてがいつつラバーダムをかけて治療するのは実に困難である。
上顎ならまだしも下顎は本当に骨が折れる。
鼻パッドが邪魔で治療がしにくいのだ。
私はこういう場合は、ここでの経験だけでいうと静脈内鎮静したほうがやりやすい気がする。
いっそチューブごと鼻に突っ込んでくれたらと不謹慎なことを考えてしまう。

根充するときなどは一大事だ。

今日まさに根充しようとしたら、笑気がemptyになり、CWTはアピカルプラグを作らないといけないが、鼻パッドが邪魔でアピカルプラグを作るのに時間が掛かる。

なので私は時間もなかったのでBCシーラーを選択した。
この材料はこういう時も実に効果を発揮してくれる。

ただ治療後、ケースを見せたらそれはお前の都合だけじゃねえの?というツッコミをロヘスから受けてしまうのだが。。。




笑気+エンドは時間かかる、煩雑、治療しにくい、笑気費用が掛かる、ということでextra chargeの対象だな、と確信した。

さて長かった今学期も今日で終了である。
長いようで実に短かった。。。
特に毎日患者さんの治療があるのでそこが最もハードだったと言える。
ただ、最も楽しい時間であった。
座学もいいのだが、基礎系はとにかくもういい(笑)

また今日は今年最後のミーティングとして昼にAAE meetingがあった。
AAEの現在のプレジデントの Louis Rossman先生が来て、ランチをおごってもらいながら自己紹介、なんでここにいるのか?エンド開業の話などをしていただいたが・・・彼らの最大の目的はdonationを募ることだった。



そんな話をよそに私はいただいた別のパンフレットを見てああ、こんなにエンドの大学院って全米にあるんだ・・・おおNova Southeastern Universityはこんなところにあったのか!と一人アナザーワールドでしたが。。。



まあdonationは開業してからならまだしも・・・学生ですから、まだ。。。
USCは授業料高いので、そんな余裕はなし。
ということでほとんどのレジデントがドネーションシートにサインせず、そそくさと帰ったのだった。

ということで、まとまりつきませんがこのLA発のブログも今年はこれで最後になると思います。

なぜか帰りにアシスタントのキャンディに泣かれてしまい、(私がいないと寂しいらしい笑)帰りづらくなりましたが、予定通りの日にちで帰国します。

思ったほど患者さんがいないので(笑)、自由に過ごさせてもらおうかと思います。

今年の6月から開業医としてのキャリアを中断してこちらに来たわけですが、言語の壁、しきたりの違い、システムの把握、術式の違い、失うものも得るものも双方ありました。

特に困ったことは医院の体制が6月に大きく揺らいだことです。
いきなり、すいませんもうできません・・・ですから最初の頃は本当に大変でした。
その後も様々なトラブルが勃発・・・一枚岩にならないといけない時期にこの有様ですから、私はつくづく人材というものにこりごりになりました。
二度とGPとして医院をorganizeすることはないでしょう。

しかし、目代先生(現院長)が助けてくれました。彼女には本当に感謝しています。
彼女には色々学んで、何を本当に留学して学びたいのか?を確認してもらいたいと思います。

逆にこっちに来て最も良かったことは、自分の世界が広がったことです。
ここに来ていなければ、自分の人生はもっと狭かったでしょう。
しかし、ここにきたおかげで色々な人種のいろいろな人と知り合うことができ、日々楽しく過ごさせていただいたのは何物にも代えがたい自分の宝だと思っています。

いきなり歯医者をやめてスーパーの従業員になった時と比べれば・・・随分気がついたら逞しくなったなと思います。

ということで、私は一足先に冬休みに入らせていただきます。皆様よいお年を。



2014年12月9日火曜日

1917年のエンド

今日、ロヘスの授業で面白い動画を紹介してくれた。
1917年当時、どのような術式で根管治療を行っていたか?を示したものである。
幸い、今の所youtubeでも観れるようなので、興味がある方は動画を見てみてください。

細かい術式は時間とともに常にブラッシュアップされ、見直されていくのがどのような治療でも宿命。したがって、この動画を見ていただいても術者は素手で治療しているし、顕微鏡もないし、Ni-Tiも超音波ももちろんない。タービンがないので治療には時間が掛かる。ゴールドのワイヤーを作業長測定、貼薬?にも使用しているし、レントゲンも今のクオリティとは比べものにならない。最後もクロロパーチャテクニックで根充して、思いっきりオーバーになっている。



