2015年11月28日土曜日

Ni-Tiロータリーファイルは歯根破折を引き起こすのか?

アメリカは今日からサンクスギビングで街中静かである。

公立図書館もUSCの図書館も開いておらず、我々家族はパームスプリングスという場所(砂漠の街)に来て穏やかに時間を過ごしている。

来る途中、フリーウェイから見える数多くの風力発電は圧巻であった。



アメリカという国は、電気代が異常に安い。(どんなに使い続けても月30ドルもかからない)

それがなぜか?をうなづかせる光景であった。

こんなに広大で、資源が豊かで・・・

今更ながら米国と日本の差をまざまざと見せつけられた思いである。

私は一日中、プールや広大な芝生でサッカーに興じる家族を尻目に、一人ホテルで論文を読み込んでいた。。。寂しい。。。というか完全に家族からは人非人扱いである。。。

そんな中で、面白いテーマに遭遇したので今回は久しぶりにブログの更新を兼ねて紹介してみたい。

Ni-Tiロータリーファイルが市場に出現して以来、根管治療のスピードや効率は格段に進歩した。(1,2)

またその柔軟性からハンドファイルでは医原的な変異を作っていたがために達成が困難であった、”根尖部を大きく拡大すること”も可能になり、根尖部を大きく拡大すると細菌が少なくなることが知られている。(3,4,5)

さらにNi-Tiロータリーファイルは規格化されているので、それに合ったガッタパーチャを使用すれば根管充填も素早くできるし、術後のレントゲンも満足のいく像が得られることが多い。(6)

このようにもはや歯内療法臨床でなくてはならないものとなったNi-Tiロータリーファイルであるが、近年、ロータリーファイルを使用したがために歯根にマイクロクラックが入りそのことで歯根破折が起きるのではないか?という報告がJOEでもIEJでも多く見られるようになった。

例えば、以下のような報告をabstractで知ることができるだろう。

- ハンドファイルの方がロータリーよりもマイクロクラックが入らない(7)

- ロータリーでもレシプロモーションのものが、そうでないものよりもマイクロクラックが入らない(8)

- レシプロでもロータリーでも差はないし、どんなファイルを使用しても程度の差はあれ、マイクロクラックは入る(9,10)

- SAFファイルはロータリー、レシプロよりもマイクロクラックが入らない(11)

etc...

こんなにいろんな情報を言われると頭が混乱してしまうが、一体我々はどうすればいいだろうか??

ここで大事なことは、以上の報告の多くは抜去歯牙で行われているという点である。

例えば同じような問題の例を挙げると、外科治療時の超音波での逆根管形成があるが(逆根管形成で歯根にヒビが入る)、それらの多くはin vitroでの報告である。(12,13,14)

in vivoでは歯牙は周囲に骨、歯根膜で覆われているためそれがクッションになって歯根破折は起きない(超音波のパワーを大きくさえしなければ)という意見が支配的である。(15,16)

ではNi-Ti ロータリーでのマイクロクラックはどうか?といえば、そのほぼ全てが in vitro(抜去歯牙)での実験であるということだ。(9,10,17,18)

最もよく行われている実験が、根管形成して根を切断して、切断部位に亀裂が入っているかどうかを顕微鏡で見るものである。

しかしこの手の実験には多くの欠点が隠されている。

①根を切断する時マイクロクラック発生する可能性がある

②切断部分のみを断片的に二次元でしか検査できない。(3次元的評価ができない)

③抜歯された歯の年齢、理由が不明なことが多いのでそもそも与えられた歯の象牙質の質や密度に影響がある可能性

④根管形成、切断、断面の精査時に歯が乾燥していると歯は自動的に割れてしまう

⑤抜去歯牙を保存液に入れることで象牙質が変化し、乾燥する可能性

この中で最大の問題が④だ。

歯は乾燥していると図のように勝手に割れていく。






(Shemesh 2015 Endodontic Topicsより引用)

これでは、根管形成で歯が割れたのか、乾燥して勝手に歯が割れてしまったのか?わからない。

それでは、ということで歯を切断せずにメチレンブルーで歯根の破折の有無を見る研究もある。(19,20)


(Shemesh 2015 Endodontic Topicsより引用)

根切断の必要ないのでそれによる破折のリスクを下げることができる。ただし、歯根が乾燥していると勝手に割れていくので、そうならないように工夫を施した実験も散見されるが、人体の口腔内とは規格が違う。

それでは、μCTで、レントゲンにより精度高く歯根破折を確認してみようという試みがなされている。(3つしか文献はない→21,22,23)

μCTを用いれば、歯質を破壊することなく破折を確認できるかもしれない。

このμCTでの調査(3つの文献)での結論は、Ni-Ti Rotaryを使用したからといって破折が増えたという結論は得られなかった。

ただしμCT自体の解像度が破折を確認するのに不十分な可能性が指摘されているというのが欠点である。

そこで、Popたちはsynchrotron radiationを使用して(より解像度が高いμCTを使用)マイクロクラックの有無を調べた。(23)


(Shemesh 2015 Endodontic Topicsより引用)

すると・・・Ni-Ti rotary, のみならずレシプロを使用しても破折が確認されたという悲しい結果になってしまった。(しかし、なんと治療してない歯にも多くのマイクロクラックが存在した!)

しかしこの研究の最大の問題が、対象となる歯が乾燥状態で撮影されたかどうかが不明なのだ。

乾燥していると歯は自発的に破折することは先に述べた。

またμCTでマイクロクラックの有無を調べるためにレントゲンを撮るのに1時間もしくはそれ以上の時間がかかってしまう。

従ってCT撮影時は歯が濡れていることが必要だが、ここがはっきりと述べられていない。

その他、In vivoで唯一の研究がAriasらのカダバー(ご遺体)を用いたもの(24)だ。

下顎前歯を治療せず、ロータリー、レシプロでマイクロクラックの程度を比較した研究である。

結果はマイクロクラックの発生率に有意差がなかった。(しかし、なんとここでも、治療してない歯にも多くのマイクロクラックが存在した!)

カダバースタディの長所は抜歯不要、より患者の口腔内に近い環境(歯の周りに歯根膜あり)であるが、欠点はカダバーを保存する保存液により、象牙質の質と象牙質の物性に与影響が加わる可能性があるという部分であり、やはり完全に口腔内に近い理想的な状態であるとは言い難い。

さて私はこんな話を長々として何が言いたかったのか?

結論は、現段階ではNi-Ti rotaryファイルがマイクロクラックを発生させるかどうか?それが臨床的にどこまで問題になるのか?は不明(25)、ということである。

そうしたら何もできないじゃないか?!

もうロータリーを使用するのはやめよう!やっぱりエンドをすると歯が割れるんだ!という誤解を受けかねないので、ここで私の意見を述べるとしよう。

先に述べた、in vitroでの切断を伴わない研究では、ある一つの特徴が導き出された。

”作業長を解剖学的根尖部より1mm引いた位置に設定すると、マイクロクラックの割合が優位に少なくなる”(作業幅径はマイクロクラックに影響していない)(20)

というものである。

根管形成を行う際に、オーバー形成を避けた方がいい理由がここでも導き出されている。

また、もう1つの特徴が先のsynchrotron radiationの実験、カダバーの実験でもわかったように、根管形成されていない歯にもそもそもマイクロクラックは存在していた、という事実である。

残念ながら、なぜマイクロクラックが根管形成されていない無傷の歯にも存在していたか?はわからない。

現段階では、加齢による歯の変化、咬合による影響が考えられる。(24)

しかし、そもそも歯にはマイクロクラックが入っているのだ、と考えるのであれば、このことがエンドにおいてもミニマムインタベーションを意識した方向へと時代が向かわせているのは疑いがないところだ。

私の意見をまとめると、

①作業長はオーバーにならないように気をつける
②ミニマムインタベーションを意識した根管形成・洗浄を行う(これはテーマが飛んでしまうのでここでは述べない)

ということになる。

さて、ここから先は、来年2月の歯界展望に掲載する予定でいる。

チェアマンのDr.Rotsteinとこの点を来週議論する予定なので、楽しみに?していてください。

References

1. Short JA, Morgan LA, Baumgartner JC. A comparison of canal centering ability of four instrumentation techniques. J Endod. 1997;23(8):503-7.

2. Hata G, Uemura M, Kato AS, Imura N, Novo NF, Toda T. A comparison of shaping ability using ProFile, GT file, and Flex-R endodontic instruments in simulated canals.J Endod. 2002;28(4):316-21.

3. Siqueira JF, Lima KC, Mahalhaes FAC, Lopes HP, de Uzeda M. Mechanical reduction of the bacterial population in the root canal by three instrumentation techques. J Endodon 1999;25:332-335.

4. Card SJ, Sigurdsson A, Orstavik D, Trope M. The effectiveness of increased apical enlargement in reducing intracanal bacteria. J Endodon 2002;28:779-783

5. Baugh D, Wallace J. The role of apical instrumentation in root canal treatment: A review of the literature. J Endodon 2005;31:333-340

6. Zmener O, Banegas G.Comparison ofthree instrumentation techniques in the preparation of simulated curved root canals. Int Endod J. 1996;29(5):315-9.

7. Bier CA, Shemesh H, Tanomaru-Filho M, Wesselink PR, Wu MK. The ability of different nickel–titanium rotary instruments to induce dentinal damage during canal preparation. J Endod 2009: 35: 236–238.

8. Liu R, Hou BX, Wesselink PR, Wu MK, Shemesh H. The incidence of root microcracks caused by 3 different single-file systems versus the ProTaper system. J Endod 2013: 39: 1054–1056.

9. Yoldas O, Yilmaz S, Atakan G, Kuden C, Kasan Z. Dentinal microcrack formation during root canal preparations by different NiTi rotary instruments and the self-adjusting file. J Endod 2012: 38: 232–235.

10. Ustun Y, Topcuoglu HS, Duzgun S, Kesim B. The effect of reciprocation versus rotational movement on the incidence of root defects during retreatment procedures. Int Endod J 2015: 48: 952–958.

11. Hin ES, Wu MK, Wesselink PR, Shemesh H. Effects of self-adjusting file, Mtwo, and ProTaper on the root canal wall. J Endod 2013: 39: 262–264.

12. Saunders WP, Saunders EM, Gutmann JL. Ultrasonic root-end prepa- ration. Part 2. Microleakage of EBA root-end fillings. Int Endod J 1994:27: 325-9.

13. Abedi HR, Van Mierlo BL, Wilder-Smith P, Terabinejad M. Effects of ultrasonic root-end cavity preparation on the root apex. Oral Surg Oral Meal Oral Pathol Oral Radiol Endod 1995;80:207-13.

14. Layton CA, Marshall JG, Morgan LA, Baumgartner JC. Evaluation of cracks associated with ultrasonic root-end preparation. J Endodon 1996;22: 157-60.

15. Calzonetti KJ, twanowski T, Komorowski R, Friedman S. Ultrasonic root end cavity preparation assessed by an in situ impression technique. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod 1998;85:210-5.

16. Morgan LA, Marshall JG. A scanning electron microscopic study of in vivo ultrasonic root-end preparations. JEndod 1999;25:567-570

17.  Priya NT, Chandrasekhar V, Anita S, Tummala M, Raj TB, Badami V, Kumar P, Soujanya E. Dentinal microcracks after root canal preparation: a comparative evaluation with hand, rotary and reciprocating instrumentation. J Clin Diagn Res 2014: 8: ZC70–72.

18. Ustun Y, Aslan T, Sagsen B, Kesim B. The effects of different nickel–titanium instruments on dentinal microcrack formations during root canal preparation. Eur J Dent 2015: 9: 41–46.

19. Adorno CG, Yoshioka T, Suda H. Crack initiation on the apical root surface caused by three different nickel–titanium rotary files at different working lengths. J Endod 2011: 37: 522–525.

20. Adorno CG, Yoshioka T, Jindan P, Kobayashi C, Suda H. The effect of endodontic procedures on apical crack initiation and propagation ex vivo. Int Endod J 2013: 46: 763–768.

