またUSCのGrad endoのobjectivesの中の一つにBoard認定の専門医になることが定められているので、受験は任意という名のmandatory(義務)である。
昨日も2年生レジデントがカナディアンボードの試験を受けてきた。カナディアンボード試験はアメリカンボード試験よりも簡単であると言われており、自信のないレジデントはまずカナディアンボードの受験を勧められる。
上級生に聞くとボードの試験対策は前の年の12月の冬休みからで十分だよ的な話が多いが、私の場合は言語にハンデのある日本人なのでこれは完全に当てはまらないだろう。
このボード試験で厄介なのが、これを勉強しましょうという定め、決まり、範囲が全くないということだ。つまりエンドに関わるすべてが試験範囲ということになる。
しかし、実際はいろいろな意見がある。
私が聞いただけでも、Pathways of the pulp, Dental pulp, Inflammationはまずはボード試験への入り口だという声が多く、この3つをコンプリートするだけでも気が遠くなるのにそれに加えて、最低ここ3年以内のJOEに、クラシックなランドマークアーティクル、日々のliterature review論文、さらにこれにボード対策講習会で提示されたものを足したものが最終的な範囲になるそうである。
正直、今の段階から気が遠くなりそうなくらいのテスト範囲であり、これらを読破するだけでも難しいのに記憶をしなければならないのか(しかももちろん英語)と思うと一気に歳を食いそうである。
一応、Inflammation, Dental Pulpには和訳版が存在する。
ただ両方とも既に廃版である。
私はInflammationの和訳は持っているが、Dental Pulpのは持っていない。
しかもDental Pulpは既に2度以上新しいバージョンのになっており、和訳版が最後に発売されたのは1988年!ということを考えるとあまり意味はないのかもしれないが・・・
2年生になると対策講義があり、通常のliterature reviewに加えてその分の学習もしなければならない。従って今からできることはやろうと、最近は与えられたliterature以外に上述の3つの教科書をまずは読破し内容を把握することから始めている。
上記3つの教科書の中では、Pathways of the Pulpが最も臨床に即していて読みやすいのでまずはそれからスタートしている。
サウジアラビアからのレジデントはボード試験にパスすることがmandatoryだという。(そういう契約でここに来ているらしい)
私はmandatoryではないが自分の新たな学術的な目標にしている。
これは一見すると完全に無謀なことかもしれない。
TOEFLを最初に受験した時と似ている。
しかし、あのTOEFLでさえもクリアできたのだ。
Boardだってできないはずはないし、これをパスしないとここに来た意味がない位に思っている。
しかし、最近思うことが聞くこと、喋ることもハードだが何が一番ハードかといえばReadingであるということを思い知らされている。
読めば読むほど知識がつくのはわかるが、一度不慣れなワード満載な論文に出くわすと1つ読むのに数時間を要してしまうので調子が狂ってしまう。
とにかく理解できないと先へ進めないタチなので、余計に時間が掛かる。
今のところ、1日最低2本は読まないと消化しきれない。
しかも来週のlit. reviewがトロントスタディでこれがまた本当に面白く無いのでここ数日は完全に”作業”になってしまっている・・・。
さて、論文をどう読むべきか?というご質問をよく受ける。
例えばTOEFLの勉強をしているときに、ある先生はcritical readingなる読み方を提唱していた。つまり要点だけ捉えてすべてを読まないと言うやり方である。
しかし、結論から言うとこの読み方は歯科では通用しないだろう。
例えば前述したトロントスタディの中で初期治療(抜髄、壊死歯髄)の成功率を調べたものがある。そこによれば抜髄の場合92%, 病変がある壊死歯髄の場合74%だという。
しかし実際この論文では顕微鏡もNi-Tiも使っていない。
つまり、現代の多くの歯内療法専門医が行っている術式ではない。
そのことからこの数字をそのまま間に受けることはできない。
しかしそれでも抜髄で92%という数字はいかに無菌的な処置を行うことのほうが各種機材をそろえるよりも大事か?ということを示しているが、一度感染した歯を治療する際には裸眼は厳しいなという印象になる。
このように中身を精読しないと、自分がどう感じるか?がでてこない。
また第3者がどう感じているかも大事なわけで、私は今の所エンドの論文を読む際はまずABEのサイトからダウンロードできるLiterature review gideなど持っているものからまずはサマライズ(アブストラクトではなく、サマライズ)を探す。これでその論文が言いたいことが先に把握できるので、結論がわかった状態で読むと読み方も変わってくる。
今月末にはカンザスでボードレビューがあり、多くの2年生が受講するようだ。
試験は5月のAAEの次の週。
2年生は皆忙しく勉強している。
もちろん診療もこなさなくてはならない。
気づくとあっという間に1年が過ぎようとしているのに本当に驚く。
このブログも始めた頃はおそらく愚痴ばかりだっただろうが、今では前向きに勉強、診療ができている自分がいる。
与えられた環境でベストを尽くすこと、逆境と悔しさの中からこそエネルギーは沸き出ること、そして頑張り続ければ誰かが見ていてくれることをこの留学生活で改めて感じている。
なぜ留学してまで・・・とよく聞かれることがあるが、それは自分の中でまだまだこんなもんじゃない、という思いがあるからだ。
1つのステージを越えてももっと自分は良くなれるんじゃないだろうか?
もっと自分は変われるんじゃないだろうか?
もっと違う世界があるんじゃないだろうか?
と常に変化を求めてしまう。
好奇心と言ってしまえば言葉が軽すぎるかもしれないが、考えるよりも先に行動してしまうたちなので始末に追えない。
このように来るべきボード試験の学習も既に始まっている。
やること満載でいつもパソコンの上で力尽きて寝てしまう。
とにかく今は何も考えず、前へ突き進むのみである。