しかし、今の私たちの治療の原形が1917年当時既に行われていたのに、素直に驚いた。
1917年、日本といえば大正6年、空前の好景気で、金本位制は廃止され、第1次世界大戦が起きている。
そんな時、すでにRoot canalが行われていたことに対して素直に驚きを覚えた。

しかし、それ以上に注目して欲しいのは、動画の最初のEssentials to Success(エンド治療成功へポイント)の部分である。


成功の最大の要因は、
" Removal of every portion pulp-assured aseptic environment."
とある。

可及的に無菌的な環境下で治療することが根管治療成功の最大の鍵としているのだ。

しかもこの動画では治療中、必ずラバーダムを行っていることがわかる。



今からほぼ100年前の動画だが、かなりきちんとラバーダムをしていることがわかる。
そしてこの価値観は今でも変わらない。

翻って、私は代診時代も含めてこのようなきちんとしたラバーダムをかけれるdentistにほとんどお目にかかったことがない。ラバーダムしていると真面目だねとか、すごいねとか、保険でもやっているの?とか、患者集めのためのフェイクでしょ?とか言われたこともある。

しかし、根尖病変が生じる理由は細菌である。それを極力防ぐことが治療成功の鍵であることが、100年前にも第1番目に挙げられているのだ。

シーラーがどうだとか、根充材はこれがいいよとか、こういうテクニックが全てを凌駕するとか、顕微鏡がないときちんと行えないとか、そういうことは第一義的ではないのだ。

歯科治療と医科治療の最大の違いは何か?と考えた時、私は今まで答えが見つからなかった。
治療が命に関わるか、関わらないかが最大の違いだと思っていた。

しかし、それは確かに事実だが、側面的な事象の1つに過ぎないと思う。

我々歯科治療の最大の特徴は、生じた歯科疾患に対して長期的な予後を有する治療を提供することが可能である、ということである。
また、治療のターゲットも明確である場合が多い。
治療の成功率も歯内療法に限れば、外科治療までを含めるとほぼ100%だ。
だからdentistは尊敬され、就きたい仕事にここでは毎年選ばれるのである。
歯の問題を適切に解決し、しかもそれが長く持つので我々は信頼されるのである。

U.S Newsを見てみると、

日本では・・・言うまでもないだろう。。。

しかし我々の多くが、歯科治療の本当の意義や意味を十分に患者さんに伝え切れているだろうか?

また我々は、治療の原則を守るよりも制度のルールや経営をより重要視していないだろうか?

保険診療が・・・とよく言われるけれども、それで自分が思う歯科医療が提供できないと考えるのであれば、自分が思うような歯科医療をしていけばいいわけである。
その"覚悟”さえ、あれば我々日本の歯科医師は大きく変われるかもしれない。

少なくとも、1917年の根管治療の動画からは、
”疾患をきちんと治そう!”という決意がひしひしと感じられる。

この1917年のエンドの動画から私たちは単なる物珍しさ以上の、とてつもなく重要なメッセージを受け取れる気がする。

2014年12月7日日曜日

1st Fall semesterいよいよ終了へ

1yrのFall semesterもあと1週間で終了する。

2nd-yrのレジデントの中には早々に帰国する人もおり、それぞれが自国へ帰国するというのが一般的なようだ。

本セメスターは長いようで短かった。特に始まって数ヶ月くらいは、なんでこんなところに来たんだろう?という後悔が正直あったことは否めなかった。

何度、環境なんて関係ない要は自分の気持ち次第でなんとでもなる!と思っていたが、外国での言語の壁は厚く、何度も疎外感を感じることが多かった(特にすべての授業で)。
今でもそうだが、自分の気持ちを一度文章にしないと議論はできない。情けない話だが、渡米前に医院の新体制構築に追われ、途中でそれが瓦解し、さらにその収集を図らねばならなくなり、肝心の英語学習ができなかった。もっと英語を勉強してここに来るべきだった!と何度思ったことか。

