2015年9月21日月曜日

USC Japan Program, エンドハンズオンコース

今週末は昨年に引き続き、USC Japan Programのエンドのハンズオンコースを手伝った。

ただ私はファカルティからもこの事務局からも何の連絡も数日前まで受けておらず、やはりいきなり来い!であった。(しかも場所も時間も何も知らない)

講師はDr.ラスティン、Dr.リービィ、Dr.バダーン、そして昨年卒業したDr.タリムの4人で私はトランスレーター。

私は彼らの講義を日本語に訳する係りで、ジョークとスラング以外はなんとか頑張りますという挨拶の後、6人の受講生の先生とともに講義・実習開始。

アクセス〜根管充填までを早足で駆け抜けたのでこの手の話が初めての先生には大変だったかもしれない。

しかし去年と違い、講義・実習とも非常にorganizedされていて見事なものであった。

聞けばDr.タリムが作成したとか。

さすが、彼はレジデントの時から非常に頭も腕も切れていたので、このまま日本に行ってもいい話をすると思う。

受講生の先生には、ボルテックスブルーを用いた根管形成、ブキャナン法(コンティニュアスウェーブコンデンセーションテクニック, CWCT)とシルダー法の2種類の方法が伝授されたが、それ以上に重要なことは根充方法によりアウトカムでの違いがないこと、ラバーダムを始めとする細菌感染の可及的防御・除去であるということが強調されていた非常に良い講演であった。

しかし拙いながらも彼らの講義の訳ができるようになるとは自分でも驚きであった。

しかもただ訳すだけではなく、ここで一番言いたいことはこういうことでこう伝えた法が分かりやすだろう・・・とサマライズして行ったので、自分の頭の勉強にも非常に役立った。

また実習中、初めてと言っていいだろう、私はチェアマンのラスティンと初めて1対1で30分程度話をした。

このコースに対する彼の意見は、日本のGPの参加者のレベルがわからないので何を基準にして指導をしていいのか分からない(事前の情報が不明)ので困る、というものであった。

そして彼の本心を私が代弁すれば、願わくばエンドに興味ある先生だけを集めてのセミナーでやってほしいというものであった。

事実、この実習では抜髄の根管形成〜根管充填ができることを目標にしているので顕微鏡を用いた実習ではない。

これはラスティン曰く、”受講生が全員、マイクロに慣れていれば良いがどの程度か分からないので、顕微鏡の取り回しに時間をかけれないので”ということであった。

そして、もしお前が日本からエンドで歯科医師を連れて来れば、アドバンスコースとしてUSCのエンドのクリニックを使ってマイクロを用いた実習をやっても良い、企画書を持ってこいと言われたことだ。

ということで2年間、無報酬・無連絡のボランティアで携わってきたこのエンドのハンズオンコースですが、私が手伝うのもこれで最終回。

来年以降のこのコースの日本人の受講生の方は、”エンドのことがわかっている日本語通訳者”がいなくなるので少しタフかもしれませんが頑張って下さい。

私は帰国後、ラスティン先生が言われるようにもう少し内容を精査+グレードアップしてUSCのクリニックでマイクロを用いたUSCのファカルティによる講義(1日)+実習(2日)を合わせたエンドだけの3日間コースを企画しますのでまたそれはいつか告知できればいいなと思っています。

最後に、コースに参加された先生には講義のスライドをPDFで送りますのでしばしお待ち下さい。

2015年9月8日火曜日

歯科医師の方へお知らせ

今回は、歯科医師の方向けにお知らせです。

NYU(ニューヨーク大学)歯学部補綴科大学院卒で、米国補綴専門医の白先生と今年も年末に歯科医師向けセミナーを行うことになりました。



今年はUSCの歯内療法科で行われている診査、診断のプロトコールや考え方を、ABE(American Board of Endodontics, AAEのボード認定試験を取り扱うところ)のWritten Exam, Oral Examのガイドラインやこれまでの Annual Board Review Course and Scientific Updateをベースにして、エンド領域における診査診断についてGPの先生向けに3時間お話しさせていただく予定です。

年末とお忙しい時間で恐縮ではございますが、よろしくお願い致します。

2015年9月6日日曜日

歯科医師としての生き方

開業に向けて物件探しを遠隔から行っているが、これがなかなか難しい。

これはこの地域で誰もしたことがない開業をしようとしているからであるのはもう理解している。

何も事情を言わずに相談すると、折角紹介されても坪数が30前後だったりする。
通常、我々Endodontistが開業するには15坪もあればいい。
ユニットは1台。(もちろん、リコールや器具のセットアップのために、ユニットが2台あるに越したことは無く2台が置けるギリギリが15坪だそうだ。)

しかし、この15坪前後で歯医者に貸してもいいよというテナントが福岡にはほとんどないのだ。つまり、もしそうした条件に該当した物件があれば、急いで決めなければならくなる。帰ってゆっくり探せばいいじゃないか?と言われることもあるが、全財産をUSCにつぎ込んでしまったため、そのような悠長なことは言ってられないのだ(笑)。