21. De-Deus G, Silva EJ, Marins J, Souza E, Neves Ade A, Gon"calves Belladonna F, Alves H, Lopes RT, Versiani MA. Lack of causal relationship between dentinal microcracks and root canal preparation with reciprocation systems. J Endod 2014: 40: 1447– 1450.

22. De-Deus G, Belladonna FG, Souza EM, Silva EJ, Neves AA, Alves H, Lopes RT, Versiani MA. Micro-computed tomographic assessment on the effect of ProTaper Next and Twisted File Adaptive Systems on dentinal cracks. J Endod 2015: 41: 1116–1119.

23. Pop I, Manoharan A, Zanini F, Tromba G, Patel S, Foschi F. Synchrotron light-based lCT to analyse the presence of dentinal microcracks post-rotary and reciprocating NiTi instrumentation. Clin Oral Investig 2015: 19: 11–16.

24. Arias A, Lee YH, Peters CI, Gluskin AH, Peters OA. Comparison of 2 canal preparation techniques in the induction of microcracks: a pilot study with cadaver mandibles. J Endod 2014: 40: 982–985.

25. Shemesh H. Endodontic instrumentation and root filling procedures: effect on mechanical integrity of dentin. Endodontic Topics 2015, 33, 43–49





2015年9月21日月曜日

USC Japan Program, エンドハンズオンコース

今週末は昨年に引き続き、USC Japan Programのエンドのハンズオンコースを手伝った。

ただ私はファカルティからもこの事務局からも何の連絡も数日前まで受けておらず、やはりいきなり来い!であった。(しかも場所も時間も何も知らない)

講師はDr.ラスティン、Dr.リービィ、Dr.バダーン、そして昨年卒業したDr.タリムの4人で私はトランスレーター。

私は彼らの講義を日本語に訳する係りで、ジョークとスラング以外はなんとか頑張りますという挨拶の後、6人の受講生の先生とともに講義・実習開始。

アクセス〜根管充填までを早足で駆け抜けたのでこの手の話が初めての先生には大変だったかもしれない。

しかし去年と違い、講義・実習とも非常にorganizedされていて見事なものであった。

聞けばDr.タリムが作成したとか。

さすが、彼はレジデントの時から非常に頭も腕も切れていたので、このまま日本に行ってもいい話をすると思う。

受講生の先生には、ボルテックスブルーを用いた根管形成、ブキャナン法(コンティニュアスウェーブコンデンセーションテクニック, CWCT)とシルダー法の2種類の方法が伝授されたが、それ以上に重要なことは根充方法によりアウトカムでの違いがないこと、ラバーダムを始めとする細菌感染の可及的防御・除去であるということが強調されていた非常に良い講演であった。

しかし拙いながらも彼らの講義の訳ができるようになるとは自分でも驚きであった。

しかもただ訳すだけではなく、ここで一番言いたいことはこういうことでこう伝えた法が分かりやすだろう・・・とサマライズして行ったので、自分の頭の勉強にも非常に役立った。

また実習中、初めてと言っていいだろう、私はチェアマンのラスティンと初めて1対1で30分程度話をした。

このコースに対する彼の意見は、日本のGPの参加者のレベルがわからないので何を基準にして指導をしていいのか分からない(事前の情報が不明)ので困る、というものであった。

そして彼の本心を私が代弁すれば、願わくばエンドに興味ある先生だけを集めてのセミナーでやってほしいというものであった。

事実、この実習では抜髄の根管形成〜根管充填ができることを目標にしているので顕微鏡を用いた実習ではない。

これはラスティン曰く、”受講生が全員、マイクロに慣れていれば良いがどの程度か分からないので、顕微鏡の取り回しに時間をかけれないので”ということであった。

そして、もしお前が日本からエンドで歯科医師を連れて来れば、アドバンスコースとしてUSCのエンドのクリニックを使ってマイクロを用いた実習をやっても良い、企画書を持ってこいと言われたことだ。

ということで2年間、無報酬・無連絡のボランティアで携わってきたこのエンドのハンズオンコースですが、私が手伝うのもこれで最終回。

来年以降のこのコースの日本人の受講生の方は、”エンドのことがわかっている日本語通訳者”がいなくなるので少しタフかもしれませんが頑張って下さい。

私は帰国後、ラスティン先生が言われるようにもう少し内容を精査+グレードアップしてUSCのクリニックでマイクロを用いたUSCのファカルティによる講義(1日)+実習(2日)を合わせたエンドだけの3日間コースを企画しますのでまたそれはいつか告知できればいいなと思っています。

最後に、コースに参加された先生には講義のスライドをPDFで送りますのでしばしお待ち下さい。

2015年9月8日火曜日

歯科医師の方へお知らせ

今回は、歯科医師の方向けにお知らせです。

NYU(ニューヨーク大学)歯学部補綴科大学院卒で、米国補綴専門医の白先生と今年も年末に歯科医師向けセミナーを行うことになりました。



今年はUSCの歯内療法科で行われている診査、診断のプロトコールや考え方を、ABE(American Board of Endodontics, AAEのボード認定試験を取り扱うところ)のWritten Exam, Oral Examのガイドラインやこれまでの Annual Board Review Course and Scientific Updateをベースにして、エンド領域における診査診断についてGPの先生向けに3時間お話しさせていただく予定です。

年末とお忙しい時間で恐縮ではございますが、よろしくお願い致します。

2015年9月6日日曜日

歯科医師としての生き方

開業に向けて物件探しを遠隔から行っているが、これがなかなか難しい。

これはこの地域で誰もしたことがない開業をしようとしているからであるのはもう理解している。

何も事情を言わずに相談すると、折角紹介されても坪数が30前後だったりする。
通常、我々Endodontistが開業するには15坪もあればいい。
ユニットは1台。(もちろん、リコールや器具のセットアップのために、ユニットが2台あるに越したことは無く2台が置けるギリギリが15坪だそうだ。)

しかし、この15坪前後で歯医者に貸してもいいよというテナントが福岡にはほとんどないのだ。つまり、もしそうした条件に該当した物件があれば、急いで決めなければならくなる。帰ってゆっくり探せばいいじゃないか?と言われることもあるが、全財産をUSCにつぎ込んでしまったため、そのような悠長なことは言ってられないのだ(笑)。

また、内装ももう一つの最大の問題だ。
歯科の内装というと、坪50~70万が標準だという。
居抜き開業しか経験のない私にとって、この金額は高過ぎる。
しかも15坪のような狭いところだとその坪あたりの金額がさらに跳ね上がるという。
言葉は悪いが、crazyだ。
これをファカルティ連中に話すと、お前はどんな豪華なモーテルを作る気だ?と茶化されてしまった。
なぜなら、Endodontistのクリニックには、派手な外装も内装も要らない。
それが証拠にUSCのGrad Endoのクリニックを見ればわかるが、真っ白い壁にA-decの百数十万の簡易なユニット、レントゲン、そして顕微鏡。スピットンも無い。患者さんは排唾菅で口を濯ぐ。
私は意を決して、歯科専門ではない業者を探すことにした。そして配管に関しては今までもお世話になってきたHさんになんとか頼むしかないだろうと思っている。

また、ものすごくいい場所にあっても歯科には貸さない(同業者が既に入っているor水回りの工事が必要な業者は歯科に限らずお断り!)というテナントオーナーが多く、場所をもう少し広範囲に設定し直すことにした。
しかし、我々EndodontistはGPと競合することは100%無い。修復治療もメンテナンスも無い。補綴もインプラントもしない。保険診療もしない。衛生士も必要ない。最悪、自分だけでもできる。ただその事実は、アメリカならまだしも日本では誰も理解できないので、もはや説明することも諦めた。

またいわゆる歯科医院の居抜き物件も紹介された。
その中で印象的だったのが、そりゃあものすごい一等地、外観も内装も一流ホテルか!?と言わんばかりの歯科医院。

HPを見ると、審美歯科に重点を置いているようだったので、この一等地でなぜ売却?と思いきや、家賃がものすごく高いし、坪数も僕の必要なキャパをはるかに超えている。
しかし、不動産屋さんも今まで私のような開業を試みる歯科医師に当たったことなど無いので、本当に15坪前後でいいのか?と何度も確認されてしまう。彼らを随分と困惑させてしまっているのだろう。

とそんな矢先に、なんと素晴らしい物件が見つかった。

私の必要な坪数を満たしていて、歯科OKである。
しかも比較的安いし、私がかつて住んでいた生活圏にありそこなら駅との行き来も問題ないだろう。
ただ問題は人気がある場所なので他に流れる可能性も十分にあるということ。。。
タイミングがいいのか悪いのか。。。

また、機材に関してだが、基本的に今USCで使用しているものを全てそのまま持ち帰るので、必要なのはレントゲン、ユニット、オートクレーブのみである。
これはリースを組んでしまえば、どうやら私の開業は1000万以内で、内装の額次第ではそれ以下でなんとかなりそうだ。

CBCT、マイクロもプロエルゴを揃えたいところだが、プロエルゴはこちらで中古を探してみようと思っている。CBCTは近くに撮影できるところがいっぱいあるので、ルーティンな撮影を考えていない自分としては、敢えて開業時から揃える必要はないと考えた。というより、手持ちがないだけか。

機材(ファイル、超音波チップ)はレジデントでいる間に最大限、最安値で買えるだけ買って持ち帰るつもりだ。

12月には物件を決定し、内装工事を発注。4月に完成させ、そのままプレ開業し7月に本格スタート。(と勝手に決めているだけだが)。

いよいよ、私の歯科医師人生は北米大学院レジデントを経て第2ステージ、後半に突入する。

学生時代は全く歯科に興味が無く、なぜお前はここにいる?状態だった。
勤務医になり風向きは変わるどころかより悪くなり、私がこの仕事に目覚めたのはほんの10年前。あの時は若かった。。。
今の自分から見てあの時の自分は客観的に見ると、非常に背伸びをした感じに見える。
GP時代は、様々なものと戦わなければならなかった。
より良い治療をめぐる、患者さんや同業者との戦い。
そうした戦いを経て自分自身わかったことは、私はスーパーGPとしての才覚も才能もないということだった。

私の友人の歯科医師の中には本当にすごい人がいる。

スタッフを何十人と抱えて、モチベーションを高め保険も自費も無く、まさにチーム一丸となって歯科医院を繁盛させている。行列ができる〜ではないが、本当に敬服に価する。

また同じ福岡では、”本当の”インターディシプリナリーアプローチを行っている歯科医院がある。患者さんに全てのレベルの診療科目を提供されている。私がインプラントや補綴が必要になれば、間違いなく患者として通うだろう。この歯科医院はきっとこれからの福岡の歯科界をリードするに違いない。

しかし、私は?といえばどうやらこうしたことを実現・実行する、才覚もないし何せモチベーションが全く湧かなかった。
他人は変わらない、が私の持論で、目標が違う人間同士が集まっている歯科医院という集合体では、どれだけ妥協して着地点を見つけられるか?しか彼らとの交渉の余地がないなどと考えていたからで、それは今でも変わらない。いろいろな人に勧められて、いろいろなコンサルタントと呼ばれる人を起用し、いわゆる医院の構造改革を試みたが、結果は全く出なかった。

どうやら、私はどこかの元・捕手のように月見草のようにひっそりと決して主流派になること無く、少数精鋭でニッチな存在感を発揮する方が性に合っているようだ。

この10年で私は、歯科医師としての私の生き方、心地よさを見つけたように思う。
もし10年前に業者に勧められるまま某都市で1億近いお金を借りてあのまま開業していたら・・・私は今ここにはいなかっただろう。この第2ステージは自分らしく歯科医師人生を過ごしていこうと思う。