しかし、私は授業ではそうだったが、クリニックは楽しかった。クリニックにはUSCにはアシスタントがいて、彼らと話す機会が1日ですごく多い。
彼らは、我々の診療業務及び患者との連絡一切を管理する。
治療後のカルテが書かれていないと催促してくれたり、それさえも放置するとdirectorに告げ口してくれるというありがたい存在だ。(笑)

とかくと、怖そうな、ネガティブなイメージを持たれるかもしれないが、そうではない。
私は、彼らに随分と助けられた。
なんというか、同級生レジデント同士はこちらでは個人主義というか、(する必要もない)競争心理が働いて、全員とはそこまでまだ打ち解けて話すことができない。みんな我こそがアワードだ!という気概で日々戦っている感じだ。もちろん、好き嫌いやフィーリング、合う合わないもあると思うが。しかし、アシスタントはそうしたコンペティションとは無縁である。彼らはフラットに接してくれる。
特に私は英語ができないので、彼らにはfunny manに映っていたのかもしれない。



特にアレックス(骨の服を着ている男性)とアンドリュー(青いスクラブの男性)とは随分と仲良くさせてもらった。特に私が日本の一般的な朝の挨拶と称して教え込んだ、『1,2,3,ダッー!』がお気に入りだ。彼らは日本に行きたいようだ。

ミッキーマウスの自分の娘が作ったチーズケーキを15ドルで販売し、まるで私の母親であるかのように何かにつけてお小言をくれるモニカや、その黄金の右腕が腱鞘炎で大リーグ養成ギブスみたいな真っ黒のサポーターをつけて毎朝わざとぶつかってくるキャンディーは診療が押せ押せになると露骨に不愉快になる以外は(笑)いい人たちばかりだ。

バッファッローマンみたいなカツラを装着しているノーマと産休したジャッキーの代わりにデスクを仕切るダイアナにはいつもヒスパニックしか話せない患者との診療の説明、お金の説明、ルールの説明、インフォームドコンセントで大活躍してもらっている。

クリニックの時間が十分にあり、その内容も自主性を重んじてくれ、しかもスタッフが全員気さくだったために私は彼らと下手な英語でコミュニケーションをとることができ、なんとかこの数ヶ月やってこれたのかもしれない。

このターム前に、ペン大出身の田中先生からクリニックが始まるとあっという間に時間が過ぎますよ、とアドバイスされたが本当その通りだった。家に帰るとソファーに腰掛けたままそのまま朝が来たことが何度あっただろうか?

とにかく毎日がめまぐるしく過ぎていく。
特に1年時は基礎系科目が毎日あり、それの学習に忙殺されて、エンドを勉強したいのにそこに十分な時間が取れなくて毎日イライラしていたが、患者さんの治療で疲れてしまい、毎週末にすべての宿題や課題を図書館で解決するということがほぼ毎週の恒例行事と課していた。特にここ1ヶ月はテスト期間ですべての労力を基礎系に集約せねばならず、体調も崩し、そしてストレスで過食→太るといういつものパターンが続いた。

しかしながらようやくペースというか、日々の過ごし方にめどがついた気がする。
今までは探り探りだったが、next termからはもう少し効率よく動けるだろう。

USCと今までで違うことがあるのか?と言われれば、最初はそうないと思っていた。
しかし、最近になってだんだんと違いを肌で感じてきた。
特に作業長の設定や、ぺーテンシーファイル、シーラーパフを許容(というよりむしろ必須に近い)、最終拡大号数はあまり大きくしない、ApexをMAFで測定したり、再治療でクロロホルムを使用したり、どの部位でも必ず伝達麻酔したりetc...と挙げればきりがない。

結局本タームで治療終了した患者さんの人数はjust20人だった。
基本、1回法で終わるし、毎週ナイトクリニックで診療していたので、治療終了した患者さんの数は1年生レジデントでも多い方の部類に入るようだ。自分が輝ける場はクリニックくらいしかないから・・・と思いながら空き時間が1時間でもあれば診断するから患者を配当してくれと頼み、空き時間という空き時間すべてに患者さんの予約を入れたことが良かったようで、今の所勤勉な日本人だという目で見られているようだ(笑)。

