2014年9月18日木曜日

BC sealer, GC GENESYS, ProTaper Gold…新しい材料を用いた歯内療法。

現在自分の今までの術式を少し軌道修正するという必要性に迫られている。

歯質をなるべく保存しましょうと言う流れが今のエンドの潮流にあり、従来のNi-Tiテーパー.06から.04のものを主として使用するようになった事がその理由である。

今まではアピカルプラグを作業長から3mmで作製していたが、テーパーが.04だとアピカルプラグが仮に作れたとしても、その後のバックフィルする際のニードルがアピカルプラグに到達しなくなってしまう。結果気泡ができてしまい満足する根充後のレントゲンが得られにくくなってしまう。つまりざっくりいうとアピカルプラグをどの位置で作るか?という問題に直面している。
現在のところ、通常の根管の場合3mmから4mmもしくは5mmに変更している。(もっといえば、顕微鏡でアピカルプラグが視認できる位置まで)
長い根管や湾曲が強いものは、BC sealerで根充するようになった。(シングルポイント)

今日の初診の患者さんも#4で何と作業長が25mm!である。こっちの人は根が本当に長い。こんなに長いとCWCTでは厳しくなるので、BC sealer+ BC Guutaでシングルポイントで根充させてもらった。

根充の方法で予後に大きく差がでないとはいえ、何となくこのまだ道の材料で根充するのには若干ためらいがあるが運良く?日本でこのバイオセラミックシーラーに関して発表する機会があったので、その時の理論でfacultyに自分の術式を正当化させている。側方加圧でアピカルプラグを作ってその後バックフィルするという方法もあるが関羽雲長のような風貌のアルメニア人の患者に時間がないから・・・とアピールされてBC sealerで即断即決だった。日本ではまだこのBC sealerは手に入らないようだ。2本で日本円にして約15000円。ユージノールシーラーに比べ圧倒的に高額である。しかし早い。レントゲンも相当上手く見える。このままバイオセラミックシーラーがエンドの世界を席巻していくだろうか?こちらでリサーチをしなければならないのだが、やはり乗りかかった船、このBC sealerに関して調べてみたいと漠然と今思っている。

また日本に帰った時に、GCさんのご好意でGENESYSをこちらで使用させていただいている。これが本当にいい!今までのβは凄く使いにくかったし、先端が熱くなって患者さんにあたって軽い火傷をさせてしまった経験がある私にとって、GENESYSは救世主のようだ。

もうこれ無しでは生きていけないとみんなが言っていた意味が分かった。新しいもの好きのレジデントはGENESYSにビックリしていた。圧倒的にみんながBL社のものかobtura & systemBを使用しているため、このペンタイプのシステムは画期的だと思う。また別の患者さんで#3の根管治療でNEXNi-Ti rotaryも使用させていただいた。やや硬い感がしたのは気のせいだろうか??それでも治療では問題なく機能したので、日本の歯科医の方はこのシステムを使用してみてはいかがだろうか。

またこちらでいろんなシステムに親しみなさいというDIRECTORからの命で、今日からPro Taper Goldを使用し始めてみた。まだ患者さんには応用していないが、今週末早速抜去歯牙で練習してトライしてみようと思う。


今週末は日本から歯科医の方々がUSCに来られており、エンドのハンズオンコース?の手伝い件通訳を命じられてしまった・・・。
また再来週も某大手スタディグループの先生がペリオのマイクロオペの講師でperioのCEコースでこちらに教えに来られるそうで、これまた手伝いを頼まれてしまった。エンドならまだしもペリオのコースの手伝いしかもマイクロスコープ使用というのはこれまた荷が重い。。。Directorが私を通訳者として起用しようとしているが、それは2アウト満塁、一打サヨナラの状況で成績不振でスタメンから外された外国人打者を代打で送るようなもので結果は見えてるでしょうに・・・といいたいところだが何とそれを英語で伝えていいかも分からないので結局私は打席に立たざるを得なくなってしまった。

明日は午前が中間テスト(メールを送るだけ)、午後は患者さん。
終末はUSCジャパンコースの手伝いと休む間もなく9月ももうすぐ終わろうとしている。
時間経緯が最近は本当に異常に早い!まだまだシステムに慣れないが大学院生活も何とか前へ進み出した。

5 件のコメント:

  1. 松浦先生

    またもや、BCシーラー関連の記事を書いてくださり、ありがとうございます。
    アルメニアの関羽の歯の治療をなさったとは・・
    さしずめ、松浦先生は名医華陀といったところですね。