2015年8月30日日曜日

患者さん・歯科医師の方へお知らせ

福岡市・東区のまつうら歯科医院の理事長ブログでもすでに告知しましたが、私の方から患者さん・歯科医師の方へご報告があります。

1つは、帰国後のお話です。

色々検討した結果、福岡市でまずは歯内療法専門歯科医院を新規で立ち上げることにしました。



最大の理由は福岡市・九州地区には、米国歯周病専門医、米国補綴専門医はいますが、米国歯内療法専門医はいない、ということです。

また、歯内療法専門の歯科医院もありません。

それによってこの瞬間も多くの患者さんが、歯内療法の問題解決を必要としているのにもかかわらず、それを受け入れる場所がないのです。

地域差(東京との差)、世界差(米国との差)を埋めていくため、この地で頑張ることに決めました。

正直いうと福岡・九州で歯内療法専門医の需要がどれだけあるか?未だ未知数で不安な部分も大きいですが、

USC歯内療法科が掲げる、

『文化的・人種的な違いをもったレジデントを、それぞれの国・地域で歯内療法の水準を向上させる指導者、メンターとして資するように鍛える』という理念に後押しされ頑張ろうと決めました。

米国での歯内療法専門医の一般人への認知度、知名度、重要性、高待遇、子供の教育を考えるとこちらに残ることも正直、考えました。

また、新規事業に否定的な日本に比べ、すべての人に平等にチャンスがあるのはアメリカの本当に良いところです。それも魅力的でした。

しかし、最終的には上記のような理由(使命感)により、私は日本に戻り福岡・九州地区でまずは歯内療法の重要性を認知してもらうべく、尽力することにしました。

新しい医院の名前も決めました。

最初はシンプルに、“松浦歯科医院”としたかったのですが、原田のこの医院もまつうら歯科医院の為、混乱が生じるとまずいと思いこの名前は断念しました。

また愛着があった、“まつうら精密歯科医院”の名前の復活も考えましたが、もはやこの文言は精度の高い補綴や修復治療を指す言葉として歯科界でも十二分に認知されてきたと思いますので、歯内療法専門医として紹介を歯科医師の方々から受ける身としては誤解を与えるのは不適切と考え、この名前も断念しました。

英語名やカタカナも考えましたが、どうしてもピンと来ず、色々と考慮した結果、歯内療法のみを行う歯科医院として認知していただこうという趣旨で、

まつうら歯内療法専門室

としました。

とはいえ、まだ保健所にも相談していませんしこれが認められるのかどうなのかは、正直未知数ですので今のところ仮称とさせていただいています。

HPも簡素ですが、自分で作成し完成させました。→ まつうら歯内療法専門室 HP

ただしこれは告知用のHPですので、6月なかば以降に新しいHPを公開していこうと思います。

厳密には6月のcertification授与式まで、Endodontist(米国歯内療法専門医)ではないですので。

開業までのタイムスケジュールですが、今年の12月に帰国してそのまま銀行と交渉し、来年の4月中での開業を目指しています。

何せ、自分の生活すべてをかけてアメリカに来ましたので、帰国後すぐに働ける状況にしておかないと冗談抜きでまずいことになるからです。

4月は大学院の春休みが2週間ほどありますので、その時から診療しようと考えています。(プレ開業)

また大学院は来年の5月13日で卒業となり、6月半ばの歯内療法専門医の授与式まで雑務等を行わなければなりませんが、それまでにすべての雑務を終了させる予定ですので、5月半ばに日本に一時帰国して再び診療、そして授与式前に再び渡米、7月頭に帰国、そのまま日本で診療という形を予定しています。従って本格的なスタートは7月からとなります。

ただ、4月、5月〜6月も月の半分は診療いたしますので、4月に開業としました。

診療場所ですが、福岡市内某所を予定しています。実は本当にまだ決まっていません。

東京と違い福岡には私が希望するような物件がなかなかありません。

現在、物件等を探していただいていますのでじっくりと考えたいと思います。

診療時間は、USCと同じく月〜金までの8:30~17:00で土日祝日は休診とさせていただきます。

また、USCと同様に完全予約制、ユニットは1台で患者さんが診療室で別の患者さんと顔を合わせないようにし、1人1人の診察・治療に十分な時間をかけた診療を行いますので、完全自由診療とさせていただくことにしました。

詳細が決まり次第このHPで告知していきますので、よろしくお願い致します。

さて、2つ目の告知は12月帰国一時帰国に伴う理事長診療です。

12/5~12/30まで日本に一時滞在する予定ですので、歯の痛みや根管治療の問題でお悩みの方の診察を原田のまつうら歯科医院で予定しています。

ご希望の患者さんは受付まで、ご連絡ください。

ただし、歯内療法以外の診察は行いませんのでご了承ください。

また、この12月の診療をもちまして私が原田のまつうら歯科医院で診察するのは最後とさせていただきました。

原田には本当に色々な思いがあります。

個人的な事情で勤務を止めて、開業しようと決意したもののお金もコネも財産もない私が開業まで至るには実に困難を極めました。

色々な方々の支えで小児歯科専門歯科医院を譲渡させていただき、現在の診療形態に変えていくのにも非常に苦労しました。

私の父は2007年に還暦を前に亡くなりましたが、生前に “ここ(原田)がずっと続いてくれるといいけどなあ。。。” とよく言っていたのを今でも思い出します。

この思いを考えると複雑ですが、専門医として前を向いていきたいと思います。

ご来院いただいた患者さんには大変感謝しております。

今まで本当にありがとうございました。

私と某所でお会いすることがないように(笑)、原田でメンテナンスを頑張りましょう。

さて3つ目は歯科医師の方への告知とお知らせですが、今年の年末、東京でNYU(ニューヨーク大学)補綴科出身で米国補綴専門医のの白先生と再びコラボレーションで補綴・エンドセミナーをすることになりました。

内容は留学情報と、USC歯内療法科プログラムの特徴などを話す内容になっています。

内容は気軽に聞ける内容となっていますので、よろしければご参加ください。(詳細は、来月の歯界展望で広告されるとのことです)

以上、長々と失礼致しました。

2015年8月25日火曜日

留学希望者の方へ〜留学前に卒後の進路を真剣に考えよう

現在、帰国してからの開業を模索している。

銀行、税理士、諸先生方etc...と色々な人と相談し、自分の進路は固まった。

しかしながらここに来て壁にぶち当たってしまった。

問題は銀行とテナントである。

銀行は当初、福岡でやるなら喜んで協力します!であった。

裏を返せば、福岡以外だと認めないということ。

しかし、実際に話を振ると、現時点では海のものとも山のものとも知れぬ、”歯内療法専門歯科医院”の開業への投資を完全に渋っているようで、私としてはハシゴを外された気持ちだ。

そこに行き着くまでに多くの葛藤があったのにもかかわらず、である。

私は両親が歯科医師でも何でもないただの一般人。

悲しいかな何の財産もない。

留学費用はすべて自分で手出ししている。

誰かが私を救済してくれることもない、叩き上げの1代目だ。

そのため、帰国後すぐにゴージャスなエンドの歯科医院オープン!というわけにはいかない。

華美でない標準的なUSCのGrad Endodonticsのような質素な感じで十分にいいのだが、それさえもクリアできなさそうである。

つまり、現在手持ちのもののみで必要最小限度の開業を再び迫られることとなりそうだ。

プロエルゴは取得したかったが・・・。。。

増設に備えたかったが・・・

全ては夢と消えそうである(笑)。

しかし、それでも与えられた条件のなかでなんとかしなければならない。

すると、方法としては

1. 駅周辺で10〜20坪のテナントを探す

2. 駅周辺で10〜20坪の居抜き物件を探す

3. その上で格安の内装業者を探す(配管のみは歯科関係者にしてもらう)

4. ユニットから何からすべて中古かリース

という選択肢しかないので、それを元にして以前から目をつけていたすべてのテナントの状況を不動産会社に問い合わせたが・・・私が予定していた場所は結論からいうとなんと現時点ではすべてNG!!であった。

テナントの問題が発生したのである。

その駅周辺のテナントはオフィス用に建てられた古いものが多いので、貸室内に水回りが必要なクリニック(医科・歯科)、エステ、ネイルサロン、リラクゼーションマッサージなどは貸室内に水を引くことをオーナーが拒否(もし水漏れして、下の階に水が漏れた場合、パソコンなど、OA機器が壊れてしまったら保証ができない、と危惧)。

もう一つは一つのテナントに歯科を何件も入れたくない(その先生との競合?をオーナーが嫌がる・・・歯内療法専門医院は他のGPと競合には全くならない職種なのだが・・・説明しても違いは一生わからないだろう。。。)ことだという。

また不幸なことに、この駅周辺では10坪前後のテナントで開業していた歯科医院というものがほとんどないため、この駅周辺でやるには20〜30坪の許可された場所で開業するしかなさそうである。

幸いまだまだ時間があるので、不動産屋は色々と探してくれるということだが、日本にいないので十分な検証ができない。。。

さあ、先が見えなくなってきた(笑)。

そうこう考えると、すべてをひっくり返したくなるのはなぜだろうか?(笑)

カリフォルニアは住むには最適の場所だ。

人は明るい、多様な人種、温暖でマイルドな気候。

今まで暮らした中で最も住みやすい。

子供も英語を中心に会話するようになってきた。彼らの将来も考えなければならない。

しかもこちらで生活していれば、州ごとに職種ごとに最低年収が定められている。

例えば、某州ではEndodontistの最低保障年収は日本円で5000万だという。

しかも週休3日だ。

こちらでは、Endodontistという仕事が誰からも認められている。

タクシーの運転手のような歯科とは全く無縁な一般人でさえも、『お前、将来は確実だな!おめでとう!』というリアクションである。

それを思うと、こちらに残るという選択肢も考えた。

こちらで考えられる進路は、

①どこかに就職

②自分で開業

の2つであるが、②はまず無理だ。従って①ということになる。

実は仕事を見つけるのはかなり容易で、数件の歯科医院を紹介してもらったくらいである。彼らはビザのスポンサーになってくれる。

しかし、最大の問題はビザである。

外国人は何らかのビザがなければ、母国に帰らなければならない。

もし、このままの滞在を希望するなら歯科医師の場合、多くはH1bビザ(移民法が規定したProfessionalに発行されるビザ)が必要である。

アメリカが景気が悪かった時代、H1bビザは問題なく取れていた。

しかし近年アメリカは好景気で、今年、去年、一昨年は85000人という枠以上の外国人応募者が殺到し、抽選である。(今年は27万人が殺到)

クジに自分の運命を任す猶予は私の場合、ない。

アメリカの景気が悪くなることを祈ってもどうしようもない。

また頼みの綱のOPTビザも日本の大学院を卒業して学位を持っていない私は対象外。

しかもこちらに残るには、NBDE(ナショナルボード)Part1&2、WREB(西海岸で働くための試験)をパスしなければならない。

大学院で死ぬほど忙しい現在、NBDEを勉強する余裕はもはやなく、しかもNBDEはTOEFLと同じように有効期限があるため、今の私にはこちらに残るために何年もクジに人生を任せるという選択肢はもはやない。

それでは、ファカルティになるのは?といえば、これもエンドの場合は難しく、しかもかなり不安定な(上の気持ち一つでいつでも切られ飛ばされる)ため、それもまた時間の無駄というものだ。

以上勘案すると、やはり日本で何とかして開業しなければならない。

この結論を導き出すのはもう何度目か・・・。


さあ、今のところ私の条件は

① 某駅周辺で徒歩10分以内でミニマム開業

② 大きな坪数の居抜き物件で初期投資を低く抑え(しかし月の負担は大きくなるが)開業

③ テナントが豊富な見知らぬ場所で居抜きで開業

④ 自院(原田)で数年、歯内療法専門医として勤務して開業

⑤ ①〜④かつ/または 大きな法人でお抱え専門医として雇ってもらう(どこにそんな需要があるのだか)

の5つの選択肢しかなさそうだ。

これ以外にもやらなければならないことが多々あり、途方に暮れているという現状。

1つ1つ、この縺れた糸をときほぐさなければならない。

もう少し根気よく、①を続けていかなければ・・・・

さて、こんな私のような失敗?や葛藤をしないためにも留学希望者には卒後のプラクティスを明確にして渡米されることをお勧めする。

下世話な言い方だが、大学院への投資は回収しなければならないので。。。(短期のコースやCEコースとは訳が違う)

もしお抱え専門医として迎えていただける余地があれば、いつでもお話しお待ちしてます!

