2014年7月25日金曜日

ユージノールシーラーのプレゼンテーション

今日は時間を間違えて1時間半も早く学校へ・・・
実は今週、麻酔のロールプレイに続いて午後からマテリアルの授業でプレゼンテーションがあった。
担当は、OperativeのDr.Phark。ドイツでDDSを取得したという接着が専門の先生だ。
エンドのdirectorのLevy先生がとにかくPharkはいいプレゼンするから勉強するようにと言われたが、確かに奇麗なプレゼンテーション。最後にフルマウスで接着で治療した症例を出し、どうだ!と言わんばかりのプレゼンテーションはどこか彼の国でよく見たような無いようだったが、徹底的に論文ベースのプレゼンであった。

最初にプレゼンを持っていった時に、“内容はいいけど少しクドいかな・・・そして1枚のスライドにぐちゃぐちゃ重ねるのはやめた方がいい”という駄目出しをいただいた。
そこで悩んだあげく本来あまり今までやってこなかった形のものにしようと決め、作り込む事1週間、論文の数15本、スライド枚数50枚で一応OKをいただいた。その一部がこれである。












反応は、思ったより良かった。
Excellent!と言っていただいただけほっとした。

質疑応答で、Dr.Pharkから、“Core Build upする前に清掃を!と言うけど、どうやってその目安を判断するのか?”という鋭い突っ込みがあったが、私が調べた限りでは見つけられなかった。最後のスライドはclinical baseでscience baseでない”と拙いが極めて堂々と答える事ができ、少し自分の英語の進歩?に気を良くした。

Dr. Pharkは私がリサーチの経験があるものだと思っていたらしい。その日のプレゼン後、個人的に彼と話す機会がありそういう話になったが私にはその経験が無い事、しかし日本のスタディグループでその経験がある事(ペンエンドの事)を伝えると、君はいい勉強の仕方を学んで来たね、と重ねて褒められたがこれは私だけでなくペンエンドで学んでいる事、その姿勢が決して間違っていない、という事が確認できてその日は本当に嬉しかった1日だった。

と言う事で、最初の夏セメスターも何とか凌げるところまで来た。来週はいよいよクリニックのオリエンテーション。そしてその次の週はヒューストンでAPICES。
APICESにはペン大に今年から行った横田先生も来ると思うので、彼と久々の再会。

少しづつだが、歯車が回りだしたそんな気がする今週だった。

9 件のコメント:

  1. 松浦先生

    とてもお元気に、そしてご活躍されているようで、
    月並みな言葉で申し訳ございませんが、
    本当にすごいな!と思っております。

    ところで根管充填材についてなのですが、
    日本ではユージノールを嫌う先生もそれなりにいらっしゃり、
    酸化亜鉛-脂肪酸の系のシーラーというものもありますが、
    こういうのは日本だけで、アメリカではユージノールが主(次点でAH)だという話を、
    以前どこかで聞かせていただいたことがございます。

    日本でユージノールが嫌われるのはレジンの重合阻害が一番であるようですが、
    アメリカではその点どのような考えで、使われているものなのでしょうか。
    硬化してしまってユージノールが遊離しないような場面であれば、
    問題ないのだろうとは思っているのですが。。。


    色々とお忙しい中でこのような質問をしてしまい、
    ご無礼などございましたら大変申し訳ございません。
    よろしくお願いいたします。

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    1. 手嶋さん
      コメントありがとうございます。これも日本で、ペンエンドで鍛えられたからできることです。もし私がペンエンドを経ずにいきなりここに来たらとても無駄な2年間に終わりかねない(何が大事で大事じゃないか分かりませんから)ところです。

      こちらでそれほどシーラーに関して熱い議論になっているのを今のところ聞いていませんが、文献ベースだとLee M, Winkler J, Hartwell G, Stewart J, Caine R. Current Trends in Endodontic Practice- Emergency Treatments and Technological Armamentarium. J Endod 2009;35(1):35-39においては、236人のBoard認定のエンド専門医のうち、およそ75%がユージノールシーラーを使用しています。→ http://endoexperience.com/userfiles/file/unnamed/Current%20Trends.pdf#search='Current+Trends+in+Endodontic+Practice+Emergency+Treatments+and+Technological+Armamentarium.+J+Endod+2009%3B35%281%29%3A3539'

      AH plusは①エポキシレジン系シーラー②多くの論文で封鎖性がシーラーの中で最も高く、長期的に安定した材料だと支持されていることから封鎖性、接着性を調べるのに良く出てきますが、それは約20%です。恐らくZOE系が主でAH Plusは次点と言うのはこの話から来ているのではないでしょうか?

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  2. ユージノールシーラーの利点は、Pathways oh the pulp 10th. editionによれば、①長い成功の歴史②抗菌作用③溢出しても吸収されることと言われています。もちろん欠点としては、①毒性(細胞、神経、組織に対する)および局所炎症作用(これは硬化後もシーラーの中で唯一続きます。)②溶解性(水分と触れると分解されます)③封鎖性が悪い④接着に対する影響?です。ノンジノールはユージノールを含みませんのでユージノールによる一連の毒性が抑えられると言うのが特色だと思いますが、酸化亜鉛自体にも毒性は無いと言えませんので、ノンジノールを使用する意味合いは僕は極めて薄いと思います。

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  3. ではなぜシーラーがユージノールなのか?と言えば、これは昔、どこかで喋った記憶があるのですが、シーラー自体が、歯内療法全体の成功率を劇的に押し上げるものではないからです。歯内療法の成功率に大きく寄与する因子は、無菌的な処置の徹底とDebridment(root canal shaping)です。シーラーは無ければ根充材の封鎖性が著しく劣ることは多くのエビデンスで支持されていますが、歯内療法全体の成功率を大幅に押し上げる因子ではないのです。つまり歯内療法全体から見た時に、シーラーがどれであるかと言う議論自体が枝葉末節の議論に過ぎないということです。

