ここ最近は学生(DDS dentist)からの紹介の患者さんが多い。
今日来られた患者さんも学生が紹介した患者さん。
60代男性でなんと返還前後の沖縄で海軍に所属していたというガタイの強烈にいい男性。
その風貌に似つかず今はセラピストをしているという。妹さんがUSCでナースを長く務めているとのことで俺はUSCが好きなんだよ〜とおしゃべりがとにかく大好きな方。しかし、久しぶりにいい患者さんに巡り合った気がした。と同時に最近は治療のことだけじゃなく雑談の内容がだいぶ聞き取れるようになってきた。
さておき、学生からの紹介なのでどのような治療をしたのか事前にPCのカルテでチェックをしておいた。
1週間前に#31(右下第2大臼歯)を抜髄している。
抜髄だけしているので、根管治療はGrad Endoでということだった。
しかしである、患者さんの主訴は冷たいものに強烈にしみるという。
冷たいものを飲んだり、食べたりすると天井に飛び上がるかというほどしみるという。
痛みの程度を1~10で表すとMaxの10。
いわゆるこういう状況の歯をこっちではHot Toothという。
痛みがひどい場合はこういう呼び方をするが、こんな時に冷水痛試験をしなくてはならないのは本当に辛いものだ。
飛び上がるくらい痛いと言っているのに、冷水刺激を与えるというある種拷問のような検査・・・
案の定、冷刺激にひどく反応があり痛みは持続的(Lingering pain)なものであった。
EPTにも反応した。
打診や咬合痛、圧痛はない。ポケットは正常。動揺なし。
隣在歯は正常反応。対合歯にも問題は見られない。
しかし、ちょっと待て。1週間前に抜髄したんじゃないのだろうか??
レントゲンを見ると歯髄近くまで仮封してあり私は最初、ああ抜髄してクロルヘキシジンスポンジ貼薬して仮封したんだなと認識していた。
しかしである。なぜ抜髄した歯が冷刺激が++でlingering painなのだろうか?
患者さんによれば隔壁が取れてから急にしみ出したという。
余計に混乱した。
もしかして、見逃されていた根管があり、それによりextripationできず、その為冷水痛を感じているのではないか?と私はfacultyに自分の意見を述べともかく急性症状があるため、即加療となった。
伝達麻酔(カルボカイン)を2本行い、ラバーダムを装着。
仮封を除去し、クロルヘキジンスポンジが登場するのを期待したが・・・なんと仮封を除去したが歯髄近くまで窩洞形成されているだけで、まだ抜髄はできていなかったのである・・・。
つまりこの患者さんの痛みは歯髄近くまで形成して仮封が一部取れたため起きたものだったのだ。。。
なんという拷問だろうか。そりゃあしみるはずですよ。。。
天蓋を除去した瞬間にこの100キロ以上はあるだろう元軍人は痛みでユニットから飛び上がった。
しかしどうしても髄腔内麻酔が嫌いな私は伝達麻酔(キシロカイン)をさらに2本追加。すると痛みは治まった。
しかもこの患者さんのMB, MLが非常に近心に位置しており根管口部は狭窄著しかった。そして出血が尋常でないくらい著しい。。。しかもこの時、私の滅菌したNi-Tiのハンドモーターが誤ってゴミ箱に捨てられるという悲劇が発生し(治療後に発見)、ハンドファイルでextripationのみを行い、Ca(OH)₂を貼薬して終了した。
先日も似たような事があったが、いったい誰がチェックをしたんだろうか?
いや確かに、学生の治療室にはマイクロスコープはないのでよく見えないというのは同意する。しかし、今回は根管が見つからないどころか窩洞形成を歯髄近くまで行いキャビットを詰めているだけである。
どうやら私はここではNoteと言われる学生が書いたカルテを信じてはいけないのだな、ということを身をもって学んだ気がする。
しかし、下顎の伝達麻酔は非常に有効だ。
日本にいるときは伝達麻酔は危険というイメージがなぜか強かったが、これほど有効なものはないと思う。
というわけで何とか修羅場で日々奮闘しています(笑)。
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