2015年8月6日木曜日

USCでの初めてのApicoectomy

今日はUSCに来て初めてのサージェリーの日だった。
午前中に#8の歯根端切除術。
午後に#3のRoot amputation。
日本で外科の経験はあるものの、外国人の外科治療だしやはり勝手が違うだろうから最初の日はとにかく少し緊張した。

USCでの外科治療の特徴は、まず外科前にCBCTを必ず撮影。その後、ファカルティと以下のようなことを議論しパスすると外科のGoサインが出る。

USC Grad Endo: Topic to be discussed when surgical case is presented to a faculty member
1. Pre-op preparation (making a foundation for success)
a. Diagnosis-options/informed consent, med bx., restorability
b. Retreat or not.
c. Oral hygiene instruction, cleaning o f surgical area, chlorhexadine rinses before and day of surgery etc.
d. Local cleaning while anesthesia is taking affect

2. Set-up-
a. prepare for all contingencies
b. thoroughly check set-up for completeness and all devices are working
before seating the patient.

3. Anesthesia & pre-op meds (decadron, nsaid's, antibiotics,others)

4. Flap design and anticipated suturing technique
a. Vertical releasing incisions, yes or no and if yes where
b. Horizontal: lntrasulcular full thickness, Luebke-Ochsenbein
c. How to raise flap
d. How to handle papillas

5. Location of apex
a. What does operator expect to see when flap is raised
b. Strategy for locating apex

6. Apicoectomy-yes or no and why
a. How do you know i f apicoectomy is complete?
b. Inspection ofroot with explorer, fiber-optic and/or metheline blue.

7. Removal oflesion-Biopsy! (prepare patient for cost).

8. Hemostasis- epi, Ca(S04), Fe(S04), pressure etc.

9. Apical prep-yes, no and why
a. depth
b. isthmuses
c. in canal with gutta percha
d. in non treated canals

10. Apical filling material- when, what, how mixed and placed
a. MTA
b. SuperEBA
c. Bonded composite
d. Xxxxx

11. How, whys and when for different suturing techniques and suture materials and needles.

12. Post-op instructions and meds.

13. Follow-up appointment plan

外科中は必ずファカルティがそのレジデントに張り付き、術中も容赦なくステップづつ途中で止められ確認・必要があれば修正をせまられる。

しかも最初は必ずDr. Shectherと行わなければならず、彼は外科中普通に止めてブラックボードに呼び出しそうじゃねえ!こうだ!と指示を出してくるので治療時間が倍以上かかってしまうのでみんなナーバスになる。

Dr. Shectherは切開、剥離、骨削除、レトロプレップ、MTA逆根充、縫合と全てに渡って真横から指示を出してくるので患者の麻酔が途中で切れてしまうことが多い。
今日も朝の歯根端切除術は9時半から始まり終わったのが12時だった。



この歯はもしアマルガムがなければもっと短時間で終わっていただろう。
アマルガムを歯根端切除、逆根管形成でいかに除去するか?というのが今日の最大のテーマであった。

なるべくアマルガムを骨窩洞内に拡散させたくないため、またMTAによるシーリングの厚みを極力確保したいため、如何にアマルガムより上の歯根を切除せずにアマルガムをバーで削ることなく取り出すか?がポイントであった。

指示通り、アマルガムを削ることなく除去したがアマルガムが根管内に残存してしまった。



しかしこれを指示通り除去。ポストまで逆根管形成し、MTAで根充した。




縫合も顕微鏡下で行わなければならず時間を要した。
特に1次治癒を狙うため弁の断端と断端が揃っていないともう一回やり直しを宣告されるので高倍率で縫合のやり直しをせざるを得なかった。

今回は前歯部だったので、切開はlntrasulcular full thickness, Luebke-Ochsenbeinの混合であった。やはり縫合がpapillaにかかった場合、そこに針を通すのが非常にテクニカルセンシティブで途中で何度も止められてややイラっとした感は否めなかったが(笑)、こうして一つ一つのステップでああだこうだと指示されたことがなかったので非常に有意義であった。

USCでは卒業までに最低10の歯根端切除術を行わなければならない。
従って、午後のRoot amputationはrequirementに含まれない。
ただ例年、どのレジデントも20の外科をこなして卒業しているので症例数に関しては心配はなさそうである。

なんといってもUSCでは歯根端切除術はCT撮影費用を含めてもたったの150ドル!なので合理的なアメリカ人は再治療よりも外科を行いたいという人が多い。

ということで今日1日は非常に長かった。。。
このままゆっくり寝たいところだが、明日までに症例のケースワークをしなければならず今日もあまり寝れそうにない・・・

2015年7月20日月曜日

シルバーポイントとバイオセラミック

ここ数日、ロスは雨が降って湿気が非常に高い。


夜は寝苦しく、実に不快な毎日である。
院内もなぜかいつも効いているはずの冷房があまり効いておらず汗をかきながら診療している。

さて、こちらで治療していて日本ではお目にかかることが殆どないものの中の1つがシルバーポイントである。


シルバーポイントはJasperが1941年に提唱した根管充填材の1つであり(1)、銀で作られており、彼曰く、ガッタパーチャよりも使いやすくガッタパーチャで根充するときと同程度の成功率を有しているとされている。シルバーポイントはその硬さのために根管内に挿入しその長さをコントロールするのがたやすいとされているが、不規則な形態を持つ根管を充填して封鎖することができないのでリークを生じる。


もしもシルバーポイントが唾液や組織液と触れるとシルバーポイントは腐食することが示されている。(2)

この腐食した物質には毒性があり、根尖病変を誘発し根尖部歯周組織の治癒を妨げることが指摘されている。(3)

シルバーポイントは前述したように一定の硬さとしなりがあるため、根管形成の際に術者が設定した作業長に容易に到達するので、これが根管形成を不十分なものにさせてきた。
こうした歴史的経緯とその為害性から、現代の歯内療法において使われるスタンダードな材料から外れたのである。
シルバーポイントはシーラーとともに使用されることが基本だが、時には使用しないことがある。

日本でもしばしばシーラーを使用しない!という先生がいた。
私が勤務した時のこと、シーラーを使用しなくても予後はいい!シーラーは毒だ!と豪語されている先生がいらっしゃったが、すべての薬剤は毒性を少なからず持つが現存するシーラーはおしなべて生体為害性は極めて低い。(4)

また、Wuらの研究でも明らかなように(5)、シーラーを用いなければいくらレントゲン的に素晴らしい根充をしてもリークは容易に起きる。従って現代の歯内療法からすればこのような考え方は、 below the standard of careである。

シルバーポイントを除去する方法は様々あるが、一般的にシルバーポイントはコアマテリアルの中に埋まっていることが多く、極力それを傷つけないようにシルバーポイントだけ露出させたいのだがなかなかそういうシチュエーションには遭遇できない。
多くの場合上記のレントゲンのように、根管に埋まっていることが多い。
すると問題になるのが根管の中にタイトにがっちり埋まっているか、ルースかということである。ルースの場合は除去は比較的容易でシルバーポイントと根管の間の隙間にHファイルを抵抗があるまで挿入し、若干回して一気に引き抜く。しかしこの時根管にアンダーカットがあると除去できないので図の斜線部のようにアンダーカットとなる部位はあらかじめ除去しておかねばならない。


問題はこれが今回のように根管にタイトに埋まっている時である。
この場合、”隙間”を作らなければならないがこの隙間をどうつくるか?である。
ガッタパーチャであれば、迷いなく超音波を使用すれば良いがシルバーポイントの場合、超音波が触れると折れてしまう可能性がある。するとさらに深い位置でシルバーポイント除去を必要とするため、さらに問題は複雑化する。従ってどのようにtroughを作成するか?であるが、超音波を使用できないのでMunce barを使用した。

Munce barはもはや私にとってはなくてはならないものであり、今回もこの中の最も径が小さなバーでシルバーポイントとその周りに隙間をつくることに成功した。
するとシルバーポイントはプラプラと動いてくるので、Hファイルを使用する準備が整った。
#20ルースで抵抗感なし。
#25,30,35でも同様。。。
#40でようやく抵抗感をタイトに感じたのでここで少し回してHファイルを支点にしてテコの原理でPull-outした。




写真の黒い部分がcorrosion=銀が腐食している部分である。
この写真からもわかるように、根管の中は感染していたのだ。

確かにシルバーポイントでの根充は簡単かもしれない。
細く根管形成して、しなりがあるシルバーポイントをシーラーとともに突っ込めばいとも簡単に根充は終了する。

しかし・・・結果はこれである。

もちろん、シルバーポイントで根充された症例でレントゲン的にはうまくいっているように感じられる症例もあるのは事実だ。

そうした症例は、防湿、根管形成と洗浄がきちんとなされたのであろう。
しかし、それでもたいていの場合、タイトなシーリングはやはり難しい。
なぜなら基本、根管系というのは複雑なものであり、単純な丸い根管などほとんど存在しないからだ。(6,7)

これは何かに通じるのではないか?・・・
そう最近流行り?のシングルポイント+バイオセラミックである。

実は今日、たまたま教授のDr. Rogesから
『今後、いかなる症例においてもBCシーラー+シングルポイント根充をすることはまかりならぬ』というお達しがでた。

もちろん大勢のレジデントは大反発であったが、私の個人の意見で言えば、こちらの患者の長い根管、現代の小さなテーパーの根管形成、長いアピカルプラグを作成するCWCTが事実上(ZOEやその他なんでも)シーラーを用いたシングルポイント根充であることを考えると正直大きな問題でないというか、シーラーなんてなんでもいいの(ベストなシーラーなど存在しない)ので(8)、私的には問題は全くない。まあそれならばBCシーラーでもいいのでは?という話になるが、今年のEndodontic TopicsでTropeがBCシーラーの今までの根管充填剤にない様々な利点を並べ、時代は変わったこれからはシーラーが根充の主で、ガッタパーチャは副である(9)というような趣旨の意見を述べていたことからすればどうやらバイオセラミック根充はビタペックスのように、粉剤根充、しかもかなり高価な、と考えて差し支えないだろう。

が、これに対しては私はOrstavikが繰り返し指摘している様に(8)、Bioceramic系シーラーには従来の大方のシーラーに見られる様な大規模なcohortスタディやRCTレベルの研究がない中では、それらと同等なルーティンなシーラーとして使用するのは憚られる。

つまり私は、MTAセメントの様に少なくともプロスペクティブスタディレベルのエビデンスレベルでその材料が支えられる状況(10)まで、一般開業医(GP)の先生は”待つ”べきであると思う。

日本でもバイオセラミック系のシーラーが出ていると思うが、その簡単な手法やバイオセラミックといういかにも生体親和性が良さげな甘言?や広告に釣られて使用するべきでないと思うし、根管治療で重要なことは多くの先人たちが指摘している様に細菌感染のコントロールである。(11,12,13)

どのような材料を使用するかなど枝葉末節に過ぎないということを強調しつつ、いかに感染をコントロール(もしくは防止する)ことの方が重要であるか?をこのブログを通じてもう一度先生方1人1人が認識していただければ幸いである。

参考文献
1. Jasper E: Adaptation and tolerance of silver point canal filling. J Dent Res 4:355, 1941.

2. Brady JM, del Rio CE: Corrosion of endodontic silver cones in humans: a scanning electron microscope and x-ray microprobe study. J Endod 1:205, 1975.

3. Seltzer S, Green DB, Weiner N, DeRenzis F: A scanning electron microscope examination of silver cones removed from endodontically treated teeth. Oral Surg Oral Med Oral Pathol 33:589, 1972.

4. Ørstavik D, Mjör IA. Usage test of four endodontic sealers in Macaca fascicularis monkeys. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Endod 1992: 73: 337–344.

5. Wu MK, Van Der Sluis LW, Wesselink PR: Fluid transport along gutta-percha backfills with and without sealer. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2004;97(2):257-62.