しかし、彼らはliterature reviewやケープレで私からほとんど意見が出てこないことに不満がある。毎回、もっとお前の意見を言え!と言われるのだが・・・自分の意見を英語で考えるうちに話の流れが次へ進むのでついていけないのだ。耳はほぼエンドの授業なら問題がなくなってきた。特にラスティンの授業は聴きやすい。ロヘスの言葉もだいぶ慣れてきた。ただやはり未だにリービィ先生とシェクター先生のネイティブ英語には苦労するが。。。

この長い冬休みは、日本で診療も行うが
①本タームであまり目を通せなかった論文をすべて読破する
②診療の筋(理論)をもっと強化する
ことに全力を注ぎたいと思う。

福岡でも、どうやら日々図書館 or 自習室&まん喫通いになりそうだ。


追伸

帰国時にニューヨーク大学の補綴科のレジデントの白先生とセミナーをすることになった。といっても、エンドの話はせず留学に至る経緯や留学生活をざっくばらんに語るというライトなものなので、年末で東京開催ですが興味がある歯科医師の方、参加費無料!とのことですのでよければご参加ください。


ただ私の話はだいたいブログで言っているようなことばかりですが(笑)・・・今の私は学習中の身でして、人前に出てエンドについて偉そうに教えられる資格はありませんし、ペンエンドに所属してますので私の意見を公の場で話すのは不適切だと思っていますので診療哲学の話はありません。そういう話は卒業後に歯内療法専門医としてできればいいかなと思っています。

さあ今週はテスト、そして最後に多くの患者さんを診療&フィニッシュして、最後に西森組に初めて参加して(しかもそれが忘年会のみ。。。Min先生すいません。)、日本へ帰国します!

2014年12月5日金曜日

人生で最大の殺人的スケジュール

今日は実に長い1日だった。。。

Dr. SlotsのBiologic Basis of Oral- Facial DiseaseのFinal testがあったのだが・・・

全く覚えられない。

とにかくこんなにも興味がないのか、というくらい面白くない。

サマライズが回ってきて、getした瞬間はlucky!だったがファイルを開くとそこは地獄だった。

なんせ、サマライズのくせに全部で153ページもある。
これを本当に覚えなければならないのだろうか??私は何度もこれはドッキリじゃないかと淡い期待を抱いて何人もの同級生に確認したが、ガチンコであった。

自分で作ったプレゼンテーションから覚えようとしたが、それすら全く覚えられない。




というか、これは日本語でも覚えられないだろう。

うちの学年で最も優秀な、マリアにどうやって勉強してんの?と聞いたが、

『サマライズ読みながら寝ちゃった(笑)』

と笑顔で返された。。。

ネイティブでも覚えられないものをなんで、このアラフォー純ドメ親父が覚えられるだろうか??

と何度もくじけそうになりながらまるまる1週間、使用したノートは全部で6冊。
久々、書いて覚えると言う作業で153ページのPDFファイルを写経のように、科挙の試験でも受けるかのごとく何かに取り憑かれたように一心不乱に耳栓を装着し、サンタモニカの図書館でそれを声に出して読みながら(相当怪しいおっさんに違いなかっただろう。)、記憶すると言う試みを続けた。



そして今日はテスト当日だったのでこちらに来て初めて徹夜をした。

テストは朝8時からで、遅刻は失格と言われていたので今日は寝ずにそのまま家を6時には出て、USCへと向かった。
車中も、まるで念仏でも唱えるかのように、TOEFLの単語を覚えるかのごとく、書いたことを唱え続けた。

私は、人生で初めて脳がパンクしそうになった。
正直、これは拷問以外の何物でもない。。。
1つのトピックを覚えても次に行くとさっき覚えたことは遥か彼方。
しかもこの薬はHIVだったか?Hepatitisか?はたまたHerpesか?混乱する。。。
そして中間試験の問題も一応チェックしておいた。
前回のDr.Tanakaの試験が中間テストの問題がいっぱい出たので、その時のを教訓に目を通しておいたので、もう頭は久々パンパンで今にも爆発しそうだった。

これは、大学3年生の時の細菌学の口頭試問を思い出させてくれた。
あの時、私は1回目の口頭試問に落ち、2回目の口頭試問は1年後、しかも1発勝負で答えられなかったら、即留年!という長崎大学・歯学部で人生最大の危機だった時だ。
実はあの時も、留年したら学校を辞めると周囲に吹聴し指定された細菌学の教科書(多分、微生物学250ポイントだったと記憶している)をまるまる1冊覚えるという経験があった。


