2014年12月9日火曜日

1917年のエンド

今日、ロヘスの授業で面白い動画を紹介してくれた。
1917年当時、どのような術式で根管治療を行っていたか?を示したものである。
幸い、今の所youtubeでも観れるようなので、興味がある方は動画を見てみてください。

細かい術式は時間とともに常にブラッシュアップされ、見直されていくのがどのような治療でも宿命。したがって、この動画を見ていただいても術者は素手で治療しているし、顕微鏡もないし、Ni-Tiも超音波ももちろんない。タービンがないので治療には時間が掛かる。ゴールドのワイヤーを作業長測定、貼薬?にも使用しているし、レントゲンも今のクオリティとは比べものにならない。最後もクロロパーチャテクニックで根充して、思いっきりオーバーになっている。



しかし、今の私たちの治療の原形が1917年当時既に行われていたのに、素直に驚いた。
1917年、日本といえば大正6年、空前の好景気で、金本位制は廃止され、第1次世界大戦が起きている。
そんな時、すでにRoot canalが行われていたことに対して素直に驚きを覚えた。

しかし、それ以上に注目して欲しいのは、動画の最初のEssentials to Success(エンド治療成功へポイント)の部分である。


成功の最大の要因は、
" Removal of every portion pulp-assured aseptic environment."
とある。

可及的に無菌的な環境下で治療することが根管治療成功の最大の鍵としているのだ。

しかもこの動画では治療中、必ずラバーダムを行っていることがわかる。



今からほぼ100年前の動画だが、かなりきちんとラバーダムをしていることがわかる。
そしてこの価値観は今でも変わらない。

翻って、私は代診時代も含めてこのようなきちんとしたラバーダムをかけれるdentistにほとんどお目にかかったことがない。ラバーダムしていると真面目だねとか、すごいねとか、保険でもやっているの?とか、患者集めのためのフェイクでしょ?とか言われたこともある。

しかし、根尖病変が生じる理由は細菌である。それを極力防ぐことが治療成功の鍵であることが、100年前にも第1番目に挙げられているのだ。

シーラーがどうだとか、根充材はこれがいいよとか、こういうテクニックが全てを凌駕するとか、顕微鏡がないときちんと行えないとか、そういうことは第一義的ではないのだ。

歯科治療と医科治療の最大の違いは何か?と考えた時、私は今まで答えが見つからなかった。
治療が命に関わるか、関わらないかが最大の違いだと思っていた。

しかし、それは確かに事実だが、側面的な事象の1つに過ぎないと思う。

我々歯科治療の最大の特徴は、生じた歯科疾患に対して長期的な予後を有する治療を提供することが可能である、ということである。
また、治療のターゲットも明確である場合が多い。
治療の成功率も歯内療法に限れば、外科治療までを含めるとほぼ100%だ。
だからdentistは尊敬され、就きたい仕事にここでは毎年選ばれるのである。
歯の問題を適切に解決し、しかもそれが長く持つので我々は信頼されるのである。

U.S Newsを見てみると、

日本では・・・言うまでもないだろう。。。

しかし我々の多くが、歯科治療の本当の意義や意味を十分に患者さんに伝え切れているだろうか?

また我々は、治療の原則を守るよりも制度のルールや経営をより重要視していないだろうか?

保険診療が・・・とよく言われるけれども、それで自分が思う歯科医療が提供できないと考えるのであれば、自分が思うような歯科医療をしていけばいいわけである。
その"覚悟”さえ、あれば我々日本の歯科医師は大きく変われるかもしれない。

少なくとも、1917年の根管治療の動画からは、
”疾患をきちんと治そう!”という決意がひしひしと感じられる。

この1917年のエンドの動画から私たちは単なる物珍しさ以上の、とてつもなく重要なメッセージを受け取れる気がする。

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