今日は午前中に、Cpointという新しい根管充填材の説明をしにボストンのEndodontist、Martin Levin先生が3時間の講義をしにやってきた。
歯科関係者の方は、このCpointという根充材をご存知だろうか?
なんとコンタクトレンズと同じ素材(ハイドロゲルポリマー, polymeric hydrogel)でできていると言う。
コンタクトは濡れていると安定するが、乾くと収縮する。
Cpointはやや湿ったケースの中に密封されており、根充するときも根管内は程よい湿度が求められる。程よい湿度の元でBCシーラーとともに根充すると根管を密封するそうだ。
論文もいくつか出ているようである。
術式は何の事はない、Braseeler USAから出ているバイオセラミックシーラーを用いて、シングルポイントで根管充填する。なお、試適をすると濡れてしまうのでverifiersと呼ばれるプラスチック状の少し硬い試適専用のポイントを用いなければならない。
世界的に根管周囲の歯質をなるべく温存させるという流れが、バイオセラミックシーラー&シングルポイント根充の使用促進に一役買っていると思われる。
今回の商品もその流れに則った物だろう。
USCではバイオセラミックシーラーを用いた臨床は許容されている。
但し、facultyに説明できなければならない。
理屈が通れば尊重される。
但し、何年の論文で誰が言ってたのだ?とまで聞かれる事があるので日々自分の術式を理論武装しなければならない。
さて、やはりレジデントからはこの新しい根充材は不評だったようだ。
講義中も容赦なく、反論がぶつけられる。
彼が一切PA(デンタル)をとらないでCBCTのみ撮影してすべてを診断するという姿勢も反論に拍車をかけた感が否めない。
しかし私の個人的な意見で言えば、少し面白そうな材料だなと思った。
特に根が長かったり、湾曲が強かったりすれば使い勝手はあるのかもしれない。
多分、現時点でBC Gutta percha(69$)よりも値段が安い(41$)ので、日本に売り出せば新しい物が好きな日本人は真っ先に飛びつく気がしたが、言うまでもなくこの材料で根充すればどんな病変でも治癒する事などはない事を強調しておきたい。
正直この先生の講義は残念ながらややバイアスが強かった感が否めないが、多分これからAAEでもテーブルクリニック等で話が聞けるかもしれないので、興味がある先生は講義を聞いてみる事をお勧めする。
松浦先生
返信削除予告通りバイオセラミックシーラー関連の記事を書いてくださり、誠にありがとうございます。
Cpointについては、以前、歯科関係の雑誌で広告が載っていたのを拝見したことがあったような気がします。
第一印象は「変わったポイントが世界にはあるんだなー」という素人感丸出しの感想でした(笑)
その広告を見た時は、Cpoint単独で用いるものなのかと勘違いしており、
「少し膨張したくらいで本当に根尖を封鎖できるものなのか?」
「膨張したら破折リスクが高まるのでは?」などと、考えたりもしていたのですが、
なるほど、シーラーと共に使用されるものだったのですね。
破折リスクにしても、メーカーHPのFAQには無視できるレベルと書いてありました。
記事の中にあった、根管周囲の歯質をなるべく温存させるという流れは
どういった目的から来ているアプローチなのでしょうか。
素人考えみたいで、申し訳ないのですが、ご教示いただけませんでしょうか。
先生が考えてらっしゃるCpoint&BCシーラーの適応は、
CWCTが難しい症例のカバーといった形でしょうか。
過去に聴講させていただいた、石井宏先生のランチョンセミナーでも、
色々な根管充填手法を持っておき、必要に応じて使い分けることが重要だと仰っておりました。
先生もそういったことを目指していらっしゃるのですね。
ところで、臨床の場面では、実際的に、CWCTが困難で、MTAやバイオセラミックシーラーを使いたいと
思われるような症例は、どのようなもので、どのくらいの頻度で見られるものなのでしょうか。
質問ばっかりで申し訳ありません。
私も何か先生に話題提供できれば良いのですが。。。
手嶋さん
返信削除まあこれはメーカーの意見ですからあくまでも参考程度にとどめておくべきだろうなとは思います。
少し前まではテーパー.06で根管形成していたものですが、今やConservative Endoと言われるくらい根管はあまり削らないようになっています。(特に根管上部および中央部)
その理由ですが、根管上部中央部の歯質が薄くなるにつれて垂直性歯根破折を起こしやすくなるからです。これはTropeらが言うようにポストコア形成を行うと歯牙の強度が下がる事からも実感できると思います。なんでテーパーは可及的に小さくしようと!今は.04テーパーが主流です。
CWCTはアピカルプラグにバックフィルのニードルがタッチする事を顕微鏡で確認しなければならないですから、長い根管や湾曲が強い根管だと全く視認できないのでアピカルプラグとバックヒィル間に気泡が入ってしまいます。バイオセラミックシーラーを使い時というのはCWCTが困難なときですから、さすがに作業長が23mm以上とかになると使いたくなります。頻度は歯牙次第ですから何とも言えませんが、日本人は歯根が短いのでそう頻繁に出番はないと思います。
MTAは歯根が長いと使えません。根尖部が開いている時である一定の号数以上でアピカルストップが作れてないな、と判断したとき使用します。答えになっていますか?