あの時も頭がmaxで爆発寸前だった。実に懐かしい思い出である。結局、出題された問題はHerpes simplex virus-1について述べよという意外な問題だったが・・・
でもこの時は、すべてが日本語だ。今回は全て英語。この時の比ではない。。。

最終試験は8時10分前にはスタートした。
どんな問題が出るだろうかと皆が眠そうな目で答案用紙を見る。

すると・・・

中間テストと全く同じ問題・・・

"お前ら授業真面目に出てナイスプレゼン(毎回、プレゼンする必要がある)ばっかりだったから、今回はすごく簡単な問題にしてやったから(笑)”

ということで、私の1週間はあっけなく終了した。

いつもしっかり準備すると、肩透かしを食らうという今までの人生の縮図がそのまま再現された瞬間だった。

そしてこの日、2時間のテスト終了後、即患者さんの治療(しかもシビアな自発痛があるイマージェンシーからの下顎小臼歯のケース)が入っていた。しかも彼女は怖がりで笑気を使わないと治療ができない。またいわゆるドラッグの常習者とのことで、麻酔が効きにくい。しかも私は寝ていないのでこの時maxに眠たかったので、まさにお互いが最悪のコンディションで治療に臨んだわけだ。

笑気をし、伝麻し、露髄しない程度にコンタクトのカリエスを取り、しかし縁下になり出血し、止血し、グラスアイオノマーで隔壁作成し、その間、笑気が切れてボンベを数度交換しつつストレートラインアクセスし、と思えば隔壁が脱離し、再度隔壁を形成し、やっとの事で作業長を決めたところで、私が落ちそうになったのでextripationのみ行い、Ca(OH)₂貼薬し、仮封して強制終了させていただいた。伝達麻酔が効きすぎて顔面半分がパンパンになってる感じがするとクレーム?を受けるが、鏡を見せて納得。彼女はまだ22歳なので歯よりもそこが最も気になるようだった。

そして今日の午後13時からも根が異常に長い上顎大臼歯の治療(作業長がそれぞれ23mm以上)、しかもこの患者さんが”もう俺はここに来たくないからなんでもいいから今日中にさっさと終わってよ忙しいから”、というものなんで、北向きの私はそう言われると意地でも”きちっと”何時間かかっても絶対終わるまで止めないという気持ちになり(笑)、Root Zx miniが治療中に故障するアクシデントとに見舞われようが、福岡から郵送してもらった元祖Root ZXをロッカーから持ち出して、レングスコントロールをしつこく、何度も、作業長-0.5mmとなるようにwire filmと見比べながら、これでもかと4根管全て理想的なレントゲンが得られるまで何度も調整し、根管充填して終了したのは夕方6時であった。気が付いたらApicoectomyをしていたBig Brotherのホセと私だけがクリニックに残されたのだった(笑)。

介助についてくれた学生さんには申し訳ないが、私は一度やると決めたら絶対に引かない人なんで、彼のHappy Fridayをもしかしたら潰したかもしれないが、director、Fuculty、そしてこの介助の学生さんからの" Great job!”の労いの言葉で少しは自分が報われた気がした。

そして今、自宅でこの文章を打ち込んでいるのだが・・・全く眠たくない。
アドレナリンがまだ放出されているようだ(笑)。
もうコロナを3本も飲んだのに・・・

とはいえ、来週のliterature review、統計学のテスト、薬理学の再試とレポートに今週末も忙殺される。

この2週間は人生で経験したことのない、殺人的スケジュールだ・・・これに並行して患者さんの治療がガッチリ入っているのでそれもきつい。

これがいわゆるレジデントライフというやつなのだろうか?