    私のほうでも、PubMedで検索したりしてみたのですが、
    Biocompatibilityがこれまでにないレベルで優れた材料ということなんでしょうか。
    きちんとしたコンセプトの基で使われることが前提にあって、
    その上で従来の材料よりもさらに良好な予後を期待できる材料ということになるんでしょうか。

    ちなみに先生は、こういった新しい材料の文献などを調べる際、
    どういったことを気にして読まれたりなさるのでしょうか?
    後学のために、ぜひご教示いただければ幸いです。

    ところで先生が貼ってくださっているProTaperGoldのパンフはすごいセンスですね。
    弊社ではこういう思い切った広告はなかなか出ないと思います。
    ヘンなことを言うようですが、パンフ一枚見ても国内と海外の差を感じずにはいられません(笑)

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    1. 手嶋さん
      『BCシーラーが、きちんとしたコンセプトの基で使われることが前提にあって、
      その上で従来の材料よりもさらに良好な予後を期待できる材料』か?ですが、
      BCシーラーは2年程前はまだ論文も少なかったと思います。今はもう少し多くなってきてるのではないでしょうか。極めて生体親和性はいい(らしい)です。そういう系の論文が数本ありました。しかしこれは私の意見ですが、CWCTでアピカルプラグを5〜6mmで作るのなら(3mmで作れないのなら)、根尖部でのアピカルプラグの封鎖性などもう期待できないわけです。事実上シングルポイント根充になるわけです。この辺って分かりますか?中にはいや一応マスターコーンをカットして加圧しているからシングルポイントじゃない!というFacultyもいます。(先週のコース担当のendodontistがそうでした)しかし、実際にはアピカルプラグに熱はあまり伝わらないし、根管への密閉性も悪く、事実上、それはシングルポイントなわけで。だから私には、シングルポイントで根管口部で切って根充するのと、アピカルプラグを5~6mmで作る事の差に意味合いがあまり感じられないのです。だとしたら、シングルポイントでは気泡が入りやすく気密性が不足するわけですから、どのシーラーでそれを行なうのか?と言えばBCシーラーでと言う話になるわけです。こういった新しい材料を調べる際には、まずこれはシーラーですのでシーラーが具備すべき最低限の条件を教科書で確認します。それからそのそれぞれのファクターについてpubmedやJOEで検索語を入れて調べていきます。実際に読む時はアブストラクトをまず読んで、僕はスライドかワードにサマライズするようにしています。じゃないと正直、読んでるだけで寝てしまうんで。作業を同時にしないと僕はダメですね(笑)。Protaper Gold、今度からクリニックで使ってみます。これはテーパーが連続的でない(variable taper)のでそれ用の根充材が必要なんですが、とにかくこの2年で色々試してみようと思います。dentsplyの影響力は凄いですよ。この前もランチボックス持参で昼休みにProtaper gold強烈にプッシュしにきましたから。こっちは他人の事はあまり尊重しない文化ですね。日本人には相容れませんが、日本の業者が彼らと戦う時はそういう事を考慮しないといけないでしょうね(笑)

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    2. 松浦先生

      アピカルプラグの3mm以上になると熱が届きにくく、
      ポイントがきちんと軟化してくれず、軟化しきれていないポイントをダウンパックする、
      というのはつまり結局シングルポイント充填と同じ状態である。
      シングルポイントという封鎖性の劣りやすい根充方法でシーラーを使うとすれば、
      TraditionalなユージノールよりもBCシーラーのほうが、生体親和性も良いようだし、
      その後の根尖部や歯根膜の治癒過程にも、良い影響を与えるだろうという感じでしょうか。

      新しい材料には、その材料に合った必要特性それぞれに
      Referenceをパンフレット等に提示しておけば、先生方も調べものがやりやすいでしょうか。
      今後弊社から何か出す際には、その点考慮して、データ収集などに取り組んでいきたいと思います。

      論文のまとめ方も、先生のやり方を教えていただいてありがとうございます。
      専門分野外の難しい論文を読んでいると、睡魔に秒殺をくらってしまうので、
      参考にさせてもらいたいと思います。
      私の場合は、ある材料がどんな研究・実験をされているのか、傾向を探ろうという調べ方もするので、
      Excelに複数の論文のKey wordや実験方法などを
      片っ端からリストアップしていくようなまとめ方をやったりもします。

      Dentsplyの担当者さん、ランチボックス持参ですか。。。
      よっぽど仲の良い先生でも、そんなことできないと思います。
      日本の業者は日本らしく、「おもてなし」の心(もう古い?)で攻めたほうがよいのかもしれませんね。