個人的にどんな臨床実感か試してみたい気がしますが、それ以上にfacultyへの説明が大変なんでまずは抜去歯牙ですね。
松浦先生
返信削除お返事どうもありがとうございます。
私のお付き合いのある歯科医院さんでも、歯根破折には相当お困りであることをお聞きします。
Tropeの論文をお教えいただいてありがとうございます。読んでみたいと思います。
Cpoint、試用してみて、Facultyに主張できるポイントが見つかるかもしれませんね。
やっぱり試供品は大事ですよね。
MTAやBCシーラーの使いどころについて、変な質問をしてしまって申し訳ありません。
やっぱりメーカー的には、MTAだったり、BCシーラーだったりの新しい材料が、
どのような場面で使われるのか?そしてその頻度はどうか?
というのが、どうしても関心事になってしまいます。
なんだかメーカー視点の話になってしまって申し訳ありません!
もうやめておきます(汗)
メーカー視点といえば以前、先生がBCシーラーについて、
Grossmanのシーラー要件を満たす材料ですからね、とコメントされておりました。
BCシーラーのなにがそんなにイイのか、私が色々と難しく考えすぎており、
歯科医師の先生方が求めてらっしゃることは、
むしろこういうシンプルな点だったのかもしれないと、目の覚める思いがありました。
なんだかMTAやBCシーラーにすごく思い入れがあるような感じになっていますが、
歯科全般を色々と学ばせていただきたいと思っております。
こんなちんちくりんで申し訳ございませんが、
今後もブログ記事を楽しみにしております。どうかよろしくお願いいたします。
錦織選手、今回は残念でしたがまだまだ未来のある選手だと思います。
今後の活躍に期待!ですね。
歯質のrestorabilityは残存歯質量に依存しますので、ポスト形成をしたりテーパーの大きなNi-Ti Fileで根管形成するのはあまり良くないですね。Resistance to fracture of restored endodontieally treated teeth. : Trope M, Maltz DO, Tronstad L. Resistance to fracture of re- stored endodontieally treated teeth. Endod Dent Traumatol: 1985; 1: 108-111.にそれが載ってます。
返信削除BCシーラーはGrossmanのシーラーの具備すべき条件を全て満たしている!とメーカーは言いますが、それが学会でコンセンサスを得られているわけではないです。私がGPだったら、こうやればエンドでトラブルを発生させないというプロトコールがありますがそれはBCシーラーを使う事でもなければCWCTで根充するわけでもないです。顕微鏡がなくNi-Tiがない時代でもInitial Txの成功率は90%だったわけですから、日本の歯医者さんに知ってもらいたいのはテクニックや道具よりも治療のコンセプトであり、それを遵守してもらう事が必要になります。まあそういう話は正直、職人的な性質が強い歯医者さんにはあまり受け入れられない話だと言うのは100も承知していますが、そういう物なんですけどね。。。エンドだけでないと思いますが、正しいコンセプトをもっと大学、我々専門医が強く学生に伝えなければならないと思っています。
返信削除松浦先生
返信削除ありがとうございます。
自分はやはり技術とか、材料とかそういうことに寄りすぎてきたように思います。
コンセプトの話は、メーカーからはなかなかお伝えしづらい面もありそうですが、松浦先生が今後、正しいコンセプトを日本の歯科医師の皆様にお伝えする仕事をなさろうとするときに、何かお手伝いできることがあれば、それはとても素敵なことだなと思います。
まずは先生のブログ、その他諸々から学ぶことから始めたいと思います。
手嶋さん
返信削除まあ魔法のような薬は古今東西存在しないわけでして、材料に使われるのでなく材料を使いこなせるようになりたいといつも願っています。とはいえMTAをはじめとするバイオセラミック製材はもはや欠かせないものの一つになりつつありますが(笑)。。。
帰国してからは色々と考えていますが、私でできる事があれば喜んで協力させていただきますのでその際はご一報ください。わざわざお気遣いいただきありがとうございます。