6. Hess W: Formation of Root-Canals in Human Teeth Prat Ⅰ. J National Dent Assoc 1921;8:704-734.

7. Hess W: Formation of root canals in human teeth Part II. J National Dent Assoc 1921;8:790-832.

8. Ørstavik D: Endodontic filling materials. Endodontic Topics 2014, 31, 53–67

9. Trope M, Bunes A, Debelian G: Root filling materials and techniques: bioceramics a new hope? Endodontic Topics 2015, 32, 86–96

10. von Arx T, Hanni S, Jensen SS: Clinical results with two different methods of root-end preparation and filling in apical surgery: mineral trioxide aggregate and adhesive resin composite. J Endod 2010: 36: 1122–1129.

11. Kakehashi S, Stanley HR, Fitzgerald R: The effects of surgical exposures of dental pulps in germ-free and conventional laboratory rats. Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 1965;20(3):340-49

12. Sundqvist G: Bacteriological studies of necrotic dental pulps. Umae Univ Odontological Dissertations 1976; No. 7, 1-93

13. Möller AJ, Fabricius L, Dahlén G, Ohman AE, Heyden G: Influence on periapical tissues of indigenous oral bacteria and necrotic pulp tissue in monkeys. Scand J Dent Res. 1981;89(6):475-84.

2015年7月13日月曜日

Anatomy oral exam

多くの方から、”消息不明”を指摘されたが、私は至って毎日忙しく過ごしている。
まあ消息不明になりたいような問題が多々あったのが原因だが・・・
さておき、要は忙しかったのである。

今日は解剖の中間テスト最大の山である、”Oral examination”が行われた。
Skullが当てがわれて、Trigeminal nerveをはじめとするCranial nerve、動脈・静脈の走行や通過する孔や窩の部位、筋肉の名前を答えるというもので、独立記念日も一人家にこもり写経のように手を動かした2週間の猛勉強のせいか?私はなんと初めて基礎系の座学のテスト、しかも口頭試問で満点を取るという快挙?を成し遂げることができた。Skullを2個もアマゾンで購入した甲斐があったというものだ・・・


思えばこの5月には、胸鎖乳突筋は聞いたことはあるがSternocleidomastoid muscleは生まれてこのかた、見たことも聞いたことも話したこともないという情けない状態で、最初の小テストでは30点という全レジデント中ぶっちぎりの最下位という笑えない点数を取ったので、今回の達成感は非常に大きかった・・・。


特にBoard試験でこれら用語が必要になるため覚えて損はないという気持ちでやってきたおかげだと思う。Phterygopalatine fossa, Pterygomaxillary fissure, Sphenoidpalatine foramen, Inferior border of the zygomatic process of the maxilla, Inferior border of the zygomatic arch, Levetor labii superiors muscle, Levetor anguli oris muscleは特に何度覚えても覚えても忘れ混同した最たるものであり、願わくばもう二度とお目にかかりたくないものだ。







さて今年の1年生は女性が7人、男性3人という編成でこれだけ女性比率が高いのはUSCのGrad endoの歴史の中でも初めてだという。
中東系が圧倒的に多い4人、イスラエル人を入れると半分の5人。
アジア系が3人、ロシア人1人、そしてホセの奥さん(南米)の合計10人。
彼らは去年の我々のようにtooth projectに取り組む日々である。
またぼちぼち今年も来年の出願が始まり、何人かインタビューを受けに来ているのを見かけた。こうやって1年があっという間に過ぎてもらいたい(笑)

しかし、1日1日は非常に濃くそして長い。昨日のようなことがあれば、特にだ。
しかし、これが最近問題になっている。
PEDO(小児歯科)のエンド治療はいわゆるコンベンショナルな根管治療や外科症例以外はrequirmentに含まれないという話は前にもしたと思うが、これが最近顕著なのである。
あれだけ格闘してVPTをしたにもかかわらず、ケースにならない。
術者もファカルティもアシスタントも患者も母親も全員疲弊する。

しかも患者によっては単なるレジン充填という名のindirect pulp cappingだったり、そもそも何の治療も必要なかったりすることがある。
たとえば今日の午後は14歳の女児の根管治療2本(#3,14)ということだったが、本人は痛み何もなく、検査も正常、レントゲンも正常像と診断だけで終了してしまった。
なんでここにきたの?と聞けば、知らない、の一言。。。
痛い時があったので紹介されたんだと母親は言っていたが・・・

現状、基本USCのピドクリニックのスタンスは、簡単な充填以外は乳歯しか見ないというものなのでこれで我々にしわ寄せがきている。
これにクラスの代表のノアがdirectorに意見してくれた。これで状況が変わるのかわからないが、少なくとも幼若永久歯でpulpotomyで済むケースはエンドでなくてピドに送って欲しいものである。。。もしくは我々が診断してリバスやアペキシなどにならないケースは、PEDOへ送るべしというルールを作ってもらいたいところである。

ところでここにきてもう一つ気になることが、子供の英語である。
最近、子供が突然堰を切ったように家で英語を喋るようになり、私も嫁も何を言っているのかわからない時がある。幼稚園でも小学校でも彼らは英語で(当然)友達と喋り、遊んでいるからだろうが・・・7歳の子供の問診で鼻で笑われる私の立場は一体。。。

2015年7月11日土曜日

疼痛管理に明け暮れる日々

6月半ばから2年生になり渡米からはや、1年以上が経過した。

今学期は忙しいなんてものじゃない。
毎週月曜日には解剖の授業の小テストが常にあり、その勉強をしなければならないし、literature reviewも同じ月曜日に移動したため、週末はもはやこの2つの準備に追われる始末である。平日に堅実に準備していきたいものの、今学期からナイトクリニックが火曜日、水曜日と週2回に増えたため、私は毎週このナイトクリニックで患者をみている。
ナイトクリニックとは、17:00~21:00までの夜行われる診療でありmandatoryではないが、私は常に両日共に患者を入れている。理由は至極簡単で、高い学費を払っているのだから少しでも多くの患者を診ないと損する!という理由だ。日本に帰ってからこれだけバラエティに富んだ人種の患者を治療する機会はそうそうないと思う。この経験をお金で買っている感じだろうか。



しかし1日が終わると、もはや体力的には限界、家に帰るとカルテの整理や紹介元への報告書など作成しているうちに、気が付いたら寝てしまっている。

昨日はその中でも特別忙しい日だった。
フォローアップを除く患者のすべてが, "Hot tooth"を持っていたからである。

Hot Toothとは文字どおり歯が熱い→歯が強烈に痛い!!の意味であり、すでに患者は薬を飲んでも効かない状態であることが多い。

このような場合、日本では常にまずは投薬していた。
理由は簡単、もしこのような患者を診れば予約が大幅に崩れるからだ。
しかもこういう場合、まず麻酔が効かないことが多いのでどうしても治療を躊躇しがちである。

しかし、USCでは患者は痛いから来ているわけであってその歯が修復不可能でない限りは、痛みをコントロールして治療すべしという考えなので、投薬で様子見て・・・という選択肢はまずない。

しかも今学期は小学校が夏休み(6月〜8月はこちらの小学校は休み)に入っているので、子供の患者で歯が痛い!というケースが非常に多い。

昨日は7歳の女児が歯が痛くて夜寝れないと来院した。

主訴は#30で大きな齲窩があり、根未完成歯でX線的にはすでに露髄している状態であり、その他3本の第1大臼歯にもすでに大きなカリエス、さらにその他の乳歯には多数のアマルガム充填、複数本の乳歯の抜歯、保隙装置と、明らかに養育者に問題を感じさせる口腔内であった。



治療方針はVPT(Apexogenesis)ということにいなるのだが、なんといっても問題はこの7歳の我が息子と同い年のこの女児をどう治療中コントロールするか?ということである。

疼痛管理に始まり、術中の体動、口が開かない、治療にすぐ飽きるetc...などを考えると笑気の使用を強く勧めたが、拒否された。

アシスタントのキャンディに介助についてもらい、何とかなだめごまかしながら下歯槽神経ブロック&頬神経ブロックをキシロカイン2本を用いてラバーダムを装着したが、歯髄に近ずくと痛みを訴えたので伝麻&セプトカインによる歯根膜注射を追加しようとしたところで、号泣&もうやめたい(こっちがやめたいよ・・・)と言い出し、途中母親も出てきたものの、USCのPEDO専門のファカルティのDr.バダーンがヘルプしてくれ、彼女を何とかなだめ聞かし、セプトカインによる歯根膜麻酔に成功(ここでニシカさんのアネジェクトがいつも非常に役立っています、手島さんありがとうございます)、痛みはなくなり、結局full palpotomyに。

しかしなかなか出血が止まらず、ヒポクロで洗浄&止血、止血確認、止血せず、再度少しづつ歯髄除去、再度洗浄、止血、止血確認を何度も何度も繰り返した末、ようやく止血し、早く終わりたいので、Biodentine一塊で歯髄のcappingと築造を試みようとしたらバイブレーターが壊れ、結局手持ちのBC sealerとパテでcappingし、Fuji9で築造ということになり終わったのが12時半であった。始まったのは10時、診査、レントゲン、診断、ファカルティとの協議、治療前のインフォームドコンセントを母親にしようとしたらパーキングの時間があと少ししかないとかでカードを切る必要があるのでと30分以上戻らず、ようやく説明して治療が始まったのは11時10分前だった。

この時点で既に治療に通常は入れないが、女児が自発痛を抱えていたため治療すべしとなり、上記のような顛末になった次第である。

USCでは小児の患者でも、永久歯で露髄する疑いがある症例はすべてGrad Endoが受け入れている。そのため、小児の患者の数にも事欠かない。

しかし、悲しいかなこのケースはrequiementに含まれないので、私は骨折り損の・・・ということになってしまう。

しかもこの日は僕はもう2人患者を抱えており、それらも自発痛を持つ患者であった。特に最後の学生のクリニックから来た患者29歳女性は、学生が根管を見つけられない&麻酔が全く効かない、が、学生は御構い無しで治療を続行で、激痛で体は震え号泣しながら私の元にやってきた。。。それでも開口一番、うちのアシスタントがあんた金払ったの?(学生のクリニックよりもレジデントのクリニックの方が治療費が高いのでその差額を支払う必要がありそれが支払われない限り一切の治療に入れない)と患者に冷静に告げるや否や、患者は意識朦朧としながらフロントへ行き支払いを済ませ、私は一人その後始末に追われたのである。。。



エンドに興味がない人、および歯科関係者でない人でも上記の文章を読んでいただければどれだけ私が格闘したか?想像につくと思う。

今、日本ではエンドが流行っているという。
こちらでも若くしてエンドの大学院へ入ってくる優秀な歯科医師は多い。
エンドは1、2回で終了するし治療費も高いのでそれが大きな魅力になっていると言われる。
しかし、実際の歯内療法臨床とは、このように非常に泥臭いものであり、まさにEndodontistは痛みとの格闘を強いられる。歯が痛くて痛くてたまらないという患者と日々向きあわなければならない、このような環境下で揉まれたレジデントは、相当の自信がつくだろう。

今まで避けて通っていたことに向き合い、その壁を少しづつ超えているという実感を感じつつある日々である。

2015年4月20日月曜日

日本へ一時帰国、診療へ

長かったspring termも今週末で終わりを告げた。
そして来月まで2週間の春休み。

今しがた調度羽田に到着。羽田は雨。


時差の影響で早くも頭がぼーっとしている。
今から福岡に帰っていきなり診療なんだが・・・

しかしこの春休みは日本に帰ってそれこそ診療と論文を読んだりの毎日になりそうだ。
学校は来月からだが、来月頭はAAEがシアトルでありそれに参加するため実質新しいsummer termは5/11から始まる。

5/15日には卒業式があり、2年生は卒業。
我々1st year residentsがいよいよ上級生になる。
しかしこれほどまでに1年が短いとは改めて思わなかった。
とにかく、毎日朝から患者さんが配当されており診療しない日はほぼなかった。
早くrequirementを修了させたいのもあるので、極力1回法で終了したがそれでもまだまだできたのではないかと後悔する部分もある。
学校もようやく楽しくなってきたというか、自分に余裕が出てきた。
この1年はUSCのASPIDプログラムのS先生やM先生、ペリオのファカルティのM先生や
S先生がいたというのも私には大きかった。しかし、来年からは学生と言われる人は恐らく日本人では私だけになるので、いよいよマイノリティーになろうとしている。
今タームは薬理学という爆弾を抱えたままの日々で私は個人的に一生Directorのクラーク先生のことは良い意味でも悪い意味でも忘れないだろう。

