こちらは1/5よりクリニックが開始。
今学期は授業がliterature reviewしかないので、それ以外の時間はすべてクリニックに当てられる。
これが自分が一番望んでいた形である。
正直、基礎系や統計とかはもういい(笑)
臨床に即さない、直結しない講義は退屈だしテスト勉強はひどくつまらない。
これが、文献の年数や著者、研究デザインなどをサマライズしろと言われればそっちの方がよっぽど楽しいし楽だ。覚えるのもなんの苦もない。
またこの年齢で基礎系を一からやり直すというのも非常に難しい・・・
留学には年齢が関係ないというが、やはり脳の機能低下は避けられない気がした。
時差ぼけが延々続くような。。。
それはさておき、今日は学生が治療した患者のカバーということでナイトクリニックで1人残った。今タームはナイトクリニックは極めて人気がなく、いつも1人か2人という状況である。
韓国人の女子歯学部生が治療した#19の治療の引き継ぎが今日の私の治療だった。
彼女曰く、
"4根管を見つけた。しかし最後のラスト1根管(ML)をゲイツで拡大していたらパーホレーションを舌側に起こしてしまった。"
つまりそれは、ストリッピングパーホレーションってこと??と尋ねたが、よくわからない・・・とにかく助けてくれ!ということで引き継いだ。
治療前にはPFMがテンポラリーで装着されていたようだが、2、3日前に脱離。
デンタルを撮影すると既にほとんどの歯牙が残っていない。
この時点で既に抜歯だろ、と突っ込んだがカバーすると患者に学生が説明しているので、伝麻後とりあえず伸びきった近心の歯肉をすべてダイヤモンドバーで切除(電気メスやレーザーなどといった高尚な道具はここにはないのだ)、ビスコスタッドで止血して隔壁をGIで形成した。
前歯部用クランプを使用してラバーダムを装着し、チャンバーオープンするも学生が窩洞をすべてGIで充填しているのでなかなかすべてを除去できない。。。
すべてを除去すると、近心頬側に赤いキャビットが充填されていた。
これを除去し、注意深く次亜塩素酸ナトリウムやEDTAで洗浄しパーホレーション部が明らかにされた。
パーホレーションをリペアするだけなら何てことはない。
それは私にとっては何の問題もないことだ。
しかし、もっと重要なことはこの歯にそのようなリペアをして良好な予後が期待できるか?ということである。
なぜなら、学生は4根管見つけた!と言っているが、2根管しかない。しかも彼女は正確に言えば1根管しか見えていなかっただろう。なぜなら天蓋がほとんど取り残されていたからだ。
また彼女が4根管目だと思ってゲイツを入れたのは根管ではなくて、髄腔壁だった。
そう。彼女は力技で横壁に人工的に穴を開けたのだ・・・
しかもこの学生は介助にもつかず、勝手に先に帰ってしまった。(治療後知った)
厳しいことを言えば、彼女は歯科医師としての倫理観が低いと言わざるを得ない。
患者はモルモットではないのだ。プリーズと頼んでおいて自分の患者をケアせずに先に帰るとは・・・
また、学生であればいかにしてこのパーホレーションを修復するかやいかにしてそれが可能か否かを診断していくかを直接学べるいい機会なはずである。
しかし、彼女は帰っていた。
またさらにまずいことには、根管をなんとか見つけようと奮闘したのはいいものの、逆に歯質を大きく失ってしまい、あわや髄床底もパーホレーションを起こしそうであるという状況になってしまっている。
この状況下で私はした判断は、まずはパホの修復を行う前に見逃されている2つの根管が見つかるかどうか奮闘することだった。
しかし、faculty2人の力を借りたが、見逃された根管を見つけることができなかった。
ここにおいて、この歯の状況は
①残存歯質(フェルル)がほとんど無い
②見逃された根管が2根管あり、石灰化があり見つけることができない
③パーホレーションが存在
ことから、エンドの予後Questionableと判断し抜歯が第1選択となる旨を患者さんに伝えなけばならなくなったのである。
しかしここからが問題で、彼女はまさかの抜歯宣告に気が動転してしまい涙を流し、なんでこんなことになったんだと何度もうったえてきた。
しかし問題はこのPFMが脱離した時からレストラビリティが疑わしいということであり、これはエンドの治療をする前に本来は患者に伝えるべき話であるが、どういうわけだか抜髄してエンドに移行してしまい、今回の悲劇が。。。
さらに悪いことにはこの歯の治療が先月終了しているにもかかわらず脱離し抜髄、さらにはパホを起こした挙句、結果抜歯に至っているという点である。
レストレーションを行う前に、少なくともカリエスをきちんと取ることはしてもらいたい。いったい誰がGoサインを出したのか、謎だ・・・。
この歯を無理やり根管治療すればMTAでパホもリペアして根管治療も完了できる。が、修復は不可能である。
最終的に、この歯の治療の代替えをなんらかの手段で行うことを約束し、後日この学生と学部長、患者でメイクアッププランを考慮するという重い話になってしまった。
私は日本にいるとき、こういう主訴でこられた患者さんを数多く見てきた。
彼らの多くは、前医とコミュニケーションがうまくいっていないか、ぞんざいに扱われた(無論それは患者さんだけの言い分だが)ために転医していた。
もう少し、患者さんの事をケアしてあげれたら、こういう事態は避けられたかもしれない。何れにしても残念な症例だった。
これこそ木(エンド)を見て、森を(修復できるか否か)見ず。
新年一発目のナイトクリニックはレストラビリティと学生に振り回された1日だった。
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