2015年7月11日土曜日

疼痛管理に明け暮れる日々

6月半ばから2年生になり渡米からはや、1年以上が経過した。

今学期は忙しいなんてものじゃない。
毎週月曜日には解剖の授業の小テストが常にあり、その勉強をしなければならないし、literature reviewも同じ月曜日に移動したため、週末はもはやこの2つの準備に追われる始末である。平日に堅実に準備していきたいものの、今学期からナイトクリニックが火曜日、水曜日と週2回に増えたため、私は毎週このナイトクリニックで患者をみている。
ナイトクリニックとは、17:00~21:00までの夜行われる診療でありmandatoryではないが、私は常に両日共に患者を入れている。理由は至極簡単で、高い学費を払っているのだから少しでも多くの患者を診ないと損する!という理由だ。日本に帰ってからこれだけバラエティに富んだ人種の患者を治療する機会はそうそうないと思う。この経験をお金で買っている感じだろうか。



しかし1日が終わると、もはや体力的には限界、家に帰るとカルテの整理や紹介元への報告書など作成しているうちに、気が付いたら寝てしまっている。

昨日はその中でも特別忙しい日だった。
フォローアップを除く患者のすべてが, "Hot tooth"を持っていたからである。

Hot Toothとは文字どおり歯が熱い→歯が強烈に痛い!!の意味であり、すでに患者は薬を飲んでも効かない状態であることが多い。

このような場合、日本では常にまずは投薬していた。
理由は簡単、もしこのような患者を診れば予約が大幅に崩れるからだ。
しかもこういう場合、まず麻酔が効かないことが多いのでどうしても治療を躊躇しがちである。

しかし、USCでは患者は痛いから来ているわけであってその歯が修復不可能でない限りは、痛みをコントロールして治療すべしという考えなので、投薬で様子見て・・・という選択肢はまずない。

しかも今学期は小学校が夏休み(6月〜8月はこちらの小学校は休み)に入っているので、子供の患者で歯が痛い!というケースが非常に多い。

昨日は7歳の女児が歯が痛くて夜寝れないと来院した。

主訴は#30で大きな齲窩があり、根未完成歯でX線的にはすでに露髄している状態であり、その他3本の第1大臼歯にもすでに大きなカリエス、さらにその他の乳歯には多数のアマルガム充填、複数本の乳歯の抜歯、保隙装置と、明らかに養育者に問題を感じさせる口腔内であった。



治療方針はVPT(Apexogenesis)ということにいなるのだが、なんといっても問題はこの7歳の我が息子と同い年のこの女児をどう治療中コントロールするか?ということである。

疼痛管理に始まり、術中の体動、口が開かない、治療にすぐ飽きるetc...などを考えると笑気の使用を強く勧めたが、拒否された。

アシスタントのキャンディに介助についてもらい、何とかなだめごまかしながら下歯槽神経ブロック&頬神経ブロックをキシロカイン2本を用いてラバーダムを装着したが、歯髄に近ずくと痛みを訴えたので伝麻&セプトカインによる歯根膜注射を追加しようとしたところで、号泣&もうやめたい(こっちがやめたいよ・・・)と言い出し、途中母親も出てきたものの、USCのPEDO専門のファカルティのDr.バダーンがヘルプしてくれ、彼女を何とかなだめ聞かし、セプトカインによる歯根膜麻酔に成功(ここでニシカさんのアネジェクトがいつも非常に役立っています、手島さんありがとうございます)、痛みはなくなり、結局full palpotomyに。

しかしなかなか出血が止まらず、ヒポクロで洗浄&止血、止血確認、止血せず、再度少しづつ歯髄除去、再度洗浄、止血、止血確認を何度も何度も繰り返した末、ようやく止血し、早く終わりたいので、Biodentine一塊で歯髄のcappingと築造を試みようとしたらバイブレーターが壊れ、結局手持ちのBC sealerとパテでcappingし、Fuji9で築造ということになり終わったのが12時半であった。始まったのは10時、診査、レントゲン、診断、ファカルティとの協議、治療前のインフォームドコンセントを母親にしようとしたらパーキングの時間があと少ししかないとかでカードを切る必要があるのでと30分以上戻らず、ようやく説明して治療が始まったのは11時10分前だった。

この時点で既に治療に通常は入れないが、女児が自発痛を抱えていたため治療すべしとなり、上記のような顛末になった次第である。

USCでは小児の患者でも、永久歯で露髄する疑いがある症例はすべてGrad Endoが受け入れている。そのため、小児の患者の数にも事欠かない。

しかし、悲しいかなこのケースはrequiementに含まれないので、私は骨折り損の・・・ということになってしまう。

しかもこの日は僕はもう2人患者を抱えており、それらも自発痛を持つ患者であった。特に最後の学生のクリニックから来た患者29歳女性は、学生が根管を見つけられない&麻酔が全く効かない、が、学生は御構い無しで治療を続行で、激痛で体は震え号泣しながら私の元にやってきた。。。それでも開口一番、うちのアシスタントがあんた金払ったの?(学生のクリニックよりもレジデントのクリニックの方が治療費が高いのでその差額を支払う必要がありそれが支払われない限り一切の治療に入れない)と患者に冷静に告げるや否や、患者は意識朦朧としながらフロントへ行き支払いを済ませ、私は一人その後始末に追われたのである。。。



エンドに興味がない人、および歯科関係者でない人でも上記の文章を読んでいただければどれだけ私が格闘したか?想像につくと思う。

今、日本ではエンドが流行っているという。
こちらでも若くしてエンドの大学院へ入ってくる優秀な歯科医師は多い。
エンドは1、2回で終了するし治療費も高いのでそれが大きな魅力になっていると言われる。
しかし、実際の歯内療法臨床とは、このように非常に泥臭いものであり、まさにEndodontistは痛みとの格闘を強いられる。歯が痛くて痛くてたまらないという患者と日々向きあわなければならない、このような環境下で揉まれたレジデントは、相当の自信がつくだろう。

今まで避けて通っていたことに向き合い、その壁を少しづつ超えているという実感を感じつつある日々である。

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