2015年8月30日日曜日

患者さん・歯科医師の方へお知らせ

福岡市・東区のまつうら歯科医院の理事長ブログでもすでに告知しましたが、私の方から患者さん・歯科医師の方へご報告があります。

1つは、帰国後のお話です。

色々検討した結果、福岡市でまずは歯内療法専門歯科医院を新規で立ち上げることにしました。



最大の理由は福岡市・九州地区には、米国歯周病専門医、米国補綴専門医はいますが、米国歯内療法専門医はいない、ということです。

また、歯内療法専門の歯科医院もありません。

それによってこの瞬間も多くの患者さんが、歯内療法の問題解決を必要としているのにもかかわらず、それを受け入れる場所がないのです。

地域差(東京との差)、世界差(米国との差)を埋めていくため、この地で頑張ることに決めました。

正直いうと福岡・九州で歯内療法専門医の需要がどれだけあるか?未だ未知数で不安な部分も大きいですが、

USC歯内療法科が掲げる、

『文化的・人種的な違いをもったレジデントを、それぞれの国・地域で歯内療法の水準を向上させる指導者、メンターとして資するように鍛える』という理念に後押しされ頑張ろうと決めました。

米国での歯内療法専門医の一般人への認知度、知名度、重要性、高待遇、子供の教育を考えるとこちらに残ることも正直、考えました。

また、新規事業に否定的な日本に比べ、すべての人に平等にチャンスがあるのはアメリカの本当に良いところです。それも魅力的でした。

しかし、最終的には上記のような理由(使命感)により、私は日本に戻り福岡・九州地区でまずは歯内療法の重要性を認知してもらうべく、尽力することにしました。

新しい医院の名前も決めました。

最初はシンプルに、“松浦歯科医院”としたかったのですが、原田のこの医院もまつうら歯科医院の為、混乱が生じるとまずいと思いこの名前は断念しました。

また愛着があった、“まつうら精密歯科医院”の名前の復活も考えましたが、もはやこの文言は精度の高い補綴や修復治療を指す言葉として歯科界でも十二分に認知されてきたと思いますので、歯内療法専門医として紹介を歯科医師の方々から受ける身としては誤解を与えるのは不適切と考え、この名前も断念しました。

英語名やカタカナも考えましたが、どうしてもピンと来ず、色々と考慮した結果、歯内療法のみを行う歯科医院として認知していただこうという趣旨で、

まつうら歯内療法専門室

としました。

とはいえ、まだ保健所にも相談していませんしこれが認められるのかどうなのかは、正直未知数ですので今のところ仮称とさせていただいています。

HPも簡素ですが、自分で作成し完成させました。→ まつうら歯内療法専門室 HP

ただしこれは告知用のHPですので、6月なかば以降に新しいHPを公開していこうと思います。

厳密には6月のcertification授与式まで、Endodontist(米国歯内療法専門医)ではないですので。

開業までのタイムスケジュールですが、今年の12月に帰国してそのまま銀行と交渉し、来年の4月中での開業を目指しています。

何せ、自分の生活すべてをかけてアメリカに来ましたので、帰国後すぐに働ける状況にしておかないと冗談抜きでまずいことになるからです。

4月は大学院の春休みが2週間ほどありますので、その時から診療しようと考えています。(プレ開業)

また大学院は来年の5月13日で卒業となり、6月半ばの歯内療法専門医の授与式まで雑務等を行わなければなりませんが、それまでにすべての雑務を終了させる予定ですので、5月半ばに日本に一時帰国して再び診療、そして授与式前に再び渡米、7月頭に帰国、そのまま日本で診療という形を予定しています。従って本格的なスタートは7月からとなります。

ただ、4月、5月〜6月も月の半分は診療いたしますので、4月に開業としました。

診療場所ですが、福岡市内某所を予定しています。実は本当にまだ決まっていません。

東京と違い福岡には私が希望するような物件がなかなかありません。

現在、物件等を探していただいていますのでじっくりと考えたいと思います。

診療時間は、USCと同じく月〜金までの8:30~17:00で土日祝日は休診とさせていただきます。

また、USCと同様に完全予約制、ユニットは1台で患者さんが診療室で別の患者さんと顔を合わせないようにし、1人1人の診察・治療に十分な時間をかけた診療を行いますので、完全自由診療とさせていただくことにしました。

