2014年9月6日土曜日

クリニックスタート

今週から学校が再開し、クリニックがいよいよスタートした。
自分の予約表をチェックすると10月半ばまでアポイントが埋まっていた。
USCのエンドの治療費は激安なので車で2、3時間かけてわざわざここまで来たという人がすごく多い。患者層は多くがヒスパニック系と黒人。彼らは歯が痛くてきているので、みんないきり立っている。
アメリカで初めての患者さんはヒスパニックの男性で、#9がdeep cariesをコンポジットで治療して壊死&根尖病変、その他も2次カリエスが多数ありエンドが必要な歯が5、6本はあった。
こちらの診療システムの特徴は、自分で診査し、診断し、それをfacultyに報告する。
そこでの説明が理にかなったものであれば、治療許可のサインが得られて晴れて治療がスタートするわけだ。

この辺りの診査・診断は、日本で行なわれているものと全く異なる。
例えば上記の私の米国初の患者さんは日本だと明らかにperである。
従って日本だと治療が即開始されるわけだが、こちらではそうはいかない。
日本の保険診療には、歯髄や根尖部歯周組織の診断というものが無い。従って患者さんの主訴とレントゲンと症状だけで通常、根管治療はスタートする。しかしこちらでは、歯髄の状態の診断と根尖部歯周組織の診断の双方をつけなければならない。そして予後判定と治療計画。これはPESCJで教わった事とほぼ同じである。驚いたのは、アメリカではdeep cariesは即抜歯と聞いていたが、以外にここUSCでは日本と同じように深い虫歯でも何とか残して(クランレングスニングや挺出などせずに)治療するケースが多い。

今週だけで4人の患者さんを治療した。
前歯の壊死歯髄症例、コンサル、臼歯部の抜髄症例、小臼歯の抜髄症例。
抜髄症例はどれもsevere painがあるので、麻酔がほぼ効かない。
こういう場合、日本では投薬をまず行ない嵐が治まってから治療してきた。
しかし、ここではそういう考えは無い。
痛いから来てるわけだから、何とかしなければいけないわけだ。
そしてfaculty達は私に有無を言わさず、髄腔内麻酔(神経に直接麻酔をするあの忌まわしきやつだ。。。)を命じる。あちらこちらのユニットから悲鳴が絶えず聞こえるのもUSCのエンドの特徴かもしれない。大の大人が大声上げて体を大きく動かしてリアクション取るからその手の患者さんが苦手なドクターには地獄かもしれない。日本ではまず考えられない。しかし彼らは歯科治療がそういうものだと思っている。痛みは仕方が無い、と。皆さん非常に我慢強い。痛みがあってもある程度は我慢する。事実治療が終了したら、そんな地獄のような痛みを与えた私に対して、皆さん一様にThank you Dr. Matsuura!と笑顔で帰っていく。patientという単語があるが、これは本当に良くできた言葉だと改めて思う。形容詞でpatientは我慢強いという意味だが、名詞では患者だ。患者とは痛みに我慢しなければならない、そういうものだ、と。これは日本との最大の違いかもしれない。

言語の問題を診療では特に気にしていたが、意外な程今のところはスムーズに行っている。授業を受けるよりも患者さんとやり取りしている方がスムーズだという英語のレベルには問題はあるのが・・・。

今週、私の患者さんのうちの一人の女性が6月にUSCのemergencyに来て激痛を受けて抜髄した、私はエンドが必要だ、ただすごくその時診査や治療が痛かったからお前が診査するだけで激痛走るからとにかく絶対に歯を扱うな、早く麻酔して今すぐエンドしろと挨拶したその瞬間からキレていた患者さんを診なければならなかったが、彼女に今の状態と6月の状態は違うから診査が必要だと言っても聞き入れてもらえず、結局彼女は怒って帰ってしまった。何が悪かったんだ?やっぱり言語の問題かな・・・?とアシスタントに聞いたが、ここではとても書けない理由を彼女達は爆笑しながら私を見つめて語りかける。アメリカには根深く人種差別があり、その一端を垣間見れた。日本でそういう事を喋ったら即アウトだが・・・こちらではまるでそれをネタのようにアシスタントもレジデントも喋っている。そりゃあ暴動も起こるはずだ。。。と一人納得した。

USCはdowntownに位置している。
downtownは非常に治安が悪く、ある人に言わせればバイオハザードさながらだ、と言う。
夜中にまず歩けない。昼間でもそういう路地が点在する。
つい最近も中国人の学生が深夜に自宅に歩いて帰る途中、少年&少女に襲撃されて命を落とすと言う事件がキャンパスのすぐそばであった。
患者さんは貧しい方が多く、クリニックは7時から受付が始まるのだが、6時半にはもう長蛇の列だ。皆、見るからにいきり立っていて、早く何とかしてくれという目で我々を見てくる。従ってUSCでは患者さんの確保に苦労しない。逆にUCLAのエリアは家賃も高く、生活水準も高い人が多い。夜中にコンビニに出歩いても大丈夫だ。従ってUCLAエリアの人達は、わざわざ大学院生に治療してもらおうという人が少ない。つまりUCLAでは患者さんの確保が大変なのだそうだ。USCではそういう事は絶対にない。特にエンドは。。。

クリニックは朝8時から始まり、火曜日以外は毎日ある。それプラスliterature review, その他基礎系の授業、治療後のカルテの記入、紹介元への文章作成etc...気づいたら1日、1日、1週間があっという間に終わっていた。

来週は午後がemergency roomの担当、金曜日の午後はLabでのteaching(学生実習の指導)、それ以外は全て診療。いよいよ大学院生活が本格的に始まった!

5 件のコメント:

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  2. 週末はアパートに引きこもって諸々課題に追われていますが、昨日は錦織圭選手がUS OPENで決勝進出、今日はヤンキースのジーターの引退セレモニーがあり、ニューヨークはスポーツで盛り上がってます。Teachingの様子など楽しみにしています。

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  3. Haku先生 いいですね〜錦織選手と自分は実は同じ出身地なのでテニス全く知らないんですけど、前から親近感は個人的に持ってたんですよね。すいませんにわかみたいで(笑)。Teachingは来週金曜日の午後いっぱいあるようです。ただ実習書に書いてある事以外は絶対に教えるな、何も言うなと言われているので、まずは実習書見てみます(笑)。ちなみに僕も課題に追われています。。。

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  4. 確かに。錦織選手は島根県出身でしたね。今日はUS OPEN決勝ですが、応援行く時間も残念ながらありません。むしろこっちが応援して欲しいくらいです、笑 ほう、実習書に書いてある以外は教えるな、ですか。意外ですね。こちらは、補綴だからか、形成だったり仮歯の作り方だったりテクニック的なものを色々教えてあげています。模型実習以外は卒業まで実際の臨床実習がない日本の歯科教育って、、どうなんでしょうね。。

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  5. 実習書以外の事を教えると、学生が混乱するので実習書以外の事は教えるな!とわざわざレジデント集めて講義で言ってましたからね。。。しかし、話を聞くと15人くらいに対してレジデント1人で教えるらしく、そんな事を俺に任せてもどうなっても知らないよ・・・という心境です(笑)
    うちは6年生のときに患者さんの治療ができる極めて稀な大学でしたが、現在はダメみたいです。教育の問題はいかんともし難いですね。。。

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