2014年11月6日木曜日

下顎小臼歯、2根管でなく樋状根・・・

以前の投稿で、下顎の小臼歯が2根管であるという症例の治療をしたというお話をした。

あれから色々検索してみると、やはりストレートラインアクセスをしっかりやらなければ、舌側根管にはアプローチができないという趣旨の文献や教科書が多かったため、私は方針を転換し、超音波で舌側方向に拡大しストレートラインアクセスを確保しようと試みた。

すると、容易に下図のように根管が明示でき、ファイルが入るようになった。



よし!これで頬側、舌側2根管作業長を図れるぞ!とRoot ZXでApexまで測定しレントゲンを撮ると・・・


私が格闘していたのは、なんと2根ある片方の方であった。。。
しかしどう考えても合点がいかなかった。
レントゲンは偏近心から撮影しいるので、ファイルが入ってないのはより舌側??
しかし上図の根管の位置から考えて、これ以上舌側にもう一つ根管があるのだろうか?
これ以上舌側に追求すると間違いなくパーホレーションしそうなので私は混乱したままもしかしてファイルを挿入ミスしたのではないかと思い、上図の2根の拡大形成を先に行い、ポイントを試適してレントゲンを再度撮影した。


しかし・・・・状況は変わらなかった・・・。やはり上図の2根管は未着手の根に比べてより頬側に位置しているようである。

私は完全に混乱した。一体これは何が起きているのだろうか??

ここで私はUSCエンドの重鎮ファカルティであるDr.シェクターとDr.コールマンに上図の症例に関して術前にCBCTを撮影する許可を得るために、2人に別々に相談した。

すると2人ともこのレントゲンを見せて二つ返事でこういう言葉が返ってきた。

『これは、C-shaped root canalだな。』

C-shaped??下顎の第2大臼歯でしか私は見たことがないが・・・でも教科書見てもそういうことあまり書いてないんですけど・・・と質問してみると、

『OK。じゃあランチを賭けよう。もしAkiraが正しいなら(私は何も自分の意見を言ってないのだが・・・)、10ドルのランチをおごってやる。でももしC-shapedだったら・・・わかってるな(笑)?』

3階の矯正の診療室にCBCTがあるのでそこで撮影の予約を取り、早速CBCTを分析してみた。すると・・・

C-shapedであった。。。画像が判然としなくて申し訳ないが、別の切り口では完全にC-shapedであった。しかも頬側の歯槽骨は完全に消失している。



私が根管形成したのは、遠心の頬側と舌側だったのである。


なんと近心にtinyな根管口がCBCTで見える。それは舌側と頬側のほぼ中央に位置しているように見える。

つまり、私はアクセスの外形をこのようにmodificationしなければならない。


と言っても、この3番目の根管が見つかる保証はないし、見つけたとしてもC-shapedなのでフィンがあるので、そこも修正を強いられる。要は、頑張っても非外科的な治療では難しいかもしれない。

そこで治療前に、この3根管目が見つからない時にどうするか?について患者さんにインフォームドコンセントしなくてはならなくなった。
つまり、うまくいかない時、外科をするか抜歯をするか、はたまたもう今の時点で抜歯するかである。
外科もこの場合、歯根端切除か意図的再植術かの2択になる。Dr.シェクターは私に強硬に意図的再植術を進めてきた。理由はc-shapedをApicoectomyで逆根管形成するのは難しいという理由であった。

以上を整理し、患者さんに説明を行った。
①あなたの下顎小臼歯は非常に複雑な根管形態であるということ。(C-shape)
②3番目の根管を見つけるように最大限努力するが、最終的に見つからないかもしれないこと、その可能性が濃厚であること。
③その時は、今見つかっている2根管のみ根充して、経過観察後、(必要が生じれば)外科治療へ移行する必要があること。(おそらく外科治療が濃厚であること)
④外科治療には2つの選択肢があり、1つはApicoectomy。もう一つはIntentional Replantationであるということ。
⑤それが嫌なら現時点で抜歯するか、3番目の根管が見つからない時に抜歯するか?

しかし、私はエンドドンティスト(に将来なるので)なので、極力保存したいという自分の希望を伝えた。



すると患者さんは、保存を強く希望した。もし彼女がこの歯を失うと、彼女は右下の臼歯部にインプラントを最大3本埋入する必要が生じてくるからだ。

CBCT撮影&診断、インフォームドコンセント後、治療を午後3時半からスタッフが嫌な顔をするのを横目に開始した。

そして格闘すること2時間、午後のfacultyであるDr. Lazarと一緒にああでもないこうでもないと言いながら、超音波やMUNCE Discovery Burを用いながら彼はロードマップを発見しようと、私はヒポクロでバブルが確認できるところを超音波ですこしずつ拡大しながら根管の発見に努めたのだが・・・見つからなかった・・・。診療は1時から開始したが、終了したのはなんと6時。最後まで私に付き合ってくれたDr. Lazarにはありがとうとしか言いようがない。そして患者さんにもだ。次回、再度トライしてもし見つからなければ仕方がない・・・。

今回、この症例を通じて私が感じた最大の感想は、
"下顎小臼歯は根管の形態がバラエティーに富んでいて難しい”
ということである。

GPの時は、下顎の臼歯が欠損していた時、私は治療のオプションの一つとしてブリッジをインプラントと同様のランクでフラットに患者さんに説明していた。

しかし、私は今後、下顎小臼歯を支台歯とするブリッジをそれが生活歯であろうと、失活歯であろうと、第1選択としてGPの先生に勧めないだろう。

もしも下顎小臼歯の補綴にエンドのトラブルが発生したら、外科になる可能性が少なからずあることを事前にアドバイスするだろう。

これは私の中で、エポックメイキング的な出来事だった。

今まで、第2大臼歯を除くブリッジに関してはインプラント=ブリッジだったが、今では欠損補綴に対しては、インプラント>ブリッジである。といっても、もう今後2度とそういう治療をする機会はないが、アドバイスするとしたらそういうことになるだろう。

非外科的な根管治療の可能性と、限界を見た1日だった。

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