詳細が決まり次第このHPで告知していきますので、よろしくお願い致します。

さて、2つ目の告知は12月帰国一時帰国に伴う理事長診療です。

12/5~12/30まで日本に一時滞在する予定ですので、歯の痛みや根管治療の問題でお悩みの方の診察を原田のまつうら歯科医院で予定しています。

ご希望の患者さんは受付まで、ご連絡ください。

ただし、歯内療法以外の診察は行いませんのでご了承ください。

また、この12月の診療をもちまして私が原田のまつうら歯科医院で診察するのは最後とさせていただきました。

原田には本当に色々な思いがあります。

個人的な事情で勤務を止めて、開業しようと決意したもののお金もコネも財産もない私が開業まで至るには実に困難を極めました。

色々な方々の支えで小児歯科専門歯科医院を譲渡させていただき、現在の診療形態に変えていくのにも非常に苦労しました。

私の父は2007年に還暦を前に亡くなりましたが、生前に “ここ(原田)がずっと続いてくれるといいけどなあ。。。” とよく言っていたのを今でも思い出します。

この思いを考えると複雑ですが、専門医として前を向いていきたいと思います。

ご来院いただいた患者さんには大変感謝しております。

今まで本当にありがとうございました。

私と某所でお会いすることがないように(笑)、原田でメンテナンスを頑張りましょう。

さて3つ目は歯科医師の方への告知とお知らせですが、今年の年末、東京でNYU(ニューヨーク大学)補綴科出身で米国補綴専門医のの白先生と再びコラボレーションで補綴・エンドセミナーをすることになりました。

内容は留学情報と、USC歯内療法科プログラムの特徴などを話す内容になっています。

内容は気軽に聞ける内容となっていますので、よろしければご参加ください。(詳細は、来月の歯界展望で広告されるとのことです)

以上、長々と失礼致しました。

2015年8月25日火曜日

留学希望者の方へ〜留学前に卒後の進路を真剣に考えよう

現在、帰国してからの開業を模索している。

銀行、税理士、諸先生方etc...と色々な人と相談し、自分の進路は固まった。

しかしながらここに来て壁にぶち当たってしまった。

問題は銀行とテナントである。

銀行は当初、福岡でやるなら喜んで協力します!であった。

裏を返せば、福岡以外だと認めないということ。

しかし、実際に話を振ると、現時点では海のものとも山のものとも知れぬ、”歯内療法専門歯科医院”の開業への投資を完全に渋っているようで、私としてはハシゴを外された気持ちだ。

そこに行き着くまでに多くの葛藤があったのにもかかわらず、である。

私は両親が歯科医師でも何でもないただの一般人。

悲しいかな何の財産もない。

留学費用はすべて自分で手出ししている。

誰かが私を救済してくれることもない、叩き上げの1代目だ。

そのため、帰国後すぐにゴージャスなエンドの歯科医院オープン!というわけにはいかない。

華美でない標準的なUSCのGrad Endodonticsのような質素な感じで十分にいいのだが、それさえもクリアできなさそうである。

つまり、現在手持ちのもののみで必要最小限度の開業を再び迫られることとなりそうだ。

プロエルゴは取得したかったが・・・。。。

増設に備えたかったが・・・

全ては夢と消えそうである(笑)。

しかし、それでも与えられた条件のなかでなんとかしなければならない。

すると、方法としては

1. 駅周辺で10〜20坪のテナントを探す

2. 駅周辺で10〜20坪の居抜き物件を探す

3. その上で格安の内装業者を探す(配管のみは歯科関係者にしてもらう)

4. ユニットから何からすべて中古かリース

という選択肢しかないので、それを元にして以前から目をつけていたすべてのテナントの状況を不動産会社に問い合わせたが・・・私が予定していた場所は結論からいうとなんと現時点ではすべてNG!!であった。

テナントの問題が発生したのである。

その駅周辺のテナントはオフィス用に建てられた古いものが多いので、貸室内に水回りが必要なクリニック(医科・歯科)、エステ、ネイルサロン、リラクゼーションマッサージなどは貸室内に水を引くことをオーナーが拒否(もし水漏れして、下の階に水が漏れた場合、パソコンなど、OA機器が壊れてしまったら保証ができない、と危惧)。

もう一つは一つのテナントに歯科を何件も入れたくない(その先生との競合?をオーナーが嫌がる・・・歯内療法専門医院は他のGPと競合には全くならない職種なのだが・・・説明しても違いは一生わからないだろう。。。)ことだという。