また、内装ももう一つの最大の問題だ。
歯科の内装というと、坪50~70万が標準だという。
居抜き開業しか経験のない私にとって、この金額は高過ぎる。
しかも15坪のような狭いところだとその坪あたりの金額がさらに跳ね上がるという。
言葉は悪いが、crazyだ。
これをファカルティ連中に話すと、お前はどんな豪華なモーテルを作る気だ?と茶化されてしまった。
なぜなら、Endodontistのクリニックには、派手な外装も内装も要らない。
それが証拠にUSCのGrad Endoのクリニックを見ればわかるが、真っ白い壁にA-decの百数十万の簡易なユニット、レントゲン、そして顕微鏡。スピットンも無い。患者さんは排唾菅で口を濯ぐ。
私は意を決して、歯科専門ではない業者を探すことにした。そして配管に関しては今までもお世話になってきたHさんになんとか頼むしかないだろうと思っている。

また、ものすごくいい場所にあっても歯科には貸さない(同業者が既に入っているor水回りの工事が必要な業者は歯科に限らずお断り!)というテナントオーナーが多く、場所をもう少し広範囲に設定し直すことにした。
しかし、我々EndodontistはGPと競合することは100%無い。修復治療もメンテナンスも無い。補綴もインプラントもしない。保険診療もしない。衛生士も必要ない。最悪、自分だけでもできる。ただその事実は、アメリカならまだしも日本では誰も理解できないので、もはや説明することも諦めた。

またいわゆる歯科医院の居抜き物件も紹介された。
その中で印象的だったのが、そりゃあものすごい一等地、外観も内装も一流ホテルか!?と言わんばかりの歯科医院。

HPを見ると、審美歯科に重点を置いているようだったので、この一等地でなぜ売却?と思いきや、家賃がものすごく高いし、坪数も僕の必要なキャパをはるかに超えている。
しかし、不動産屋さんも今まで私のような開業を試みる歯科医師に当たったことなど無いので、本当に15坪前後でいいのか?と何度も確認されてしまう。彼らを随分と困惑させてしまっているのだろう。

とそんな矢先に、なんと素晴らしい物件が見つかった。

私の必要な坪数を満たしていて、歯科OKである。
しかも比較的安いし、私がかつて住んでいた生活圏にありそこなら駅との行き来も問題ないだろう。
ただ問題は人気がある場所なので他に流れる可能性も十分にあるということ。。。
タイミングがいいのか悪いのか。。。

また、機材に関してだが、基本的に今USCで使用しているものを全てそのまま持ち帰るので、必要なのはレントゲン、ユニット、オートクレーブのみである。
これはリースを組んでしまえば、どうやら私の開業は1000万以内で、内装の額次第ではそれ以下でなんとかなりそうだ。

CBCT、マイクロもプロエルゴを揃えたいところだが、プロエルゴはこちらで中古を探してみようと思っている。CBCTは近くに撮影できるところがいっぱいあるので、ルーティンな撮影を考えていない自分としては、敢えて開業時から揃える必要はないと考えた。というより、手持ちがないだけか。

機材(ファイル、超音波チップ)はレジデントでいる間に最大限、最安値で買えるだけ買って持ち帰るつもりだ。

12月には物件を決定し、内装工事を発注。4月に完成させ、そのままプレ開業し7月に本格スタート。(と勝手に決めているだけだが)。

いよいよ、私の歯科医師人生は北米大学院レジデントを経て第2ステージ、後半に突入する。

学生時代は全く歯科に興味が無く、なぜお前はここにいる?状態だった。
勤務医になり風向きは変わるどころかより悪くなり、私がこの仕事に目覚めたのはほんの10年前。あの時は若かった。。。
今の自分から見てあの時の自分は客観的に見ると、非常に背伸びをした感じに見える。
GP時代は、様々なものと戦わなければならなかった。
より良い治療をめぐる、患者さんや同業者との戦い。
そうした戦いを経て自分自身わかったことは、私はスーパーGPとしての才覚も才能もないということだった。

私の友人の歯科医師の中には本当にすごい人がいる。

スタッフを何十人と抱えて、モチベーションを高め保険も自費も無く、まさにチーム一丸となって歯科医院を繁盛させている。行列ができる〜ではないが、本当に敬服に価する。

また同じ福岡では、”本当の”インターディシプリナリーアプローチを行っている歯科医院がある。患者さんに全てのレベルの診療科目を提供されている。私がインプラントや補綴が必要になれば、間違いなく患者として通うだろう。この歯科医院はきっとこれからの福岡の歯科界をリードするに違いない。

しかし、私は?といえばどうやらこうしたことを実現・実行する、才覚もないし何せモチベーションが全く湧かなかった。
他人は変わらない、が私の持論で、目標が違う人間同士が集まっている歯科医院という集合体では、どれだけ妥協して着地点を見つけられるか?しか彼らとの交渉の余地がないなどと考えていたからで、それは今でも変わらない。いろいろな人に勧められて、いろいろなコンサルタントと呼ばれる人を起用し、いわゆる医院の構造改革を試みたが、結果は全く出なかった。

どうやら、私はどこかの元・捕手のように月見草のようにひっそりと決して主流派になること無く、少数精鋭でニッチな存在感を発揮する方が性に合っているようだ。

この10年で私は、歯科医師としての私の生き方、心地よさを見つけたように思う。
もし10年前に業者に勧められるまま某都市で1億近いお金を借りてあのまま開業していたら・・・私は今ここにはいなかっただろう。この第2ステージは自分らしく歯科医師人生を過ごしていこうと思う。