来季からはいよいよ外科が始まる。といっても既に日本で外科は行っているので、私はどのような違いがあるのか?を早く知りたいと思っている。
USCの外科はJ. Stropkoの外科のペーパーが元になっているという。
(Dr.シェクター曰く、ストロプコが俺のコンセプトをパクった、と言っている。相変わらずだ笑)
これを春休み中に2回通読し、来学期のdiscussionに参加するように言われた。

さらにはボードの試験の課題も出ていて、この春休みはまさしく読書漬けになりそうである。
また診療、銀行との交渉、そして読書。
1日がこうしたサイクルで終わるので日々休む暇がない。
福岡には24時間空いている自習室がないのでそれも困ったものだが目ぼしい自習室を見つけたので早速今日からそこへ行ってみようと思っている。

などとたわいもないことを久しぶりに文章にしようとしてみたが時差ボケでだろうか?何を言いたいのか自分でもよく分からない4月の日記となってしまった。




2015年3月11日水曜日

Board certificationへの道

USC Grad endoではAmerican Boradの試験は一応、任意ということになっているがここ5年間はすべてのレジデントが受験し、すべてのレジデントがパスしている。



またUSCのGrad endoのobjectivesの中の一つにBoard認定の専門医になることが定められているので、受験は任意という名のmandatory(義務)である。

昨日も2年生レジデントがカナディアンボードの試験を受けてきた。カナディアンボード試験はアメリカンボード試験よりも簡単であると言われており、自信のないレジデントはまずカナディアンボードの受験を勧められる。

上級生に聞くとボードの試験対策は前の年の12月の冬休みからで十分だよ的な話が多いが、私の場合は言語にハンデのある日本人なのでこれは完全に当てはまらないだろう。

このボード試験で厄介なのが、これを勉強しましょうという定め、決まり、範囲が全くないということだ。つまりエンドに関わるすべてが試験範囲ということになる。

しかし、実際はいろいろな意見がある。

私が聞いただけでも、Pathways of the pulp, Dental pulp, Inflammationはまずはボード試験への入り口だという声が多く、この3つをコンプリートするだけでも気が遠くなるのにそれに加えて、最低ここ3年以内のJOEに、クラシックなランドマークアーティクル、日々のliterature review論文、さらにこれにボード対策講習会で提示されたものを足したものが最終的な範囲になるそうである。






正直、今の段階から気が遠くなりそうなくらいのテスト範囲であり、これらを読破するだけでも難しいのに記憶をしなければならないのか(しかももちろん英語)と思うと一気に歳を食いそうである。

一応、Inflammation, Dental Pulpには和訳版が存在する。
ただ両方とも既に廃版である。
私はInflammationの和訳は持っているが、Dental Pulpのは持っていない。
しかもDental Pulpは既に2度以上新しいバージョンのになっており、和訳版が最後に発売されたのは1988年!ということを考えるとあまり意味はないのかもしれないが・・・

2年生になると対策講義があり、通常のliterature reviewに加えてその分の学習もしなければならない。従って今からできることはやろうと、最近は与えられたliterature以外に上述の3つの教科書をまずは読破し内容を把握することから始めている。

上記3つの教科書の中では、Pathways of the Pulpが最も臨床に即していて読みやすいのでまずはそれからスタートしている。

サウジアラビアからのレジデントはボード試験にパスすることがmandatoryだという。(そういう契約でここに来ているらしい)
私はmandatoryではないが自分の新たな学術的な目標にしている。

これは一見すると完全に無謀なことかもしれない。
TOEFLを最初に受験した時と似ている。
しかし、あのTOEFLでさえもクリアできたのだ。
Boardだってできないはずはないし、これをパスしないとここに来た意味がない位に思っている。

しかし、最近思うことが聞くこと、喋ることもハードだが何が一番ハードかといえばReadingであるということを思い知らされている。
読めば読むほど知識がつくのはわかるが、一度不慣れなワード満載な論文に出くわすと1つ読むのに数時間を要してしまうので調子が狂ってしまう。
とにかく理解できないと先へ進めないタチなので、余計に時間が掛かる。

今のところ、1日最低2本は読まないと消化しきれない。
しかも来週のlit. reviewがトロントスタディでこれがまた本当に面白く無いのでここ数日は完全に”作業”になってしまっている・・・。

さて、論文をどう読むべきか?というご質問をよく受ける。
例えばTOEFLの勉強をしているときに、ある先生はcritical readingなる読み方を提唱していた。つまり要点だけ捉えてすべてを読まないと言うやり方である。
しかし、結論から言うとこの読み方は歯科では通用しないだろう。

例えば前述したトロントスタディの中で初期治療(抜髄、壊死歯髄)の成功率を調べたものがある。そこによれば抜髄の場合92%, 病変がある壊死歯髄の場合74%だという。

しかし実際この論文では顕微鏡もNi-Tiも使っていない。
つまり、現代の多くの歯内療法専門医が行っている術式ではない。
そのことからこの数字をそのまま間に受けることはできない。

しかしそれでも抜髄で92%という数字はいかに無菌的な処置を行うことのほうが各種機材をそろえるよりも大事か?ということを示しているが、一度感染した歯を治療する際には裸眼は厳しいなという印象になる。

このように中身を精読しないと、自分がどう感じるか?がでてこない。

また第3者がどう感じているかも大事なわけで、私は今の所エンドの論文を読む際はまずABEのサイトからダウンロードできるLiterature review gideなど持っているものからまずはサマライズ(アブストラクトではなく、サマライズ)を探す。これでその論文が言いたいことが先に把握できるので、結論がわかった状態で読むと読み方も変わってくる。

今月末にはカンザスでボードレビューがあり、多くの2年生が受講するようだ。
試験は5月のAAEの次の週。
2年生は皆忙しく勉強している。
もちろん診療もこなさなくてはならない。

気づくとあっという間に1年が過ぎようとしているのに本当に驚く。
このブログも始めた頃はおそらく愚痴ばかりだっただろうが、今では前向きに勉強、診療ができている自分がいる。

与えられた環境でベストを尽くすこと、逆境と悔しさの中からこそエネルギーは沸き出ること、そして頑張り続ければ誰かが見ていてくれることをこの留学生活で改めて感じている。

なぜ留学してまで・・・とよく聞かれることがあるが、それは自分の中でまだまだこんなもんじゃない、という思いがあるからだ。
1つのステージを越えてももっと自分は良くなれるんじゃないだろうか?
もっと自分は変われるんじゃないだろうか?
もっと違う世界があるんじゃないだろうか?
と常に変化を求めてしまう。

好奇心と言ってしまえば言葉が軽すぎるかもしれないが、考えるよりも先に行動してしまうたちなので始末に追えない。

このように来るべきボード試験の学習も既に始まっている。
やること満載でいつもパソコンの上で力尽きて寝てしまう。
とにかく今は何も考えず、前へ突き進むのみである。

2015年3月9日月曜日

2015年1,2月を振り返る

昨日からロスはサマータイム(こちらではdaylight saving timeという)で、普通に過ごしているのに時間は1時間早いという日本生まれの日本育ちの私には意味がわからない?ちょっとした時差ぼけ的な1日だった。

今日からサマータイム導入されてのクリニックで時計が軒並み1時間遅い。が、時間は1時間早い。つまり朝8時半から学校は始まるが、実は今まで7時半の時間帯なのでみんね眠そうである。

私もこのなんとも言えない時間のトリックに今日は1日翻弄された。

最近は日々そうたいして変わったことがあるわけではなく、淡々とケースをこなしているような感じである。

ファカルティにコンピテンシーはパスしたがリトリーメントは日本でいっぱいやってたから、イニシャルをできるだけ配当してほしい(しかも大臼歯で痛いという主訴のやつ)という要望を出したら明後日の新患が#1の治療とあってびっくりした。#1といえばこちらで言えば上顎右側第3大臼歯である。つまり親知らず。親知らずのエンドをどうやってやれと言うんだ?と今から何が待ち受けているのかドキドキである。

とにかく最近は(というかここ数ヶ月)、大臼歯しか回ってこない。前歯や小臼歯を見ることがない。しかも初診の時に大体痛いやつばかり。まあ自分の希望なのでいいのだが、毎回忠実に私の要望通り配当されるので正直、驚く(笑)。

しかし、これは自分で言うのもなんだが、正直いい経験になっている。

みなさん、ご存知のように上顎はまあ痛みがあってもなんていうことはないというのは想像がつくと思う。とりわけ神経ブロックなどしなくても普通のinfiltration×2本で十分奏功するからだ。

やはり問題は下顎大臼歯だろう。
下顎の大臼歯でめちゃくちゃ痛い。こういうケースに遭遇すると普通は嫌だなあと歯科医なら誰でも思うだろう。

今まで振り返っても、
自発痛、激烈な冷水痛、噛めない、痛み止めも効かない、イライラする(痛いから私に患者が当たってくる)、腫脹、アブセスetc...
とにかく普通に勧められて来ました〜というケースはほぼ皆無である。

日本では(自分のクリニックでは)、こういう患者さんが来たときには治療不可、投薬して予約を取り直すようにしていた。
術前に痛み止めを飲んできてもらってそれから治療する。

しかし、ここでは痛いから来ているのでなんとかしないといけない。

そこで麻酔の出番となるわけだが、正直麻酔に関してはこれが黄金の法則である!というゴールデンルールがない。

つまり、伝家の宝刀など麻酔には存在しないのだ。従って、個々の患者さんと常にストラグルする必要があり、私はこれに関しては非常に興味深く臨床させていただいている。

USCのGrad endoでは下顎の治療で用いる麻酔はほぼ100%下顎孔伝達麻酔(Inferior Alveolar Nerve Block=IANB)である。

日本にいるとき、私はこの伝達麻酔というものをほとんどすることがなかった。いつも考えてみるとInfiltrationばかりだった気がする。それでも効かなければ、伝達麻酔するという感じだった。

しかし、こちらではまず第1選択が伝達麻酔でありそれが効かない時に次にどうするかを考える。

従って、下顎孔伝達麻酔ができないと治療ができない。

こちらでの術式はまずキシロカイン(エピネフリン1:100,000、日本と同じもの)を2本伝麻。

それでも効かなければ
①歯根膜内麻酔
②歯槽骨内麻酔
③髄腔内麻酔
を行う。

しかし、圧倒的に簡単で効果も持続時間も長く、麻酔効果が発現するのは②である。
経験がないとぞっとするが、ミニインプラントでも埋入したことがある先生ならなんていうことはないだろう。ただ刺入部位が痺れていないと痛いのでそれだけ注意する必要がある。

ただこの方法に問題があるとしたらコストである。
DentsplyからX-tipという製品が出ているが、これが10本で7000円。つまり1回の使用で700円である。

いうまでもなく、これを保険診療で使えば日本の歯医者さんは経営的に赤字になるので使用に関しては逡巡するだろう。

USCのレジデントでもこれを使用するものはほとんどいない。
コストがかかるからである。
しかもこちらでは、患者さんは痛みに耐えて当然という文化があるので、③の髄腔内麻酔をみな平然と行う。

なんでお前は髄腔内に麻酔を打たない?といつも同級生から言われる。
Pain is Painなんだから、Quick&Easy&Cheapなのに、と。。。

しかし私はどうもあの髄腔内麻酔の患者さんの飛び上がる感じが嫌である。
なので私のシークエンスは
伝麻、再伝麻、歯槽骨内or歯根膜内、そして最後が髄腔内である。

歯根膜内麻酔は日本ではしょっちゅうしていた。
しかし問題は効果が短く、痛みも歯槽骨内麻酔と比べて取れにくい。
しかも電動麻酔を持っていないので、歯根膜内に麻酔しようと思うとものすごい力が必要で私は個人的にこの方法を楽だとここで感じたことがない。
たまたま今日の患者さんはX-tipを切らしていたため歯根膜麻酔となったが自分の手がどうにかなりそうな勢いであった。。。