また不幸なことに、この駅周辺では10坪前後のテナントで開業していた歯科医院というものがほとんどないため、この駅周辺でやるには20〜30坪の許可された場所で開業するしかなさそうである。

幸いまだまだ時間があるので、不動産屋は色々と探してくれるということだが、日本にいないので十分な検証ができない。。。

さあ、先が見えなくなってきた(笑)。

そうこう考えると、すべてをひっくり返したくなるのはなぜだろうか?(笑)

カリフォルニアは住むには最適の場所だ。

人は明るい、多様な人種、温暖でマイルドな気候。

今まで暮らした中で最も住みやすい。

子供も英語を中心に会話するようになってきた。彼らの将来も考えなければならない。

しかもこちらで生活していれば、州ごとに職種ごとに最低年収が定められている。

例えば、某州ではEndodontistの最低保障年収は日本円で5000万だという。

しかも週休3日だ。

こちらでは、Endodontistという仕事が誰からも認められている。

タクシーの運転手のような歯科とは全く無縁な一般人でさえも、『お前、将来は確実だな!おめでとう!』というリアクションである。

それを思うと、こちらに残るという選択肢も考えた。

こちらで考えられる進路は、

①どこかに就職

②自分で開業

の2つであるが、②はまず無理だ。従って①ということになる。

実は仕事を見つけるのはかなり容易で、数件の歯科医院を紹介してもらったくらいである。彼らはビザのスポンサーになってくれる。

しかし、最大の問題はビザである。

外国人は何らかのビザがなければ、母国に帰らなければならない。

もし、このままの滞在を希望するなら歯科医師の場合、多くはH1bビザ(移民法が規定したProfessionalに発行されるビザ)が必要である。

アメリカが景気が悪かった時代、H1bビザは問題なく取れていた。

しかし近年アメリカは好景気で、今年、去年、一昨年は85000人という枠以上の外国人応募者が殺到し、抽選である。(今年は27万人が殺到)

クジに自分の運命を任す猶予は私の場合、ない。

アメリカの景気が悪くなることを祈ってもどうしようもない。

また頼みの綱のOPTビザも日本の大学院を卒業して学位を持っていない私は対象外。

しかもこちらに残るには、NBDE(ナショナルボード)Part1&2、WREB(西海岸で働くための試験)をパスしなければならない。

大学院で死ぬほど忙しい現在、NBDEを勉強する余裕はもはやなく、しかもNBDEはTOEFLと同じように有効期限があるため、今の私にはこちらに残るために何年もクジに人生を任せるという選択肢はもはやない。

それでは、ファカルティになるのは?といえば、これもエンドの場合は難しく、しかもかなり不安定な(上の気持ち一つでいつでも切られ飛ばされる)ため、それもまた時間の無駄というものだ。

以上勘案すると、やはり日本で何とかして開業しなければならない。

この結論を導き出すのはもう何度目か・・・。


さあ、今のところ私の条件は

① 某駅周辺で徒歩10分以内でミニマム開業

② 大きな坪数の居抜き物件で初期投資を低く抑え(しかし月の負担は大きくなるが)開業

③ テナントが豊富な見知らぬ場所で居抜きで開業

④ 自院(原田)で数年、歯内療法専門医として勤務して開業

⑤ ①〜④かつ/または 大きな法人でお抱え専門医として雇ってもらう(どこにそんな需要があるのだか)

の5つの選択肢しかなさそうだ。

これ以外にもやらなければならないことが多々あり、途方に暮れているという現状。

1つ1つ、この縺れた糸をときほぐさなければならない。

もう少し根気よく、①を続けていかなければ・・・・

さて、こんな私のような失敗?や葛藤をしないためにも留学希望者には卒後のプラクティスを明確にして渡米されることをお勧めする。

下世話な言い方だが、大学院への投資は回収しなければならないので。。。(短期のコースやCEコースとは訳が違う)

もしお抱え専門医として迎えていただける余地があれば、いつでもお話しお待ちしてます!