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  4. ではその中で何でZOE系シーラーなのか?と言えば、やはり抗菌性が期待できるんじゃないか?と言うことと、長い臨床での歴史です。ユージノールシーラーは硬化後も水が触れると遊離します。従って、硬化前でも硬化後でも毒性は変わりません。接着に対する影響はあると言われているもの、無いと言われているもの様々あります。しかしながら一番重要なことは、窩洞を奇麗にすることです。A Wiemann and L Wilcox: In Vitro Evaluation of Four Methods of Sealer Placement. JOE 1991;17(9):444-7.や、Schwartz RS, Fransman R.: Adhesive Dentistry and Endodontics: Materials, Clinical Strategies and Procedures for Restoration of Access Cavities: A Review. : J Endod. 2005;31(3):151-65.に詳しく書いてあります。
    以上雑多になりましたが、結局何でZOE?と言われたら、
    長い歴史と抗菌性!というPathways of the Pulpのテキストに書いてあることに戻るんですけどね。。。最近は、バイオセラミックシーラーも出てきましたので、もしかするとこれが全てのシーラーにとって変わる可能性が無いとは言えませんが、エンドはエビデンスドベースを重んじますので、こういった材料が主流になるにはまだまだ時間がかかるのではないかと個人的には考えます。

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  5. 松浦先生

    私のくだらない質問に大変丁寧に答えてくださり、大変感激いたしております。
    先生のお言葉各々にリファレンスがついており、
    これがエビデンスベースの話法かと非常に勉強になります。
    誠にありがとうございます。

    私も先生のように、リファレンスを出しながら喋れるような、
    論文の読み方、集め方を意識してやっていけたら、と思います。


    メーカー側の人間としては、あたかも材料が良好な予後をもたらしてくれるものと、
    ついつい考えてしまいがちになるのですが、
    シーラーは歯内療法の主役ではなく、あくまで補佐役である意識を持っておかなければ、
    エビデンスベースの考えを持つ先生からは、白い目で見られてしまうかもしれませんね。


    バイオセラミックシーラーというものも、
    MTAのような効果が出るのであれば、それはすごいことなのでしょうが、
    やはりMTAのような良好な予後も、
    根管内の無菌化を目指した処置の上に成り立つべきものであるのでしょうね。

    なんだか偉そうなことを言ってるようで、お気を悪くさせてしまっていたら申し訳ありません。


    バイオセラミックシーラーはとても気になる存在なのですが、
    日本では情報が少なく、まだ得体の知れない 材料というイメージが強いです。
    いつか、このあたりの最近の材料についても、
    先生のご意見を伺う機会があれば、と思います。


    もう7月も終わりそうな頃合いで、日本は非常に暑いです。
    カリフォルニアの夏はいかがでしょうか。
    体調にはくれぐれもお気をつけて、お過ごしいただければと思います。

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    1. 手嶋さん
      全く問題ないです!こういうのはこっちも勉強になりますから。
      こっちではあらゆる判断、処置にwhy?ですから必然的にそういういい方になってしまうんですよね。。。すいません、扱いにくそうな人で(笑)。O型で相当大雑把なんですけどね、治療以外は。
      そうですね、材料によってエンドの成功率がぐーんとあがることは絶対無いですね。
      MTAを魔法の薬と信じてどんな症例でもMTAを使用したがる人がいますがそういうことじゃ無いんですけどね。。。まあこれいうとメーカーさんは販売しにくいでしょうからこの辺にしときましょう(笑)
      バイオセラミックシーラーは去年の3月だったかな?文献レビューしてペンエンドで発表しました。あれから1年半たつのでそろそろ文献の数も増えているかもしれないですね。こっちでは根が長い症例が多いので、臨床でバイオセラミックシーラーを使うチャンスがあると思います。またこのブログでも報告してみます。また、こっちでもリサーチをする機会がどうやらあるようなので、チャンスがあったらバイオセラミックシーラー、バイオセラミックマテリアル調べてみたいと思います。

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    2. 松浦先生

      ありがとうございます。
      バイオセラミックシーラーが登場し、これが評価される背景には、
      既存のシーラーでは能力が足りない部分があり
      バイオセラミックがそれを補うことができる能力があって、
      そこに新しいシーラーの適応症例や方法のニーズがあるんだろう。
      そのニーズに応えることのできる材料をなんとか開発することが、
      メーカーの仕事なんだろうなと、なんとなく思っています。

      日本では牛窪先生が、商業誌にBCシーラーの記事を投稿されていますが、
      逆にいえばそれくらいで、日本語の情報は数が少ないです。
      僕もなんとか英語論文を読んで勉強していきたいと思います。
      ChemicalやScienceの部分はまだなんとか読めていると思っているのですが、
      Clinicalになると途端にハテナ?の大洪水にみまわれてしまいます(笑)

      もっと勉強したいと思います。
      ありがとうございます。
      いつかそのうち先生がブログの記事にあげてくれるのをお待ちしています。

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    3. 手嶋さん 私は逆でClinicalな内容はOKですが、Chemical, Science, Biologyは途端に辞書、日本語の教科書!!ですね。TrowbridgeのInflammationの和訳本見つけた時は狂気しましたので(笑)
      バイオセラミックシーラーは、Grossmanが提唱したシーラーの理想的な要件11個を全て満たすと言う、革命的な(笑)材料ですから。今、こっちでも抜去歯牙の根充で使用しています。以前は文献数が全部で15くらいしかなかったと記憶してますが、今は増えてるでしょうね、きっと。。。勉強し直してみます!

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