先週の患者さんでロシア人の20代女性の再根管治療があった。妊娠4ヶ月。referral(外部)からの紹介で2時間半かけてUSCまで来院してこられた。
主訴は#13(左上第2小臼歯)の鈍痛。壊死歯髄の根管治療後激痛で夜も寝れなかったという。今は落ち着いている。
既に前医が根管治療に着手しているが根管が極端に湾曲しているとの事でEndoのresidentクリニックを受診された。
紹介状には、#13の根管治療宜しくと一言だけ書いてあった。。。
既に打診や圧痛は無い。ポケットも正常。動揺も無い。
レントゲンを撮影。根尖部に大きな透過像がある。ただ根管がいつもと違う。正方線では1根管に見えるものの、偏近心では根管が複数あるように見えた。
診断を行ない、ファカルティに根管が複数ある可能性を説明。レントゲンを見せるとこれはいいケースだ!と患者さんの前でにこりを笑うKallman先生。
麻酔してラバーダムをかけテンポラリーを除去すると根管は激しく汚染されていた。そこをヒポクロと超音波で徐々に奇麗にしていく。するとぱっとみ2根管性であったが、イスムスが見えたため、その除去に追われる。格闘する事30分、ついにイスムスはなくなり、やはり何度見ても私には2根管性にしか見えなかったので、ファイル試適して偏心撮影し教授のロヘスに見てもらった。するとやはり明らかにファイルの入っていないもう1根管がPAで見えるのである。どうやらこれは頬側根管が途中で2つに分かれるパターンのようだった。3根管である。私は恥ずかしながら生まれて初めて上顎の小臼歯で3根管を見た。教科書や論文では見た事ある3根管についに出くわすとは!しかも私が触知できたこの頬側根管(恐らく頬側近心根)はファイルをベンディングしていかないとApexまで到達しない。なんと遠心口蓋方向にフックしているのである。ちなみに口蓋根は根尖部の吸収が起こり、顕微鏡で根尖部が確認できる。ただ頬側は#8のC+ Fileでようやくネゴシエーションさせて終了になってしまった。
実にいいケースであったのだが、彼女は今月出産でロシアに帰るという。
ロシアは空気が悪くて寒くて・・・ここが一番だけど・・・やっぱり実家が一番安心できるから。。。と少し神経質な様子が伝わったが、ご主人の年齢が50代後半である事を考えると何となく彼女の事情が把握できてしまったが、私にとっては大事なケース。1年後に連絡するから必ず来てね、と伝え水酸化カルシウムを貼薬し、コンポジットレジンで仮封?して終了した。
治療後、今後の方針を教授のロヘスと相談。
まず次回CBCT撮影。そして根充。
もし半年後に治癒しなければ意図的再植を行なうように、と指示された。
根尖部が上顎洞底線を超えているからだ。但しこれは2次元での評価のため、最終的にはCTでの判断になる。
いずれにしても、再治療が奏功するかどうか経過を追わなければならない。
こうした難しい、稀なケースに出会えるのも、大学病院の歯内療法科に在籍しているからこそだろう。
さて、今更だがこちらでは歯の番号を#1〜#32で表す。
乳歯なら、a〜tで表す。
つまり例えば成人なら以下のようになる。
#1,16,17,32がそれぞれ上下左右の親知らずになる。
また小児なら、以下のようになる。
一番ややこしいのは混合歯列で、a,bやらi,jなどが#19,30などと混じるのでそれはもう混乱する。日本式のD,Eや#11,36などのFDI表記の方がその番号を見ただけで歯のイメージがつきやすいのだが・・・
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