このほかにもGow-Gates法や開口が難しい患者さん用のVazirani-Akinosi法もあるが伝麻と比べて実は有意差はない、と言われる。しかし、経験的に伝達麻酔が効かなければGow-Gates法で効くという事が何度かあり、私はオプションとして患者が最大開口できればGow-Gatesも用いている。

痛みのマネージメントは本当に難しいが、現在は本当にいい訓練をさせてもらっていると思う。なんせ毎日来る患者、来る患者、ほぼHot toothなので。。。

また、麻酔が効けば1回法で終了することもしばしばある。
しかし今日は終盤、拡大していたら若干痛い、と言われ貼薬して終了となったが。。。

ということで、振り返るとこの1月、2月で50ケースを終了していたことが分かった。3、4月で40ケースくらい行けばいいかなと思っている。

またファカルティとの個別meetingでは、今のところクラスでも手技に関してはtop 3の中にいるらしい。しかしこれは完全に日本での貯金なので石井先生を初めとするペンエンドの先生がたのご指導様様である。

ある患者さんからはつい最近、レジデントの評価票?なるシートをいただいた。
そこでは私の手技、患者対応、スキル(どう患者がそれを評価するのかわからないが・・・)、プロフェッショナリズム、全てにおいて最高ランクをいただき、コメント欄に他の患者にも紹介します、大変すばらしい先生でした!と絶賛されていてそれをみたロヘスやリービィがわざわざコピーして朝のレジデント向けの講義で紹介したり、ラスティンには報告されたりするおおごとになったりで、久しぶりに大汗をかいてしまった(笑)。。。

と書くと順風満帆で自慢ばかりしやがってと捉えられるかもしれないが、もちろんストラグルしていることはほかに山ほどある。

薬理の試験は相変わらず未だ自分だけ受かっていないし、子供の患者には挨拶するなりいきなりギャーと走って逃げられるし、白人の婦人からは英語がフルーエントじゃないからチェンジでお願いしますと言われたり、PGペイシェント(HIVの患者。感情の起伏が往々にして激しい)からは早く終われいつ終わるんだ!と脅かされたのに腹を立てて、終われねえよ許可がないと!と反論して4文字言葉を浴びせられたり、ブリッジにラバーダムかけたらいきなり全部外れて困ったことになったりと逸話には事欠かない。

しかし、当初(去年の6〜9月)と違ってこれだけは確実に言えるということがある。
それは学校が楽しくなってきたということである。
最初は朝が来るたびに憂鬱だったのが、今では電車でUSCまで通うという現地人化した状態になっている。
しかも毎日、非常に楽しい。やはり私は臨床家なんだな、と実感している。

日本にいるときは、私がどれだけ正しい治療というものを叫んでも、患者さんに説明してもなかなか届かなかった。患者さんの中にはまるで893かというようなまるで私をリスペクトしない輩もいた。しかし、少なくともここでは一部の例外を除き私がリスペクトされないということはない。患者さんは常に感謝してくれるし一生懸命私の話を聞いてくれる。

日本に帰ればまた”戦い”が始まるのだろうけれども、少なくとも留学以前の時よりも”肩書き”は付くので今までよりも信頼してもらえるだろうか?

と言いながらこんなことをかいているようじゃあまだまだなんだろう(笑)。

精神的に相変わらず成長していないようだ・・・

2015年2月27日金曜日

It depends on the patient.

患者さんは50代黒人。

主訴は噛むと痛い。かかりつけ医に再根管治療を勧められたため、USC grad endoに来院した。

4日前に脱離したアマルガムの部分をコンポジット充填してその時のレントゲンで#30に問題が見つかったという。

しかしよく話を聞くと、もともとは全く痛くなく充填してから痛みが出たという。
しかもその充填物のfixをするので来週頭にはもう一度来い、という話になっていた。

口腔内にはsinus tractも腫脹もない。極めてノーマル。

こちらに来て初めて銀歯のクラウンを見た。装着したのは20年以上は前という。

つまりこの歯は20年間何の問題もなく機能しているのである。ただ2時カリエスは明らかにマージン付近に見られた。

しかし痛みがないので患者さんは少し怒っていた。

何で俺がroot canalが必要なわけ??

何にも痛くもないのに?

意味がわからない!

かかり付け医がなぜ紹介状をここによこしたかもわからない!と、僕に連発していた。

ええ、僕もわかりませんから今から診査させてくださいと歯髄診査に移行。

確かに、臨床検査からは何の問題も見られなかった。打診痛も咬合痛も圧痛もなし。
ポケットも正常範囲で動揺もない。

#31で綿棒を噛ませると明らかに痛い!というリアクション。
しかし、Coldはノーマルリアクション。EPTも+。
ただ、#31は来週頭にかかりつけ医でレジンをやりなすそうなので、ここが怪しいな・・・と目星をつけレントゲンを撮影。


BT-wingからすると、カリエスがクラウン内部まで浸透している?可能性が示唆される。
前医は相当思い切ったアクセスキャビティプレパレーションをしているようだ。
近心壁にはほとんど歯質がない。まさに首の皮一枚。

PAからも#30の歯質は過少であり、遠心根にはスクリューポスト。遠心根はNormal PDLに見えるが、近心根にはリージョンがあり、歯根を取り囲むような透過像が見られる。
破折の可能性が疑われる。
しかもdentin blockを起こしているか、レッジを作ってしまっているので元来の解剖学的形態は失われている可能性が高い。ということは再治療の成功率は50%未満であると言わざるを得ない。


また#31を見ると、遠心のレジンがなんとも頼りなさそうに見える。
アマルガムをレジンにやり変えたということだが、もともとMOD窩洞であったためこういう歯を直接法で充填するのは至難の技だ。私なら間接法でInlayを選択するだろう。
咬合面にはアマルガムが取り忘れさられている。

さて、以上を勘案するとどのような治療計画が妥当であろうか?

①再根管治療?

②抜歯→インプラント?

③経過観察?

④咬合痛は#31由来

以上を体系的にわかりやすく、患者さんが選択できるように専門家としてアドバイスしなければならない。

再治療であれば、利点は歯を残せる可能性がある。

ただし欠点は、修復可能かどうかの有無を再治療前にチェックする必要性。
虫歯が進んでいれば(レントゲンからはすでにかなり進んでいるように見える)、保存不可。
首尾よく残せたとしても残存歯質は相当薄くなることが予想され、再治療後に破折する可能性。
また再治療の成功率がこの場合は50%程度。治らなければ外科治療が必要。しかもその後、補綴治療も必要。

以上を勘案すると、抜歯という選択肢もある。
もちろん、何もしないという手も。

ここで重要なことは、それを決めるのは患者さん自身でなければならないということである。

スペシャリストは、治療の選択肢とそこで起こりうる可能性があることをすべて提示し、患者さんに選択していただけるようにしなくてはならない。

日本でGPをしていた時、私は常にこのスタンスだった。
虫歯1本治療するにも、様々な方法があり、そのすべてに長所・短所があり、費用もまばらで予後もまばらだ。症例によってはクラウンになることもあり、そうすると生活歯なら抜髄が必要になる可能性がありetc...などとスライドを見せながら話したものである。

しかし、一般的にGPは時間がない。
忙しいのだ。
多くの患者さんを見なければならない。
従って、“貴方一人に費やす時間”はほとんど無い、というのが本音だろう。
これは日本でもアメリカでも変わらないと思う。
なので、治療の内容を院長の代わりに説明する、なんちゃらコーディネーターなるものが必要になるのだ。

しかし、スペシャリスト(専門医)は違う。
専門的な知識をわかりやすく噛み砕いて患者さんに伝えることができる。
そのために十分な時間もとるし、それなりの準備もする。
また、我々はそのために相当な投資をしている。
なので、一般的に治療費は高い。
しかし、プライベートな時間は十分作ってあげることができる。
もしこれを読んでおられる方の中に、患者さんがいるとしたら
それを頭に入れていただければ、と思う。

この患者さん、最初は僕が挨拶してもニット帽を深く目まで覆い挨拶もしてくれなかった。

しかも、歯科医に対して文句の連続。
しかし、私が絵を描きながら必死に?英語で説明するとそれが伝わったのか、身を乗り出して聞いていただけて、最終的には詳しく説明してもらってありがとう。よくわかった。
俺は抜歯を選択するよ。
こんなに一生懸命説明してもらえたことは今までなかった、Thank you Dr.と言って帰っていった。



それはさておき、我々の個人的な意見はどうだったか?だが、
ファカルティは全員、Questionableで抜歯を第1の治療に挙げていた。
私の意見も同じ。インプラントの方がどう考えてもベターだと思う。

しかし、重要なのは誰がそれを決めるか?だ。
我々は助言はできるが、決定はできない。
決定するのは患者さん自身である。
患者さんがそれでも残したいといえば、我々は保存に努める。

すべてのファカルティがIt depends on the patient.というように、治療の内容は患者さん自身が決めることができなければならない。


2015年2月26日木曜日

Ni-Ti File 何がいい??

エンドのレジデントをしているので、よく聞かれることに

『どのファイル(のシステム)がいいですか?』というものがある。

例えば、うちのレジデントで最も人気があるのはVortex Blue。10人中6人のレジデントが愛用している。



その次はProtaper Next。



あとはEndoSequence。これは私だけか。。。

あと私は最近はProtaper Goldを頻繁に使用しているが、これもレジデントでは私だけだ。


私のファイルに対するこだわりは正直ない。
(ただし、個人的にこのオリフィスオープナーのSXは好きである。)

何でもいいでしょ?別に。というのが持論である。

現に、このファイルが最も優れている!!なんていう研究やペーパーはないし、結局好き好きだと思う。

しかし、何でもいいからといってSAFファイルやレシプロモーションのファイルは選ばない。

理由は、面倒臭いし高いから。

私は面倒臭いことが大嫌いである。

SAFやレシプロだと専用のモーターが必要だ。これらはご多聞に漏れず高い。

例えば、最近Satelecからエンドのモーターと超音波が合体したものが出たが、2000ドル位するという。



(個人的にはこれよりもアマルガムミキサーで練和可能なMTAカプセルの方が気になるが。。。)


レシプロだと破折しにくいと言うペーパーはあるが、そもそもファイルが折れる原因はそういうことじゃないし、どんなファイルだって破折する。

私は日本でGPをしている時、すべてのファイルは1回使用して廃棄していた。

現にK fileなどは1回使用したら、そのファイルはもう2度と根管の中に挿入してはならない。

従って、破折の心配をしたことがないし破折を起こしたこともない。

また、Protaper GoldなどのVariable taperのファイルも好きじゃない。

理由は、それにあったガッタパーチャを購入しなくてはならないからだ。

再治療なら特にケアしないが、イニシャルだとテーパーは小さいものを使用するので、根充の時に形成したテーパーにあったガッタパーチャを必要とする。

またvariable taperなどというと聞こえはいいが、要はそれにあったGPを購入しないとレントゲンが様にならないのだ。



従って、Protaper Goldなどのテーパーが特殊なものに関しては使用したい!と言う気にならない。

(じゃあなんでお前は使ってるんだよ、と言われればレジデント価格で激安だからと、トライしてみたいということ以外理由はない。)

とにかく、このシステムを使用すれば完璧!はないので、汎用性が高いものを選ぶべきである。

例えば、私はEndoSequenceで形成してそのあと、デンツプライのガッタパーチャで根充したりもするし、Vortex blueで形成してEndosequenceのガッタパーチャを使用することもある。

BCシーラーを使用してProtaper Goldで根充することもあるし、もう何でもありだ(笑)。

私が強調したいのは、メーカーや器具を揃えることに執着するのではなく、コンセプトを理解することの重要性である。

根管形成のコンセプトが理解できていれば、どんなメーカーのどんなファイルだって自分で考えて使用できるのである。

やたら高いエンドのモーターを買わせようと勧めてきたり、CBCTと抱き合わせで購入を勧めてくるメーカーはどことは言わないが、論外である。

ただ最も安価に?最低限器具を揃えるならば、dentistskyseaなどでの購入を考えてもいいだろう。同級生レジデントの様子からすれば、問題なく起動しているからだ。