私は、本当によっぽど留学したくてたまらないという人以外には、北米の大学院、歯科専門医プログラムへ行くことを初めて勧められないという気持ちになった。

地獄に落ちる覚悟があるなら・・・これほど”虎の穴”な場所はない。。。

生半可な気持ちでくると後悔することだけは、太鼓判を押そう(笑)。


2014年12月4日木曜日

診査、診断とレアキャラ化?している点について・・・

今日は1日中クリニックの日。
午前と午後に新患を2人見ました。

午前中の患者さんは15歳ヒスパニック系女性。
#13(左上第2小臼歯)に自発痛があり、来院。
実はUSCのクリニックでは、いきなり痛いから来てエンドに回されるということはほぼありません。紹介状を持っている人しか、エンドのレジデントクリニックの受診ができないからです。

じゃあ何故この女性は紹介状もなく、受診できたか?
それは本来の私の患者さんが無断キャンセルしたので私に時間が空いたので、スタッフがイマ−ジェンシーに電話して、エンドがらみの患者がもしいれば、エンドのレジデントクリニックに回すようにと、割り振ってくれたのです。

イマージェンシーは学生が治療します。そういう意味では、この15歳の女性はラッキー?だったかもしれません。

今日は時間が押せ押せだったので、まずスタッフが気を利かせてレントゲンを撮影してくれました。そこから診断に入るといういつもと逆のパターンです。

レントゲンからは#13に大きな虫歯があり、#14が近心へ移動しています。
これだけ見ると、全く普通のInitial RCTかという感じでしたが、いざ口腔内を見ると・・・#13は捻転している歯で、しかも#14が#13の虫歯へ向かい近心へ移動しており、虫歯は縁下まで到達。。。
レストラビリティがありません。
これをDr. Kallmanに伝えました。するとレントゲンを見るなり、
『(バイトウィングのレントゲンを見て)Akira, これのどこが抜歯なんだ。歯質が充分残っているじゃないか!エンドだよ、エンド!』と言いだしたので、
『いや#13は捻転していて、口腔内とレントゲンがかなり違うのでとにかくみてください。私は修復治療は無理だと思いますので、抜歯がいいと思います。』と食い下がりました。

そうして・・・I agree with you!となり、教授のロヘスも出てきて英語が話せない母親にロヘスが説明。とりあえず今日は抜髄のみ(extripationのみ)してCa(OH)₂を貼薬してGIで仮封してpain controlのみして終了しました。結局紹介元で抜歯になりましたが。。。
改めて、レントゲンと口腔内は違うんだなということを実感した午前中でした。

午後も午前と全く同じ展開でした。
予定されていた患者はキャンセル。同級生が妊娠していて気分悪く帰ったので彼女の初診の患者が私のところに来ました。
50代の男性。キューバ人。かなり神経質な方でリアクションが薄い方でコミュニケーション取りにくいな・・・と持っていたらいきなり俺には日本人の友達がいっぱいいてな!と喋り出すかと思えば、だんまりを決め込んだり・・・波がある方でした・・・。
彼の主訴は#24の痛み。エンドとペリオの双方に紹介状が出ており、予約の関係で先にエンドのクリニックに来たのです。#24は歯肉が退縮し歯根がだいぶ露出。cold testは歯根を避けて行いましたが反応はnormal。電気歯髄診でも正常に反応しました。打診痛はありましたが、ポケットが深くこれはペリオによる炎症が引き起こしているもので、Periapical tissueはエンド的には正常と考えました。レントゲンではPDLが肥厚しています。バイトさせるとフレミタスを感じます。エンドでなく、ペリオの問題が疼痛の原因です。

疼痛は歯肉退縮による知覚過敏なので、エンドの治療はいらないという旨をDr. Schechterに告げ診断に了承を得てから、患者さんには痛みの原因は、ペリオが元であり、エンド的には抜髄は不要であること、まずペリオの治療を行うこと、しかしペリオの治療後(ペリオの治療がどこまで行くかどのような行われるかわかりませんが。。。)も痛みが変わらないようであり、その痛みが日常的に我慢できないものであれば再び、エンドのクリニックで診査、診断した上で、かつあなたの同意が得られれば抜髄しますという説明をし、患者さんはペリオの予約を取りに行きかえりました。

午前も午後も診断のみでしたが、診断でエンドが不要であることを告げる時の説明がまだまだしっくりいきませんでした。なんせ言いたいことを瞬時に英語にせねばならず、まだまだダメだな・・・と今日は少し落ち込みました。

アシストについてくれたDDSの学生さんにも悪いことをしました。
彼女はわざわざ日本人の私を目当て?に来てくれたので・・・。
(エンドの診断から根充までを見学し、アシストすることがノルマとして必要な為)

実は最近、何人ものレジデントから"学生がAkiraのこと(エンドのレジデントの日本人ってどこにいます?見学したいんだけど。)をよく聞いてくるんだよ、お前人気あるな?(笑)”と言われ、今まではなぜかインド人に人気があったのですが、最近は国籍関係なく色々な学生がアシストについてくれるので、すごく助かってたんですが・・・

おそらく、DDS studentには、日本人レジデント(しかもエンド)が珍しいのだろうと思います。レアキャラなんでしょう(笑)。

実際、そんなにたいしたことは決してしてないんですがね・・・。不思議です。。。

2014年12月3日水曜日

日本のエンド=オーバー、米国のエンド=アンダー?

