2014年9月12日金曜日

ティーチングスタート

今日からティーチング(歯学部1年生)が始まった。
毎週金曜日の午後1:00~5:00、ファカルティ数人とレジデント1年生が5人一組交代で、100人近くいる学部生に教えなければならない。

ティーチングの流れは、
①学生、レジデントが毎回宿題論文を読む
②実習前に前回の実習と論文のQuiz(小テスト)
③宿題論文をレジデントと学生でディスカッション
④実習開始
という流れだ。

私は今日が初めてで何をどうしていいか分からない上に、本来私に様々な指示を出すべきFacultyがかなり自由な方で、好きにやっていいし君にここのブロック(約20~30人)任せたよ、論文も読んでないし。好きに始めちゃっていいよ(笑)などと仰るものだから、本当に私が1人でやらなければならなくなった。

ちなみに今日の論文は、Hamid JafarzadehのLedge Formation: Review of a Great Challenge in Endodontics.: J Endod 2007; 33:1155–1162。レッジに関するレビュー論文である。多分、たどたどしく説明は無理だろうなと思ったからわざわざ彼らの為にスライドを用意した。これがあるだけで精神的にかなり気楽だった。







『君たち読んできた?』

『何について書かれてた?』

『レッジって何?』

『レッジができる原因は?』

『レッジの予防法は?』

『レッジができたらどう対応する?』

などを私は約20人くらいの歯学部生に囲まれて15分くらい彼らとdiscussionを行なった。

しかし相手は1年生。生まれて初めて抜去歯牙で抜髄をする人たちばかりだからレッジだ、ストレートラインアクセスだとか言ってもピンと来てない様子。明らかに集中してないのを察した私は、

『まあとにかくやってみよう。それから考えよう!実習開始!質問あるときはどんどんして。但し俺は日本人だからゆっくり喋ってくれ!!』
とどこのグループよりも早く実習を開始させた。

今日の実習は上顎前歯を用いて、アクセス、ストレートラインアクセス、作業長測定、Initial Binding Fileの決定、MAFの決定、そのMAFでのハンドファイルを用いてのStep back形成、ポイント試適、フィンガースプレッダーによる側方加圧充填という流れ。そのすべてを私が自分の責任でチェックしなければならない。

アクセスから始まるや否や、外形はこれでいいか?と次から次へと質問がくる。
中には上顎前歯だというのに、下顎を持ってくる学生とか(どうやら真剣に上下の区別がつかなかった模様)、犬歯はダメだよというのにすごく長い犬歯を持ってくる学生がいたりしたが、

“外形はまず逆三角形。ペンで書いたら持ってきて!”と言うや否や私に行列。まるで何かの握手会のような状況につい私は卒業後就職した歯医者をすぐにドロップアウトして、某スーパーのチェッカーをしていた時代を思い出してしまった。あの時はバーゲンだったよな・・・と感傷に浸る間もなく次ぎから次へと、で次はどうしたらいいんだ?との質問。

いや、アクセスだから。まず削りましょう!と指示したものの、どの方向にどうやってバーを使用していけばいいかが分からない。従って一人ずつ手取り足取り教える羽目に。中には慎重な学生もいてラウンドバーの半分しか削れてないのにアクセスチェックしてくれとかいう女子もいた。もっと削らなきゃ。ここはラボなんだから少々の事は気にすんな!とにかくいっぱい経験して失敗しなさい!と何度言った事か。。。

今日、最も多く見られたミスがいわゆるConservative Endodonticsのようなアクセス窩洞になってしまっていることだ。アクセスが小さすぎる。歯髄が全て除去できていない。deroof completely!と何度言っても髄角部分に歯髄が残ってしまっているのだ。私があまりにも合格サインを出さないものだから、中には別のレジデントにサインを求めている者もいた。そうこうしているうちに、流れは気づいたらストレートラインアクセスに。彼らが使えるのはゲイツとorifice opnerだけなので(顕微鏡は使えない)、正直見えない。ただ、何度もリンガルショルダーを除去しろよ!ストレートラインアクセスに一番時間をかけなさい、それが終わるまで絶対ファイルを入れては行けないよ!というのに次から次へと勝手にファイルを突っ込んで早くもレッジやブロックを起こしている学生が多数出現。あんた達、論文読んできたの?!と聞くとみな笑顔でNo!だった(笑)

慌ただしくWLを決定すると、次の流れはどうやってMAFを決めるか?に移行していた。
この実習ではInitial Binding Fileからファイルサイズを3〜5号上げる事になっていたので、IBFを調べなさい!というものの、IBFって何?という質問をほぼ全員にされ、ほぼ全員に作図しながらIBFとMAFの関係について説明した。そしてStep backを説明し今日はここで時間切れ。

私は気がついたら1時から最後の生徒が帰った5時半までずっと喋っていた。なんせ次から次へと質問が来るので休憩させてくれない。気がついたら5時半で、学生以外に残っているのは僕とDr. Sだけであった。他のレジデントは5時になったから学生をそのままにして自動的に帰ったようだ(笑)。今日は今までで最もきつかった。ただ気づいたら英語に対する恐怖がなくなっていたのも事実である。完全なブロークンイングリッシュだが、そんなものはもうお構いなし。英語に慣れるというのはこういう事だろうか。



正直、実習前は不安でいっぱいだったが、いざ教えてみると意外なことにすごく楽しくて時間があっという間に過ぎていった。

学生からは、来週も来てくれるのか?すごく分かりやすかった!(多分、お世辞だろう)またいっぱい教えてくれ!楽しかった!最後まで教えてくれてありがとうDr. Akira!とまずまずの反応だったと思う。

今日は彼らにとって生まれて初めて神経をとった日になったわけだが、私にとっても祈念すべき学生指導の初めての日。今日は彼らにとっても私にとっても一生忘れる事ができない経験になったのでないかと思う。人に教えるというのは自分も勉強させられる。今日質問されてそういやそうだよな・・・という事が何点かあったので早速クリアにして次回はもっといいアドバイスができるようにしたいなと思う気にさせられる程、ここ米国(USC)の歯学部生にはパワーがあった。彼らがやる気があるから教える方もそれに応えたくなるのだ。相乗効果が生まれて学校に活気がある。

一方、今の日本の歯学部学生実習はどんなだろうか?
私の知るそれは、どこかやる気がなく、負のオーラに包まれ、気に食わない学生には意地悪をしたりするあの陰気くさい感じは何なんだろうか?少なくともこちらの学生の方が私の学生時代よりもWHY? HOW? WHAT'S NEXT?という姿勢やエネルギーがすごく強い気がする。

彼らの目は皆輝いている。歯科医に未来を感じているからだ。
でも日本は??
悪いが、歯学部1年生の最初の実習の時点で既に我が国との勝負が決まっているのかもしれない。

もっと頑張れ、日本の歯学部!

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