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    3. そうです!凄いですね。素晴らしい理解力です。さすが九大!(笑)
      シングルポイントは気泡がすごくできやすいです。従って封鎖性の良いシーラーを使用したいところなんですが、その点でこのBCシーラーが勝っているわけです。
      Referenceを示すのはいい事だと思いますが、多分ほとんどの人は興味ないと思います(笑)。それよりもルールを最低限守って治療すれば、もっと簡便で、早い方法があり、予後も他の方法と変わらずいいですよ、と言ってあげるだけで全て解決するとおもうのですが、この分野は。。。それだけで日本の有病率はガクンと下がると個人的には思います。
      そしてもう一つ重要な事は、難しい症例は専門医に回すと言う事ですね。こちらでは、大臼歯の抜髄、壊死歯髄の根管治療、再治療、根未完成歯の治療、子供でも永久歯で抜髄が予想できるものetcはすべて専門医がします。そうする事で、GPの先生は自分の仕事の範囲もクリアになりますし、多分ストレスもだいぶ軽減すると思うのです。私が思うに、日本の先生は自分で抱え込まなくてもいいストレスを自ら買って出ている気がします。これは日本人の責任感の強さに起因すると思いますが、この保険制度でのこの治療費でまともな歯内療法などできるわけがありません。それを踏まえたうえで、できる事だけを着実にこなしていけばいい訳です。それには何が難症例か?を知る必要があると思います。これが診断力と言う事任なるでしょうか。
      我々歯内療法専門医は補綴や修復治療を行なう事は100%ありません。ここが他科の専門医との最大の違いです。GPの先生は安心して患者さんを送る事ができると思います。そして歯内療法の予後は大部分、補綴が鍵を握るわけですからその後の補綴治療をきちんとしたいという患者さんはすごく多いわけです(但し、必要悪としてですが。)。
      自ら進んで、クラウンを所望する人はここでもいません。みな、仕方なくRestorationを行ないます。PFMに穴をあけてエンドする事など当たり前にありますから。
      ただ商品として出す場合は、そうですね少なくともエンドならエンドの専門医とdiscussionできるだけのエビデンスは求められるでしょうね。。。日本には今、エンドドンティスト3人います。彼らは皆、レベル高いですから業者さんは大変だとは思いますが。。。
      最近はAdobe acrobat 11でPDFが編集できるのでJOEやIEJをそのままの形で日本語訳つけたりしながら、アクセントを付けながら読んでます。ただ時間がいつも足りないですが・・・
      Dentsplyに限らず、こっちの業者はランチボックス持参で来る事が多いですね。SS white, Brasseler, Obtura spartan, Sybron endo, Roydentなどはそうでした。逆にモリタやActeon(Satelecの親会社)、Zeissは相当愛想もないし、連絡も遅いし、返事もしないしで悪評で有名です。
      個人的にはJ moritaが残念ですね。何と言っても日本の会社ですから。しかし、日本にいる時もそうでしたが、うちのオフィスの目と鼻の先にあるにも関わらず1度もお会いする機会がありませんでした。彼らは私の事など歯牙にもかけてないのでしょう、きっと。こっちでもRoot ZX miniで少し痛い目を見ましたので・・・こんな感じですので、仕事の速いdentsply tlusaやSybron dentalに最近は乗り換えています(笑)。日本だとやはりどうしてもGCさんに思い入れが強いですね。何と言ってもGENESYSをこっちで使わせていただきましたから。たったそれだけの事と周りは思うかもしれませんが、私の場合そうしたちょっとした心遣いをしていただいた業者さんは絶対に切りませんし、乗り換える事も無いんですけどね。個人的には、◯シダにはGCさんの詰めの垢を飲んでいただきたいですが(笑)。すいません、今日は少し角が立っていて感情のコントロールがつかないようです(笑)。この辺りで。

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  2. 松浦先生

    こういうところ色々書き連ねてストレス発散するのも、大切なことだと思います。
    少しでも先生の気が晴れるようでしたら、私がコメントした甲斐もあったというものです。
    とりあえず、弊社の名前が出ていなくてよかったです(笑)

    歯科の分業体制について、
    上手く言葉にするのが難しいのですが、エンドについて、考えていたことが、
    なんだかストンと腑に落ちる感覚がありました!
    確かに、できないことはできないと、きっぱり言ってくださる先生のほうが、
    患者さんとしてはその先生のことを信用できたりするものかもしれないなと思います。
    その中で、メーカーの人間として、
    GPの先生に何をどうお伝えしていくのか、
    エンドドンティストの先生に何をどうお伝えしていくのか、
    もっともっと自分の中で考えてみたいと思います。

    ありがとうございます。
    色々とお忙しくなっていらっしゃるようですが、
    くれぐれも体調にはお気遣いくださいますようお願いいたします。

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