久しぶりにこのブログも更新です。
最近はテストで忙しく臨床の話を書く時間がありませんでした。
もう12月ですね・・・1年は早い。
このブログを始めたのは5月末です。
それからもう7ヶ月。時は早い・・・。

さて、今日は午前中の患者さんが無断キャンセル。したがって患者さんがいなかったはずだったのですが、同級生のサウジアラビア人がいつもの(笑)寝坊?してon timeに来れず、彼の患者(ペルー人50代女性)が私のところで初診になりました。

彼はすごくいい奴なんですが・・・いつも時間通りに来ない(笑)。必ず30分〜1時間は遅れてきます。

そして授業中はいつもipadで動画を見ているか、寝てるか(笑)。

ただすごいのは、当てられれば求められたもの以上の意見を自分で述べるところ。

サウジでは歯内療法専門で診療していただけあってそこはさすがです。

しかし、彼がいないのでスタッフ総出で、あいつはどこいった??の大合唱。

印象的だったのは、スタッフのボス格の方の御言葉で、『これでは(時間通りにこない)プロフェッショナルとは言えない。』という重いお言葉。

ただ、彼は一向に意に介さないようでした(笑)。

患者さんは7月にイマージェンシーで抜髄のみ(just extripation)をしている患者さん。仮封が脱離し、Perとなりひどい打診痛が生じていました。

根尖部歯周組織の炎症がひどいため、麻酔はカルボカインで伝達麻酔。その後頬側・舌側にセプトカインを2本使用し、ラバーダム装着。

こちらでは、Emergency, DDSプログラム共にCa(OH)₂の貼薬使用を認めていません(PGエンドのみCa(OH)₂は使用できます。)。

したがって、彼らはスポンジにクロルヘキシジンを浸して髄腔内にそれを入れて仮封をグラスアイオノマーでします。

しかし、考えても見ればスポンジ+クロルヘキシジンだと乾燥が不十分になります。そこによりによって感水性が強いGIを使うのですから、仮封としての耐久性には疑問符がつきます。私なら普通にCa(OH)₂+cavit使用しますが。。。Ca(OH)₂はこちらでは激安です。15$あれば買えます。しかもアマゾンから(笑)。

残存する仮封材とスポンジを除去すると、案の定髄腔内は汚染されていました。作業長を測定して今日は終了でした。

また今日はクリニックに日本人の患者さんが来ていて、日本の某歯内療法専門医(私達PESCJのグループではありません)が行った部位のやり直しを2年生のレジデントがしていましたが、治療前にトランスレートを頼まれました。

曰く、日本とアメリカで歯内療法の違いがあるのか?もっと詳しく言えば、日本はオーバーを好むが、アメリカはアンダーを好むと聞くが事実か?というご質問でした。

日本の歯科医師がオーバーを好むわけではありませんが、ここ福岡県ではかつて保険診療での根管充填・加圧加算はレントゲン的根尖まで根管充填材がピタッと入っていないと加圧加算を認めないという文化がありました(今でもあるのでしょうか?)。おそらく一部は、その名残、残遺から、日本人歯科医師がエンドではオーバーを好むというのはきていると思います。

私はその患者さんに、

"日本でもオーバーを良しとしない歯内療法をするグループもいます。私もそのグループに所属していますので日本人歯科医師=オーバー根充というのは誤解です。”と伝えておきました。

また、日本のエンド(オーバー根充)というのは西海岸のエンドの影響を受けているとよく言われますが・・・

USCはペーテンシーファイル推奨&作業長はApex-0.5mmです。これはApical ForamenからApical constrictionまでの解剖学的平均値に基づいています。