ということで、器具やシステムにこだわるよりもコンセプトにこだわった方がいいという言葉を覚えておくべきで、もし日本でそういう研修会に行くならテクニックよりもコンセプト重視した研修会をお勧めする。

改めて、いうがどこの何のメーカーの何て言うファイルやシステム?ではなくて、コンセプトである。

2015年2月25日水曜日

Tips for Apex Locator through Metal Crown restorations

久しぶりの更新はナイトクリニックから。

実に役立つ情報だったので、日本の歯科医師の皆様にも共有していただきたいと思い今日はテクニカルなtipを紹介したいと思う。

そんなのもう知ってるよ!という方はスルーください。

その前に近況ですが、最近は日々大臼歯、しかもフックが強いのばかり。

MB2はもはや当たり前。下顎なら4根管、5根管、樋状根と腱鞘炎になりそうだ。

今日の患者さんは血圧が240/150もある人で、1回目は治療できず。
医師の処方により降圧剤を服用していただいて、今日1回目の治療となった。

それが今日のナイトクリニック。

私の最近のお気に入り?は、プロテーパーゴールドとボルテックスブルー。

使い続ければその特性がわかるもので、現時点で使い勝手が悪いと感じたことはない。

などと強弁しているが、ブラッセラーのファイルよりデンツプライの方が圧倒的に安く、お金のない留学生の私には実に財布に有難い、というのが多様の理由であったりするのはここだけの話である。

こうやって業者に取り込まれていくのか!、と実感している。

Dentsplyから話が来たらラドル並みに宣伝するかもしれない(笑)

それはさておき、今日のケースはメタルクラウンに穴を開けて根管治療をするというケースだった。

さて、このような時皆さんは何が一番困るだろうか?

そう。Root ZXがピーピーなるのである。

具体的に言うと、作業長を測るときにファイルがメタルクラウンに触れるとピーピーとこのようにメーターが振り切れる。


例えば、日本にいるときに歯質があまりない歯をエンドするときに、矯正用バンドで隔壁を作るときや、前歯でメタルの隔壁を作ることがあったが、問題はこのように一度ファイルがメタルに付着すると、上図のようメーターが振り切れて作業長を決めるのに恐ろしく時間が掛かったものである。

これについてどうにかならないだろうか?と今日、レジデントで話していたらデンツプライのサイトからこのようなTipを紹介してもらった。Youtubeでも観れるので、興味のある方は動画をどうぞ。

要約すると、RC-prepや根管バキュームチップを切ってできる断端を



このようにファイルに差し込むだけである。



こうすると、ファイルの上部がプラスチックで保護され、メタルと直接接触しないのでファイルがピーピー言わない。

治療する前にディスカッションしておいてよかった・・・。

あまりにも久しぶりに使える小技だったので皆さんにも紹介してみた次第である。

えっ?そんなことも知らなかったのって?・・・すいません。大した学術的な話ではありません。

こうしたTipsは都度、あればこのブログで紹介します。

さて、いよいよ今年の春から外科が開始。

外科を開始するにはファカルティとの面談をパスしなければできないので、今からはその準備も必要だ。

うちのファカルティがJohn Stropkoの外科の手法が好きなようでそれに基づくものになるという。

外科のliteratureも通常の授業とは別に大量に用意されている。

僕は今までPennのKim先生の方法しか知らないので、どのような違いがあるのか今から楽しみだ。

とにかく、座学がなくなって最近は学校が楽しい。

臨床家なので、日々多くのケースに当たらせてもらえて疲れはあるが満足した日々を送っている。

学校に慣れた?のもあるかもしれない。

となんら学術的なことを書いていないこのブログを更新するのは実に久しぶりなのには毎日多くの方(多分、歯科医師の方)に見ていただいているようで、感謝いたします。

まつうら歯科医院のブログと合わせると、なんと驚くべきことに1日約500人!もの人が私の文章を見てくださっています。

閲覧国も日本のみならず、最近はウクライナからも!閲覧者が・・・

また、最近もいろいろな先生から頑張ってくださいと励ましのメールをいただいたり、Facebookで交流させていただいたりと、本当にありがとうございます。

また私と同じように藤本研修会の門を叩いて留学したいと思っているんですが・・・という相談メールもたまにもらいます。

歯科界って少しづつですが、若い力で変わってきているかもしれません。

私が駆け出しの時は、⚪︎ニアや審美が大流行でした。

しかし、今はどうでしょうか??

若い先生ほど気づいています。それはちょっと違うんじゃない?と。

そしてエンドに対する価値観は明らかに変わってきています。

これは石井先生がいなければ日本には起きないムーブメントだったと思います。

その意味で石井先生の日本の歯科界に対する功績は計り知れないと思います。
なんせ、私まで海外に出てしまったわけですから。。。

しかし、私は最終的には日本でもこの米国と同じように、歯内療法および歯内療法専門医に対する社会的価値観・認知度が向上し、日本人の根尖性歯周炎の有病率が下がればと思っています。

こちらでは普通にEndodontistだと近所の人に言えば、それが何か?どれほど社会的地位が高いかは広く認知されていますが、日本ではその言葉さえ浸透していません。

皆、なんでお前は帰るんだ?こっちでやればいいじゃないかと言ってくれます。
確かに、それも一理あるなとぐらっとくることもないわけではありませんが、やはり私は日本人ですから日本をなんとかしたいのです。

私は、テクニック的なことや学術的なことは必要とされればお伝えすることはやぶさかではありませんが、それよりも一般の人にいかにこの治療が大変で専門医性が高いことなのかを語ることが私の使命ではないかと最近思うようになりました。

歯医者さんと絡むのはどうも苦手で・・・と言うのは今でも変わりませんし(笑)、幸い書いて伝えることは何故か得意なので、これからも発信し続ける歯内療法専門医でいたいと思います。

そうしたことを来る今年の夏にアップ予定のホームページに組み込んでいきたいと思っていますので、これからもよろしくお願いいたします。

2015年2月11日水曜日

Case presentationとWritten Board examの準備

来週の火曜日、ついにケープレのお鉢が回ってきた。



5症例を準備しなければならない。ただ残念ながら私のケースはすべてコンベンショナルなイニシャルトリートメントで、要は抜髄と壊死歯髄のケースしか出せない。



この前、同級生が下顎小臼歯の4根管!をものの見事に根充していたが、そのようなGood caseに未だ巡りあえない。

下顎小臼歯のC-shape,上顎小臼歯の3根管くらいしか自分はそういう特殊なケースに当たったことがない。
ただ、もっか子供の水平性歯牙破折の治療をしているので、それが今僕が有する最高に面白いケースということになるが、あとは毎日Initial Tx。

ただ、この状況は私にとって非常に都合がいい。
なぜなら日本では私のクリニックの患者さんの多くは再治療、外科治療でInitial Txがほとんどなかったからだ。

ペンエンド受講時もこの問題に幾度となくぶち当たったのを覚えている。

それに比べれば今は非常に良い環境である。

誰も手をつけていない根管を触れられるという喜び?で毎日クリニックでは楽しく過ごさせていただているのだ。

Initialでも感染している場合、していない場合だと根管形成の最終拡大号数は当然変化する。

そうしたことや、作業長の位置、洗浄、根管充填、などコンベンショナルだが非常に大事なテーマについてdiscussionを催すようなプレゼンテーションをしたいと思っている。

与えられた時間はそうないが、全力を尽くすのみである。

さて、もう一つ。今日は朝から上顎犬歯が2根管ありそうな患者さんのCBCT撮影、および診断とカウンセリングの予定がドタキャンされ、私は恒例のロヘスとリービィとの3者面談と相成った。

ここでケースについてディスカッションしたが明らかに前と比べてロヘスが何を言っているのかがわかるようになっている。あのキューバ人の英語は最初は非常に困った問題であったが・・・英語はもしかしたら時が問題を解決してくれるものなのだろうか??

それはさておき、今日はボードの話になった。

USCのエンドレジデントは毎年、すべての人がボード試験を受けなければならない。
日本人だからって俺は関係ないとかは許さんぞ(笑)とリービィにはまたしても脅かされた。

しかし、ここ5年、Written Examで落ちた人はUSCのレジデントは1人もいないという。
私がその記録を破る?不名誉な記録を作るわけにはいかないのだ・・・。

後のケースプレゼンやオーラルexamはWritten Examに比べればまだ私にとってはまし?なので一番の難関のWritten Examをどう制するか?について今日はいっぱいdiをした。

最近はliterature reviewの量が多く、どうしたものかと途方に暮れていたが全部Landmark articleとあって読み飛ばすわけもいかず、かといってCase presenの準備もせねばならず、Boardのことを考えたいが今はとにかく毎日必死についていけばWritten examには間に合う、という感じで生活を送れば良いということがわかっただけでも随分と精神的に楽になった。

しかし、最近は私も知恵がついて(?)読む前にLandmark articleのsummary集からその論文の主旨を最初に手短に抑えて読むという癖がついた。しかも読むスピードも随分と早くなった気がする。問題は忘れっぽいところなのだが(笑)・・・。

USCのエンドに来たい先生にうちのメリットを紹介すればやはり多量の患者さんで経験ができること、そしてBoardを取りたい先生にはぴったりかもしれない。
すでに1年次からその対策がカリキュラムに入っているし、2年生になればそのためのクラスもある。ファカルティはいずれもBoardをとらせたく、みんな親身になって相談にのってくれる。

私はUSCに受かって他がすべてダメだった時から絶対にBoardを取る!と決意していたので、本当に偶然だったがこのプログラムに入れていただいて大変感謝している。

当初はその圧倒的な分量に逡巡もしたが、今は日々Board対策で燃えている。

やはり短期的な目標はモチベーションを上げる燃料としては必要だと改めて認識した。

Board筆記試験は来年の5月。それまでにベストを尽くしたい。


2015年1月31日土曜日

Robert Salehrabi、来る

USCのエンドを代表する、AAEのRecommendation speakerの一人、Dr. サララビを日本の歯科医師の方はご存知だろうか?

かの有名な、根管治療した歯の8年後の生存率を調べた論文の著者である。

イスラエル人の彼は、USC Grad Endoを2004年に卒業。

現在はデンバーで開業している。

そんな彼がUSCに講義しにやってきた。

テーマは破折の診断、予後、そしてマイクロスコープを用いた”現代の”治療法について。


結論から言うと、私が今まで聞いた講演の中でもベスト3に入るくらい感銘した。

非常にorganizedされたプレゼンで、テンポが良く、臨床例が外科治療を含めて非常に豊富。診断と実際の治療が実にうまくリンクされていた。またレントゲンの精度も非常に高く、口腔内写真も綺麗で見やすかった。

そしてやはり、ラスティンの影響を受けているせいか?彼の術式や紹介医に対する考えは実に保守的である。どこかで習ったことと似た?コンセプトを持っていた。

紹介医に対しても診断上エンドが必要なければ断固としてしない、いわゆるお金のために不必要な根管治療はしない、という考えであり、GPからの患者の不適合補綴物に対しても容赦なく紹介元にツッコミを優しく入れて除去する。

私には、彼は原理主義者のように映った。

この日の午前中のレクチャラーが何でもかんでも必ず、CBCTが今後は必要!という商売っ気ありありの方だったので差がひときわ大きかった。

レジデントからのツッコミ&質問も実にしっかりとそして確信を持って返答する。

写真通りにかなりの威厳と風格を感じた。

また彼の英語は実に聞き取りやすい。

実は渡米して初めて最初から最後まで、雑談、ディスカッション含めて内容が理解できた。

これは英語が進歩したということだろうか???

それはさておき今年のシアトルのAAEにもしサララビが出講するなら、ぜひ講演を聞かれることをお勧めする。ただその時は、携帯電話はマナーモードかオフにしていた方が良いだろう(笑)