2015年1月27日火曜日

抜髄するかどうか決めるのは、貴方です。

50代女性。
学外からの紹介の患者さん。
主訴は、”かかりつけ医が#30に修復治療を行うので、修復治療前に#30に根管治療が必要かどうかチェックしてほしい”というものだった。

痛みおよび痛みの既往はない。

コンポジットレジン充填がなされているが、大きなものではない。

レントゲン初見からは根尖病変や特段言及すべきものの存在は認められない。

歯髄診査を行うと、Cold testに対して陰性だった。

しかしながら、EPTには反応。

打診も圧痛も動揺もないし、ポケットは正常範囲内。

診断は歯髄も根尖部歯周組織もまるっきり”Normal”だ。

ただ困ったことに、Normalだから修復治療前に根管治療がいらないのか、いやNormalだからこそ根管治療を修復治療前にしておけばHigh success rateなのだから必要なのかどちらなのかを私が決めることができない。

紹介状には#30チェックよろしく!としか記載されていないので、どこまで踏み込んでいいかわからない。

ただ、この歯の歯髄の状態はおそらくNormalである。

従って、私は紹介元に

”歯髄、根尖部歯周組織の状態は健全である。なので根管治療は必要無いと思われる。しかしながら、修復治療後には不快症状(知覚過敏症状)が出たり、歯髄が壊死したりする可能性があるので、(あなたや患者さんが)必要であれば、根管治療を行います。”

と伝えた。

しかし、この健全な歯を抜髄してまで修復治療を行うかどうかを決めるのは、私ではなく修復治療担当医であり、患者さんである。

私に必要性がないか否かをチッックしてくれと言われても、現時点では健全なので必要無いというような官僚答弁的な答えしかできない。

Restorabilityをチェックすることもそうだが、このように便宜抜髄をするかしないかを決定するのも、補綴を行う人の仕事である。

私個人の意見としては、口腔内の実際の歯牙の状態(小さなレジン充填のみ)またブラキシズムの可能性が高いこと(歯牙咬合面が全顎的にに磨耗)、なぜこの歯に補綴治療が必要なのか?は理解ができなかった。

仮説だが、おそらく神経を取らずに補綴治療を行うのであれば、
①術後疼痛
②術中のプロビジョナルレストレーションの破折による知覚過敏
③最終補綴物装着後の歯髄壊死
などが考えられる。
また、歯髄壊死時に病変を伴っていれば、根管治療の成功率は下がる。外科が必要になるかもしれない。

また抜髄して補綴治療を行うのであれば、
①根管治療自体の成功率は高いが100%の成功率ではない
ことがデメリットとして考えられる。

上記2つの道のどちらを取るかは、今日検査してたとえその歯が健全であっても、補綴治療が開始されればすぐに状態が変わっていく。

なので、今日の検査(わざわざUSCのGrad Endoに来てまでの検査)にどれほど意味があったのか、正直私には?マークだった。

上記の出来事をそのまま日本のプラクティスに当てはめることは難しいが、1つ言えることは我々は補綴治療前の歯髄の状態ならある程度目安をつけれるが、一度補綴治療が開始された後の歯髄の状態まで予測はできないということである。

歯冠形成そのもの、術中のエアー、ハンドピースからのスプレーの有無、プロビジョナルレストレーションの適合度以外にも様々な要因により歯髄には炎症が起きる可能性がある。

それを予測することは、神でも不可能である。

ただ、我々はどうしても防御的にならざるを得ないので、紹介元の返事にそのことをきちんと記載しなくてはならない。

”あんたが歯髄が健全で大丈夫だから抜髄せずに治療したのに、炎症・感染が起きたじゃやないか!”と言われないようにするためである。

いやはや、こういうときに本当に自分はどこを向いて歯科医療をしているんだとつくづく思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