したがって、シーラーは逸出しやすく、テクニカルエラーで作業長が失われることも多いわけです。(特にリファレンスポイントの位置の設定、ストッパーの緩みに注意しないとすぐオーバーインストゥルメンテーションになります。)

最近私がなぜこちらは(西海岸は)オーバーが多いのか?ということを考えると、これが最大の理由の様な気がします。

頭ではみんなわかっているんです。オーバーはダメ。組織学的にも疫学的にも受け入れられない、と。

したがって、ケースプレゼンテーションで作業長測定、ポイント指摘、根充後デンタルがオーバーになると必ず教授陣からツッコミが入ります。

しかし理論と臨床は全く別物。臨床で作業長の位置をピシっと決めそれを維持するのは本当に大変です。

しかし、Apex-0.5とApex-1.0ではこうも差が出るのかと最近感じます。Apex-0.5mmは難しい!

要約すると、USCのエンドはペーテンシーファイル推奨、アピカルコンストリクションをなるべく解剖学的数値に近ずけようとする攻める傾向にあり、各種設定が甘いと作業長が失われやすい、それどころか根尖部の解剖学的形態を破壊しかねないという難易度が高い方法を行っているような気がします。

”西海岸派”として著名な、ラドルやブキャナンはちなみにApical Foramenまで根管形成していますが、USCではそのようなことは行っていませんし指導していません。根管形成は根管内に留めておけ!と言われますし、そのようなlitarature reviewも内容でした。また、もし根尖からオーバーしていればもう一回アピカルストップ作り直せ!と指示されます。

USCのエンドの作業長の設定方法を、日本のしかもGPの先生に勧めることは・・・私はできません。

やはりApex-1.0mmの方がテクニカルエラーを保証してくれるという意味では安心感が強いです。圧倒的にオーバーinstrumentationが少ないですから。

おそらく、日本でオーバーが多いのは西海岸の大学の影響ではなく、ラドルやブキャナンといった有名なエンドドンティストの影響だと思われます。重要なのは、彼らの意見はAAEや歯内療法専門医、あるいはペーパーの中で優位性を占めていないのだという事実を認識することです。(多分、こっちに来て彼らから話を聞いた誰かが日本で広めたのでしょう。。。そのあたり私はわかりませんが。)

ここでもう1度はっきりと言いますが、現在USCでは作業長=Apex-0.5mmです。そしてこの作業長は難易度が高い設定です。日本の歯科医師の先生には勧めません。

うちの代診には、APex-1.0mm。たとえ2mmアンダーになっても問題無しと教えていましたがこれは今でも変わりません。

また、ラドルやブキャナンのようなApical Foramenまで根管形成する方法は根尖部を破壊して予後を悪化するだけなので止めましょう。

とにかく鍵は、APex locaterでApexを指す位置でReferece pointからApexまでの距離をなるべく正確に測定し(そのためには極力大きなファイル>#15を使用することを推奨します)、そこから1mm引くことです。(無論、ラバーダムなどは必須ですが)

これさえ守れば、トラブルは大きく減少します。

さて、その日本人の患者さんはよく勉強してここのクリニックに来てるんだな、と感じました。

オーバー根充=根尖部解剖の破壊ですから、多くの疫学的調査で示されているように予後は芳しくありません。

彼女はそこを心配していたのでしょう。

ただ、その東京在住の日本人歯内療法専門医というのは患者さんの話を聞く限りどうも、明らかにGPのような気が(笑)・・・

まあそこは置いておいて(笑)、担当した2年生レジデントはこちらで既に開業しているベテラン歯科医師。

彼のエンドは私は好きです。なぜか。生物学的な侵襲を極力与えない術式を好むので、私と考え方に共通点が多いからです。

途中経過を見ていましたが、めでたく遠心根の病変がある部位はpatentが得られていました。近心は根尖が石灰化&レッジあり&病変なしなので無理に開ける必要はなさそうでした。

というように、今日の午前中は大変忙しく働いていました。

午後からは、統計の授業のレポート作成です。

こちらは最近は、毎日雨。ようやく日本でいうところの秋が来たという気候です。

長かったこのセメスターも来週末で終了。

その後は日本に帰って、エンドの処置をする予定です。

(Tさん、同意書の件、もうしばらくお待ちください。)