2015年8月6日木曜日

USCでの初めてのApicoectomy

今日はUSCに来て初めてのサージェリーの日だった。
午前中に#8の歯根端切除術。
午後に#3のRoot amputation。
日本で外科の経験はあるものの、外国人の外科治療だしやはり勝手が違うだろうから最初の日はとにかく少し緊張した。

USCでの外科治療の特徴は、まず外科前にCBCTを必ず撮影。その後、ファカルティと以下のようなことを議論しパスすると外科のGoサインが出る。

USC Grad Endo: Topic to be discussed when surgical case is presented to a faculty member
1. Pre-op preparation (making a foundation for success)
a. Diagnosis-options/informed consent, med bx., restorability
b. Retreat or not.
c. Oral hygiene instruction, cleaning o f surgical area, chlorhexadine rinses before and day of surgery etc.
d. Local cleaning while anesthesia is taking affect

2. Set-up-
a. prepare for all contingencies
b. thoroughly check set-up for completeness and all devices are working
before seating the patient.

3. Anesthesia & pre-op meds (decadron, nsaid's, antibiotics,others)

4. Flap design and anticipated suturing technique
a. Vertical releasing incisions, yes or no and if yes where
b. Horizontal: lntrasulcular full thickness, Luebke-Ochsenbein
c. How to raise flap
d. How to handle papillas

5. Location of apex
a. What does operator expect to see when flap is raised
b. Strategy for locating apex

6. Apicoectomy-yes or no and why
a. How do you know i f apicoectomy is complete?
b. Inspection ofroot with explorer, fiber-optic and/or metheline blue.

7. Removal oflesion-Biopsy! (prepare patient for cost).

8. Hemostasis- epi, Ca(S04), Fe(S04), pressure etc.

9. Apical prep-yes, no and why
a. depth
b. isthmuses
c. in canal with gutta percha
d. in non treated canals

10. Apical filling material- when, what, how mixed and placed
a. MTA
b. SuperEBA
c. Bonded composite
d. Xxxxx

11. How, whys and when for different suturing techniques and suture materials and needles.

12. Post-op instructions and meds.

13. Follow-up appointment plan

外科中は必ずファカルティがそのレジデントに張り付き、術中も容赦なくステップづつ途中で止められ確認・必要があれば修正をせまられる。

しかも最初は必ずDr. Shectherと行わなければならず、彼は外科中普通に止めてブラックボードに呼び出しそうじゃねえ!こうだ!と指示を出してくるので治療時間が倍以上かかってしまうのでみんなナーバスになる。

Dr. Shectherは切開、剥離、骨削除、レトロプレップ、MTA逆根充、縫合と全てに渡って真横から指示を出してくるので患者の麻酔が途中で切れてしまうことが多い。
今日も朝の歯根端切除術は9時半から始まり終わったのが12時だった。



この歯はもしアマルガムがなければもっと短時間で終わっていただろう。
アマルガムを歯根端切除、逆根管形成でいかに除去するか?というのが今日の最大のテーマであった。

なるべくアマルガムを骨窩洞内に拡散させたくないため、またMTAによるシーリングの厚みを極力確保したいため、如何にアマルガムより上の歯根を切除せずにアマルガムをバーで削ることなく取り出すか?がポイントであった。

指示通り、アマルガムを削ることなく除去したがアマルガムが根管内に残存してしまった。



しかしこれを指示通り除去。ポストまで逆根管形成し、MTAで根充した。




縫合も顕微鏡下で行わなければならず時間を要した。
特に1次治癒を狙うため弁の断端と断端が揃っていないともう一回やり直しを宣告されるので高倍率で縫合のやり直しをせざるを得なかった。

今回は前歯部だったので、切開はlntrasulcular full thickness, Luebke-Ochsenbeinの混合であった。やはり縫合がpapillaにかかった場合、そこに針を通すのが非常にテクニカルセンシティブで途中で何度も止められてややイラっとした感は否めなかったが(笑)、こうして一つ一つのステップでああだこうだと指示されたことがなかったので非常に有意義であった。

USCでは卒業までに最低10の歯根端切除術を行わなければならない。
従って、午後のRoot amputationはrequirementに含まれない。
ただ例年、どのレジデントも20の外科をこなして卒業しているので症例数に関しては心配はなさそうである。

なんといってもUSCでは歯根端切除術はCT撮影費用を含めてもたったの150ドル!なので合理的なアメリカ人は再治療よりも外科を行いたいという人が多い。

ということで今日1日は非常に長かった。。。
このままゆっくり寝たいところだが、明日までに症例のケースワークをしなければならず今日もあまり寝れそうにない・・・